地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2022年11月

 元々は2022年1月から本格施行されるはずだった電子帳簿保存法が、企業の対応が遅れていることから、まず2年間の猶予が行われ、続いて骨抜きになりそうです。

 安堵している企業が多い一方、真面目に準備していた企業からは「あの苦労は何だったんだ!」という憤りの声もあるようです。たしかに、国(与党)の対応は、「狼少年」です。対応しなければ青色申告から外すなどと、脅かすだけ脅かしておいて、土壇場で肩透かしが2度も続いているわけですから・・・。

 

電子保存の義務化

 取引の際、請求書などをメール等の電子データで授受した場合、電子商取引という位置づけになります。従来はその請求書等はプリントアウトして紙で保存することが原則でしたが、2021年の税制改正で電子データで保存しなければならないことになり、その制度が2022年1月に施行されるはずでした。準備期間はわずか1年でした。

 単に電子データで保存すればいいだけなら簡単ですが、改ざんを防ぐためのタイムスタンプや、相手方名、取引年月日などで検索できる方式での保存が義務付けられており、その部分で各企業が苦労していました。現在の経理システムがそれに対応していない企業がほとんどで、システム変更には大変な費用や手間がかかります。

 

まず2年の猶予

 2022年1月の施行開始が間近に迫る2021年12月6日の日経新聞1面の隅に「電子保存義務化2年猶予」という見出しが躍り、2年間は紙での保存も容認するというものでした。その容認の判断は税務署長がすることになっていますが、企業からは申請する必要もなく、何も手続することなく容認されるという、妙な話でした。

 

続いて骨抜き

 2022年11月25日の日経新聞1面の隅に「請求書保存、印刷も容認」「政府・与党 データ管理のルール緩和」という見出しが載りました。請求書のデータを簡易保存すること等を条件に紙での保存も容認するようです。税務当局が「相当の理由がある」と判断すれば特例として認められるのですが、事前の申請も不要とのことで、事実上フリーパスです。妙な話です。

 

そもそもが準備不足、検討不足

 与党にあおられた税務当局が、準備や検討が不十分なまま制度化だけ先行させてしまったのでしょう。

 この制度自体は、単に税務調査がやりやすくなり、税務署が楽になるだけという声も聞かれます。たしかにそう思いますが、これをきっかけにペーパーレス化を進め、経理等の事務作業全体を電子化、効率化することは、生産性向上に資するでしょう。

 こういうことは、もっと緻密に、戦略的に進めていただきたかったと思います。

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 森友学園をめぐる近畿財務局での決裁文書改ざんに関与させられて自殺された近畿財務局職員の遺族が起こしていた損害賠償請求訴訟において、11月25日、大阪地裁は、佐川元理財局長への賠償請求を認めない判決を出しました。国家公務員が職務上の行為で損害を加えたときは国が賠償責任を負うという国家賠償法の規定から、公務員個人への直接の請求を認めないとしたものです。

 

国家賠償法第1条

  国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 

判決自体は予想どおりだが・・・

 国家賠償法でこのような規定がある以上、あの判決は予想されていました。被害者救済という面からは、国等に責任を負わせるほうが被害者には有利です。しかし、今回のようなケースでは、こんな形は到底納得できるものではありません。

 国が国家賠償法第1条第2項の規定に基づいて、佐川元理財局長に対して求償権を行使するかどうか不明で、どうやら行使しないような気配だからです。

 今回のケースは、決裁文書の改ざんを指示した公務員に故意又は重大な過失があったことは明白であり、国は、遺族に支払った賠償金の全額をその公務員に請求することが納税者に対する責任です。

 

国には「住民訴訟」がない

 地方自治体であれば、住民は、自治体に対して、損害を与えた公務員に求償請求することを求める住民監査請求、住民訴訟の制度が地方自治法で用意されています。記憶に新しいところでは、山口県の超高級乗用車購入について知事に賠償請求するよう県に命じた判決があります。

 ところが、国では、この住民監査請求、住民訴訟に相当する制度がないのです。これでは国に緊張感をもって行政執行することを期待するのは難しいと思います。

 全国市民オンブズマンなどがこのような制度の創設を求めていますが、なかなか実を結んでいないようです。

 

 今回の事例を契機に、国段階での住民訴訟制度の創設を求める動きが盛り上がることを期待しています。また、今回のケースについて、決裁文書改ざん指示にかかわった公務員(元理財局長だけとは限らない。)に対して国が求償請求するよう、メディアや野党は、納税者に代わって国に圧力をかけていただきたいものです。

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 文科省が11月22日、旧統一教会に対して宗教法人法に基づく質問権を行使し、組織運営や収支に関して報告を求める文書を発送したことが報じられました。

 これまでの数々の民事裁判で、旧統一教会が組織的に違法な集金活動をしていたことは明らかであり、よほどヘマをしなければ宗教法人の解散命令に至るだろうと期待しています。これで、新たな被害はかなり抑えられるだろうと思いますが、既に被害を受けている人たちもできる限り多く救済し、あの反日団体が騙取したお金を取り戻したいものです。しかし、被害者救済法案の方は、いろいろ難しい問題があって、難航しています。

 

マインドコントロールの定義は難しい

 私は与党支持者ではありませんが、マインドコントロールを定義して規制することが難しいことは、与党の主張するとおりだと思います。

 そもそも宗教とは、旧統一教会に限らず、多かれ少なかれ、人々をマインドコントロールして稼いでいるものだと思います。

 現代人はあまり騙されなくなったと思いますが、古くはローマ教会も免罪符なるものを販売して荒稼ぎをしていました。地獄に落ちるという恐怖につけこむマインドコントロールだったのでしょう。

 仏教の追善供養も似たようなものです。亡くなった父母があの世でつらい目に合わないよう追善供養が必要だとマインドコントロールされれば、応じてしまうでしょう。釈迦や親鸞聖人などは、死後の供養など何の役にも立たないと明言しておられたようですが、教団の運営ということを考えれば、そうはいかない部分もあるのでしょう。

 これらの老舗の宗教の行為と旧統一教会の行為を、マインドコントロールの定義で切り分けることは、ほとんど不可能ではないかと思います。創価学会や公明党が消極的になるのも納得です。

 マインドコントロールがあったか否かなどに関わりなく、本人や生計を一にする親族、相続人の生活に影響するような寄付を一律に、幅広くアウトにするような法律がいいのではないかと思います。その寄付によって何かご利益(ごりやく)があることを教団が明確に証明できなければという前提付きですが・・・。

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 今年(2022年)7月に奈良市で安倍元総理を銃撃して殺害した山上容疑者について、精神鑑定を行う「鑑定留置」の期間を検察の請求で来年2月まで延長する決定を裁判所がしましたが、二転三転したようです。

 当初は11月29日までの予定だった鑑定留置を、検察庁が「捜査上の必要」から2か月余り延長する請求をし、裁判所はこれを認めて、来年2月6日まで延長を決定しました。しかし、この決定について、弁護団が「長すぎる」として取り消しを求めて準抗告をし、これを受けて裁判所は、鑑定留置の期間を1月10日までに短縮する決定をしたとのことです。

 

「捜査上の必要」が気になる

 そもそも、報道で伝えられる山上容疑者の言動からは、精神の喪失、耗弱などの異常は感じられず、刑事責任能力に疑問があるとは思えません。また、殺害の方法や動機も隠している様子はうかがえません。検察が留置を引き延ばし、起訴を先延ばししている理由が理解できません。少しでも罪を重くする理由を探しているように見えてしまいます。

 

死刑はありえない

 一部で死刑になるかどうか注目する人もいるようですが、私は、死刑はありえないと思います。

 殺人でも、殺害された被害者が一人だけの場合は死刑にはならないことは、ほぼ判例で確立していると思います。しかも、営利目的やわいせつ目的などではなく、恨みによるものです。安倍氏も旧統一教会の広告塔の役割を担っていたことはたしかで、恨まれる理由が皆無だったとは言い難い部分があります。

 社会に与えた影響についても、自民党などでは「民主主義に対する挑戦」などとアホなことを言う人もいますが、そんな大それたものではなく、単なる恨みで、同情すべき事情も大きいものです。また、社会への影響を言うなら、マイナスばかりでなく、プラスの影響もかなりのものがあります。この事件をきっかけに、旧統一教会の悪行があらためて注目され、被害を受けた元信者、二世信者の救済につながり、新たな被害も抑えられるはずです。

 これまでの裁判例とのバランスを考えれば、無期懲役でも重すぎ、有期刑が相当でしょう。

 犯人は相応の罰を受けなければなりませんが、死刑を求刑すれば検察の自殺行為であり、死刑判決などすれば日本の司法の自殺行為だと思います。政府の圧力に抗してロシア皇太子を襲った犯人を死刑にせず、三権分立を確立した明治時代の大津事件を思い出すべきでしょう。

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 11月中旬、総務省が外形標準課税の基準見直しの議論に入ったことが報じられました。減資をして外形標準課税の対象から外れる企業が相次いでいるのを阻止したいようです。私も現在の基準には矛盾を感じていますが、聞こえてくる議論、意見に違和感を覚える部分もあります。

 

外形標準課税

 都道府県税の一つ、事業税(ここでは法人に対するものに限る。)は、原則は法人の所得(収益から経費を引いたもうけ)が課税標準ですが、資本金が1億円を超える法人に対しては、所得に対する所得割に加え、資本金に対する資本割、付加価値(給料、報酬などの総額)に対する付加価値割の合計額が課されることになっています。それが外形標準課税です。法人が赤字でも資本割や付加価値割が課されるので、都道府県にとっては不況でも一定の税収が得られるというメリットがあります。

 しかし、資本割等が単純にプラスされるわけではなく、その分、所得割の税率が低くなっています。例えば、一般的な営利企業で、外形標準課税ではない場合は所得に対して3.5%(400万円までの所得の部分。標準税率)、5.3%(400万から800万円までの所得の部分)、7.0%(800万円超の所得の部分)の税率ですが、外形標準課税の場合の所得割は所得に対して一律に1.0%です。かなりの差です。

 つまり、企業の業績が良く、所得が多い場合は、外形標準課税の方が税負担が少なくなります。業績が良ければ良いほど、外形標準の方が企業にとっては有利になります。外形標準課税は、不振に喘ぐ企業には厳しく、業績好調の企業には優しい制度です。

 

都道府県には被害者意識が強いようだが

 資本金を1億円以下に減資する企業が多いのは、外形標準課税逃れより、法人税の中小企業特例を受けたいことが大きいと思います。外形標準課税は、企業にとって必ずしも不利ではありませんから・・・。

 資本金が1億円以下の企業が受けられる中小企業の特例は、税率、交際費、留保金課税の扱いなど、大企業と比較してかなり有利です。

 

基準見直しには賛成

 たしかに、資本金だけを基準とするのは変で、見直しには賛成です。資本金の額など、株主総会の議決を得れば帳簿上だけの操作で簡単に変えられますから・・・。ただ、見直し案の中で、資本金と資本準備金の合計額を基準とする案もあるようですが、これは馬鹿馬鹿しいと思います。資本準備金を資本剰余金に振り替えることも簡単にできてしまいます。利益剰余金等も含めた純資産の額を基準とするなら、有りだと思います。

 また、働いている人の数(従業員数にすると派遣社員を増やす可能性)、年商、事業所の数など、幅広く議論すべきでしょう。ただし、外形標準課税は、業績の好調な企業からの税収は減ることを忘れずに・・・。

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