元々は2022年1月から本格施行されるはずだった電子帳簿保存法が、企業の対応が遅れていることから、まず2年間の猶予が行われ、続いて骨抜きになりそうです。
安堵している企業が多い一方、真面目に準備していた企業からは「あの苦労は何だったんだ!」という憤りの声もあるようです。たしかに、国(与党)の対応は、「狼少年」です。対応しなければ青色申告から外すなどと、脅かすだけ脅かしておいて、土壇場で肩透かしが2度も続いているわけですから・・・。
電子保存の義務化
取引の際、請求書などをメール等の電子データで授受した場合、電子商取引という位置づけになります。従来はその請求書等はプリントアウトして紙で保存することが原則でしたが、2021年の税制改正で電子データで保存しなければならないことになり、その制度が2022年1月に施行されるはずでした。準備期間はわずか1年でした。
単に電子データで保存すればいいだけなら簡単ですが、改ざんを防ぐためのタイムスタンプや、相手方名、取引年月日などで検索できる方式での保存が義務付けられており、その部分で各企業が苦労していました。現在の経理システムがそれに対応していない企業がほとんどで、システム変更には大変な費用や手間がかかります。
まず2年の猶予
2022年1月の施行開始が間近に迫る2021年12月6日の日経新聞1面の隅に「電子保存義務化2年猶予」という見出しが躍り、2年間は紙での保存も容認するというものでした。その容認の判断は税務署長がすることになっていますが、企業からは申請する必要もなく、何も手続することなく容認されるという、妙な話でした。
続いて骨抜き
2022年11月25日の日経新聞1面の隅に「請求書保存、印刷も容認」「政府・与党 データ管理のルール緩和」という見出しが載りました。請求書のデータを簡易保存すること等を条件に紙での保存も容認するようです。税務当局が「相当の理由がある」と判断すれば特例として認められるのですが、事前の申請も不要とのことで、事実上フリーパスです。妙な話です。
そもそもが準備不足、検討不足
与党にあおられた税務当局が、準備や検討が不十分なまま制度化だけ先行させてしまったのでしょう。
この制度自体は、単に税務調査がやりやすくなり、税務署が楽になるだけという声も聞かれます。たしかにそう思いますが、これをきっかけにペーパーレス化を進め、経理等の事務作業全体を電子化、効率化することは、生産性向上に資するでしょう。
こういうことは、もっと緻密に、戦略的に進めていただきたかったと思います。
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