地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2022年12月

 12月15日、東京都議会で、新築住宅などに太陽光発電用のパネル設置を義務付ける条例改正案が可決されました。この趣旨には大賛成で、このような制度が東京都だけとはいえ施行されることも歓迎しています。ただ、運用面で多少不安も感じます。

 

制度の概要

延べ床面積が2千㎡以上の大規模建物は建築主が太陽光パネルの設置義務を負い、戸建てやマンションなどで延べ床面積2千㎡未満の新築建物の場合、住宅メーカーや販売業者が負います。ただし、すべての事業者ではなく、都内で年間延べ床面積2万平方メートル以上を施工・販売する業者が該当し、約50社が想定されています。つまり、小規模の事業者が建設する住宅は対象外です。また、屋根面積20㎡未満の建物も対象から除かれます。

 さらに、設置義務を負う事業者も、すべての新築建物に設置しなければならないわけではなく、日当たりなどの立地条件や建築主の意向などを考慮して、設置する建物を事業者が選定することになるようです。パネルを設置すべき建物の割合は、地域の日照量に応じて区分し、高層ビルに囲まれている都心部は30%、区部の大半は70%、低層住宅が広がる市部の多くは85%とされ、これを達成できなかった事業者には罰則はありませんが、都が指導、監督、事業者名の公表等を行うとのことです。

 

運用の公平確保は

 日照条件が悪くペイしそうにない住宅に設置義務を負わせることはできないでしょうから、このような制度になったのでしょう。また、建築主(施主)が、太陽光発電パネルの設置を「絶対に嫌だ」と言えば、業者としては設置させることは困難でしょう。

 このような制度になった事情は理解できるのですが、公平な運用になるかどうか、多少の心配もあります。

 でも、このような制度が全国的に広がれば、原発など不要でしょう。また、パネルや蓄電池の価格も下がるでしょう。期待しています。

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 あまり大きくは報じられませんでしたが、国が宗教法人法に基づく質問権を行使したことについて、旧統一教会側が「要件を欠き、違法」とする意見書を文部科学省に提出していたとのことです。

 宗教法人法では、質問権は、解散命令の事由となる「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などに該当する疑いがある場合に行使できるとされています。文化庁は、教団の不法行為責任などを認めた民事判決が計22件あることを理由に権限行使に踏み切りましたが、教団は意見書で、質問権行使の要件について「法令違反は主に刑法を指しており、民法の不法行為は含まれない」とし、行使は違法と主張しているとのことです。

 

教団側の言い分にも一理

 報道が、意見書の内容を正確に伝えているかどうかは不明ですが、民法の不法行為は、「故意又は過失によって他人に損害を加える」という非常に広い概念なので、「民法の不幸行為は含まれない」ということはあり得ません。刑法などで違法となる行為は、民法上の不法行為にも該当します。このことは、以前にも指摘したことがあります。

 「ちょっと恥ずかしい「不法行為」議論」  参照願います。

 

 教団側が意図しているのは、「刑法等に違反しない民法上の不法行為」のことでしょう。そうであれば、法解釈については教団側の言い分に私は同意します。そもそも、岸田答弁でひっくり返す前の政府の公式見解もそうだったはずです。

 「法令に違反し」とは、刑法等に違反することを指すと考えるのが、普通の解釈だと思います。

 

ただし立件されている必要はない

 ただし、刑法等の犯罪構成要件に該当していれば、立件されたり有罪となったりしていることまでは求めていないでしょう。教団の民法上の不法行為が裁判で認定されている行為が、詐欺罪や強要罪などに該当するような行為であれば、それが刑事事件になっていなくても、質問権の根拠にしていいと思います。

 

 緻密に検討せず、国会での生煮えの議論だけで長年の解釈を変更するから、上げ足を取られるようなことになるのです。注意が必要です。

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 現在66歳ですが、県庁を定年退職後、サラリーマンを続けています。まだ「老後」という意識はなく、老後に向けて終活本などを読み、楽しい老後を夢見ながら準備しています。

 本書の著者は、問題解決の技法などについて何冊か書かれている理学博士、工学博士で、この種の本の著者としては変わり種です。そのためか、年金制度などの経済問題や健康に関するアドバイスについてはこの分野の他の本と同じような内容ですが、他の点で興味をひかれた内容がありました。

 

 自分が何歳まで生きるか分からないので、どのように生きたらいいか迷っているという高齢者(私も含む。)が多いのですが、著者は、そんな答えの出ないことに悩まず、少し長めに何歳まで生きると自分で設定し、それに向けて計画的に生きることを推奨しています。一考に値する方法だと思います。

 金銭的な問題があまりない場合、女性は「遊ぶこと」、男性は「学ぶこと」を欲しがちで、男性の「学ぶこと」には「役に立ちたい」「教えたい」という願望があるといわれているとのことです。自分に照らしてみると、非常に同感します。私は、学習する意欲はかなり高いほうだと思いますが、それは仕事に役立てたい、何かの役に立つかもしれないという気持ちがあります。

 「定年になったら不要なものを整理したい」と考える人は非常に多く、定年になって最初に取り組むのが自室の整理です。しかし、多くの人が途中で続かなくなり、数年たっても片付いていない人が多いようです。私もそうなるかも・・・。

 「中に何が入っているかわからない時は中を見ずに捨てる。見ると捨てられずに元の位置にしまう可能性が大」・・・。これは、なかなか私にはできそうにありません。

 ともあれ、期待どおり、いろいろ参考になりました。

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 政府・与党は、近く公表予定の2023年度税制改正大綱で、NISA(少額投資非課税制度)を大幅に拡充したうえ恒久的な制度とする見込みであることが報じられました。大歓迎です。

 現在は、株式投資にも使える「一般NISA」が年間120万円まで、投資信託などにだけ使える「つみたてNISA」が年間40万円までですが、この2種類の制度を一本化し、年間投資上限額を360万円とする方針を固めたとのことです。つみたてNISAは現行の年間40万円から3倍の120万円に、一般NISAは名称を「成長投資枠」と変更し2倍の240万円にし、つみたてと成長投資を同時に利用できるようになるとのこと。現在は、どちらかしか選択できません。

 また、生涯の投資上限額は1800万円、このうち1200万円は株式投資に使える「成長投資枠」とすることで最終調整しているようです。

 

1800万円で十分

 生涯の投資上限額1800万円について、年金の不足が2000万円と言われている中でなぜ1800万なんだという意見もあるようですが、私はこれで十分だと思います。若いころからこつこつと投資した元本が1800万円になれば、時価は2000万円を超えている可能性が高いでしょう。

 また、資産のすべてをNISAに回すはずがなく、預貯金も残すべきことは当然です。

 

サラリーマンも投資が必須

 私は、岸田政権の支持者ではありませんが、彼が打ち出した「資産所得倍増計画」には賛同しています。サラリーマンも、自分で働いて所得を得るだけでなく、自分が働いて得たお金にも働いてもらうほうがいいことは当然です。「21世紀の資本」の中でピケティーが証明しているように、資本所得の伸びは労働所得の伸びよりも大きいのです。

 公務員時代の仲間の中にも、投資をせずに預貯金だけの人も多いのですが、リスクを感じないのか疑問に思っています。インフレに襲われれば、大幅に目減りしてしまいます。さらに、円建ての預金などしか持っていない場合、日本の衰退による円の価値の下落が大きなリスクでしょう。投資をしないことのリスクにも留意すべきです。

 『「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」(三戸政和)を読んで』

 「資産所得倍増には賛成だが」  参照願います。

 

残念なのは

 残念なのは、私の若いころにこのような制度を用意していただけなかったことです。もう引退しようかと思っている時にこのような制度ができても、私はほとんど使えません。でも若い人たちのために賛成です。

 また、新たなNISAは2024年に新制度として用意し、現行制度とは分離して取り扱う予定のようです。つまり、私が保有しているNISA口座の資産は、新たなNISAには引き継げないのでしょう。旧口座の株式等を値動きを見ながら少しずつ売却し、新たなNISA口座で買い直すのも面倒そうです。どう決着するか、注目しています。

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 また年末が近づいてきました。民間企業の多くは、年次有給休暇の付与は年度(4月から翌3月まで)を基準としていますが、公務員の場合、暦年を基準としている団体が多い状況です。これなどもいろいろ不都合があるので、早めに年度を基準とするよう切り替えるべきだと思いますが、もっと急ぐ必要があるのが、使用しなかった年休を翌期に繰り越す際の1日未満の端数の運用です。

 

端数切捨ての繰り越しは違法

 是正した自治体もありますが、まだ多くの自治体では、年休を翌期に繰り越す際、1日未満の端数を切り捨てる運用をしています。これは国の人事院規則に盲目的に準じているものです。

 しかし、年休は、付与された時から2年で消滅時効によって消滅する以外、労働者から剝奪していい法律上の根拠がありません。したがって、付与されてから1年しか経っていない年休を1日未満の端数だとはいえ切り捨ててしまうことは労働基準法に違反するでしょう。

 厚生労働省も民間企業に対しては、端数をつけたまま繰り越すか切り上げて繰り越すよう指導していますが、総務省は自治体に対して沈黙しているようです。国家公務員は労働基準法が適用されないとはいえ、制度の趣旨からすれば人事院規則も怪しいため、躊躇っているのかもしれません。

 裁判になれば違法とされる可能性が高く、措置要求が提起されればまともな人事委員会、公平委員会なら措置命令を発するでしょう。また、職員団体も気づけば、違法な運用を止めるよう要求するでしょう。

 そのようなことになる前に是正しておくのが賢明で、スマートです。

 「年次有給休暇を繰り越す際の1日未満の端数」

 「地方公務員と労働法制」  参照願います。

 

まだ間に合う

 端数の扱いなど条例で規定してはいないでしょう。運用通知か、せいぜい規則だと思います。改正案の起案など1時間もあればできるでしょうから、根回しも含め、1週間もあれば改正できるはずです。

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