地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2023年04月

 本書の原版は2002年に出版されて大きな反響を呼び、その後の制度の変更などを反映して2015年に改訂版が出版されました。本書(新版、幻冬舎文庫)は、文庫化に際してさらに手を加えられています。

 副題は「知的人生設計のすすめ」で、黄金の羽根とは、制度の歪みがもたらす幸運のことです。それを手に入れると大きな利益が得られます。

 黄金の羽根は、通常はなかなか見つけるのが難しいようですが、税制の歪みのあたりにたくさん落ちているようです。しかも、歪んでいることが分かっていても、既得権益になっているため是正が困難で、恒常的に落ちていることもあるようです。

 代表的なものは個人に課される所得税よりも法人に課される法人税が圧倒的に有利であることのようです。個人事業主が法人化すべきことは当然ですが、サラリーマンも、会社に雇用されることをやめて会社と業務委託契約を結び、法人化するという手もあることが紹介されています。公務員は無理でしょうが、民間企業なら条件次第で応じてくれそうです。企業側にも、労務管理上の厄介ごとから免れるというメリットも考えられます。

 本書の半分くらいは、マイクロ法人を作って税制上のメリットを享受し、急速に資産を築く手法が解説されています。

 あとの半分ほどは、株式投資、不動産投資、生命保険などの投資、資産運用の説明です。マイホームを購入するのも立派な不動産投資で、投資である以上リスクもあります。「住宅ローンは株式の信用取引と同じ」という法則では、自己資金の4倍のローンを組んで不動産を取得した場合、5倍のレバレッジがかかるので、利益も損失も5倍になることが説明されています。私もローンを組んで自宅を取得しましたが、そんなリスクはうかつにも意識しませんでした。

 法人化して自分に対して役員報酬を支払った場合、一定の要件の下に会社の経費として損金に計上できます。さらにその分の個人の所得としては給与所得控除が認められ、いわば経費の二重取りのようなことになっています。そのため2006年度税制改正で「同族会社の役員給与損金不算入」の規定が設けられました。しかし、自民党の支持基盤である中小企業の既得権益を直撃したため猛反発が起こり、翌年には早くも骨抜きにされ、3年後の2010年には制度そのものが廃止されてしまったとのことです。結果、制度の歪みは存続し、黄金の羽根は落ちているままです。

 高齢の私は法人化まではするつもりはありませんが、資産運用、投資、保険に関していろいろ役に立つ知識を得ることができました。

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 安倍政権が新型コロナウイルス対策として全世帯に配布した「アベノマスク」を巡り、業者に発注した単価などの情報開示を勝ち取った神戸学院大の上脇博之教授が、4月24日、記者会見されました。公開されたところによると、マスク1枚当たりの単価(税抜き)は62.6円から150円と、納入業者や契約の時期によって2倍の差がありました。この契約は全て随意契約で、2020年3月から6月までの約3か月間に、17の業者と結ばれたものです。

 

契約のずさんさには今さら驚かないが

 この調達業務をやらされた担当の皆さまは気の毒だったと思います。内閣から「早くしろ」と急かされて、「急施を要する」として業者の言い値で随意契約してしまったのでしょう。

 客観的に見れば驚くべきずさんさですが、政権からのプレッシャーが強烈だったことを想像すると、彼らとしてはやむを得なかったのだろうと思います。その挙句、国民から阿呆呼ばわりされてお気の毒です。

 

公開せずに済ませられると思ったか?

 私が驚くのは、公開請求に対して非公開を押し通そうとし、裁判にまでしてしまった点です。私は県庁で契約事務の総括、情報公開事務の総括を経験していますが、こんなのは、常識的に考えれば公開せざるを得ないものでしょう。公金でマスクを買った契約など、秘密にしなければならない理由はありません。今後の同種の事務に支障を及ぼす恐れがあるかもしれませんが、こんなずさんな契約を結びにくくなるだけで、適正に結べばいいだけです。

 優秀な官僚の皆さまが、裁判になれば負けることを予期できなかったとは考えにくく、公開を少しでも先延ばししたい政権の意向に沿った結果だったのでしょうか?

 

 あのアベノマスク騒動をあらためて思い出しました。私は、以前は冬の寒い時期、外出時は喉を保護するために布マスクを好んで使っていました。不織布のマスクは、雨や雪で濡れたときに息苦しくなってしまうからです。でも、あの騒動以来、布マスクから足を洗いました。アベノマスクをしていると思われたら、恥ずかしいですから・・・。

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 昨年亡くなられた偉大な経営者、稲盛和夫氏の教えを実践していると自称しながら、社員に低賃金を強いるブラックな経営者がいることを憂いています。稲盛氏の「経営12カ条」はすばらしいものですが、氏の経営理念の根底が「会社は全従業員の物心両面の幸福を追求する」であることが、あの12カ条の文言からは伝わりにくいのが玉に瑕だと思います。

 「経営12カ条」(稲盛和夫)を読んで  参照願います。

 

 あの第1事業の目的、意義を明確にする ー 公明正大で大義名分のある高い目的を立てるは、氏自身の言葉では、全従業員の物心両面の幸福を追求することが「どんな大義名分よりも立派な大義名分であり、どんなミッションよりも素晴らしく公明正大なミッション」であることが大前提です。しかし、この第1条の文言からは、必ずしもそれが読み取れません。

 そのため、意図的なのか理解していないのかは分かりませんが、稲盛イズムを悪用する経営者もいて、ネットでもその手の話がいくつも見受けられます。

 

ある会社

 私が仕事で関係しているある会社もその一つです。社長は稲盛氏の経営12カ条の信奉者であると自称し、盛和塾のメンバーで塾の役職にも就いていたことも自慢にしています。業務自体は公共的な仕事なので、入社してくる社員も地元国立大学の卒業生など、この地方の中小企業としてはかなりの人材をそろえています。社会貢献的なことを理念に謳っています。

 しかし、社員の給与等の待遇は必ずしも良くありません。この物価急上昇の中、2023年のベースアップも微々たるものだったとのことです。

 年度目標として「利益○億円」を掲げたとのことですが、私はこれは非常にまずいと思います。社長が「全従業員の物心両面の幸福」を第一義と考えていると社員が信じていない状況下で「利益○億円」を目指して頑張れと言われても、社員としては「社長の財産を増やすために頑張れと言われている」と感じてしまうでしょう。特にこの会社は同族会社なので、なおのことです。稲盛氏も著書の中で、この点は注意を要することを指摘しておられます。

 

 社会貢献などを理念に掲げ、従業員に仕事のやりがいを感じさせながら劣悪な労働条件で働かせることを「やりがい搾取」というようです。この会社も、今は社員の多くが一応やりがいをもって一生懸命に働いておられますが、いつまで続くか分かりません。若い社員の中には、辞めていく人もいるようです。

 稲盛イズムを標榜する経営者がいた場合、その会社の社員の給与水準等の勤務条件を調べ、本物かどうか見極める必要があるようです。黒字を計上しながら、物価上昇率以上の賃上げや物価手当の支給等をしなかった経営者は、まず偽物でしょう。
 盛和塾に関係していた経営者の方々は、稲盛氏の名声を汚さないよう気を付けていただきたいと思います。

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 国会で審議中の入管法の改正案について、国連の「移民の人権担当」特別報告者が懸念を表明する書簡18日付で日本政府に出したことを、国連が21日にホームページで公表しました。書簡では、この法案に子どもの保護ルールがないなどの問題点があり、「国際的な人権基準を下回っている」として抜本見直しを求めているとのことです。

 国連の人権理事会など、私はあまり評価していませんが、それでもこんな指摘をされることは、日本として恥ずかしいことだと思います。

 しかも今回指摘されていることは、収容期間に上限がないことが「拷問禁止条約」に抵触する、収容や釈放の決定に裁判所が関わっていない難民申請回数が2回を超えた人の強制送還を可能にする点について「難民条約に違反すること、在留資格がない子どもたちについても「子どもの権利条約」に沿ってすべての保護措置を与えるべきであることなどです。

 この国連の指摘を受けて、かねてから法案に反対していた国内の人権団体も、法案の廃案を求めています。

 与党は法案の月内の衆院通過を目指しているとのことですが、この国連の指摘に理路整然とした反論ができるのでしょうか?「見解の相違」で済ませられることではなさそうです。これを無視して強行すれば、日本も国際社会からロシアや中国並みの「ならず者国家」だと思われてしまいます。

 

 そもそも、人口減少の中、難民認定を厳しくする必要はありません。移民を認めるかどうかという問題なら慎重に議論しなければなりませんが、祖国に戻ると危険である可能性がある人たちは積極的に迎え入れればいいと思います。
 難民認定を無意味に厳しくすることは、人権を侵害するばかりか、日本の国益にも反します。

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 岸田首相を襲った木村容疑者の手製爆発物、その後の捜査で60メートル離れたコンテナに破片が突き刺さっているのが見つかるなど、かなりの殺傷力があったようです。人的被害がほとんどなかったのは、単に幸運だっただけでしょう。こいつは、岸田首相に対する殺意と同時に、無関係の人が巻き込まれて死んでもいいという未必の故意があったと認めていいと思います。

 一方、安倍元首相を襲った山上容疑者の方は、安倍氏以外の人を傷つけないようにわざわざ近づいて銃撃しています。

 犯罪の動機についても、山上容疑者が旧統一教会を恨むことは当然であり、その広告塔を務めていた安倍氏にその恨みが向くことも同情すべき余地があります。しかし、木村容疑者の方は、選挙に立候補できなかった恨みとか安倍国葬に反対だなどという支離滅裂のもので、なぜ岸田氏を襲撃することになるのか、理解不能です。酌むべき情状は全くないと言っていいでしょう。単に目立ちたかっただけ?

 犯罪の結果は、たしかに山上容疑者の方が重大でした。しかし、「社会に及ぼした影響」ということならば、山上容疑者の行為の結果、旧統一教会の悪行と自民党との蜜月ぶりがあらためてスポットライトを浴び、被害者救済の動きに繋がりました。これも量刑に際して考慮すべきでしょう。

 山上容疑者は執行猶予が付いてもいいと思いますが、そうはならないでしょう。しかし、木村容疑者が山上容疑者より重い刑でなければ公正でないと思います。

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