本書の原版は2002年に出版されて大きな反響を呼び、その後の制度の変更などを反映して2015年に改訂版が出版されました。本書(新版、幻冬舎文庫)は、文庫化に際してさらに手を加えられています。
副題は「知的人生設計のすすめ」で、黄金の羽根とは、制度の歪みがもたらす幸運のことです。それを手に入れると大きな利益が得られます。
黄金の羽根は、通常はなかなか見つけるのが難しいようですが、税制の歪みのあたりにたくさん落ちているようです。しかも、歪んでいることが分かっていても、既得権益になっているため是正が困難で、恒常的に落ちていることもあるようです。
代表的なものは個人に課される所得税よりも法人に課される法人税が圧倒的に有利であることのようです。個人事業主が法人化すべきことは当然ですが、サラリーマンも、会社に雇用されることをやめて会社と業務委託契約を結び、法人化するという手もあることが紹介されています。公務員は無理でしょうが、民間企業なら条件次第で応じてくれそうです。企業側にも、労務管理上の厄介ごとから免れるというメリットも考えられます。
本書の半分くらいは、マイクロ法人を作って税制上のメリットを享受し、急速に資産を築く手法が解説されています。
あとの半分ほどは、株式投資、不動産投資、生命保険などの投資、資産運用の説明です。マイホームを購入するのも立派な不動産投資で、投資である以上リスクもあります。「住宅ローンは株式の信用取引と同じ」という法則では、自己資金の4倍のローンを組んで不動産を取得した場合、5倍のレバレッジがかかるので、利益も損失も5倍になることが説明されています。私もローンを組んで自宅を取得しましたが、そんなリスクはうかつにも意識しませんでした。
法人化して自分に対して役員報酬を支払った場合、一定の要件の下に会社の経費として損金に計上できます。さらにその分の個人の所得としては給与所得控除が認められ、いわば経費の二重取りのようなことになっています。そのため2006年度税制改正で「同族会社の役員給与損金不算入」の規定が設けられました。しかし、自民党の支持基盤である中小企業の既得権益を直撃したため猛反発が起こり、翌年には早くも骨抜きにされ、3年後の2010年には制度そのものが廃止されてしまったとのことです。結果、制度の歪みは存続し、黄金の羽根は落ちているままです。
高齢の私は法人化まではするつもりはありませんが、資産運用、投資、保険に関していろいろ役に立つ知識を得ることができました。
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