地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2023年10月

 性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更しようとする場合、生殖能力をなくす手術を事実上求められる性同一性障害特例法の規定について、10月25日、最高裁が違憲の判決をしました。もう一つ問題になっていた、「変更後の性器部分に似た外観を持つ」という外観要件については、高裁段階での審理が不十分として差し戻し、高裁からあらためて審理されることになりました。

 私は、戸籍上の性をどうするかという点については、外観要件は生殖能力要件以上に不要ではないかと考えています。ただし、戸籍以外の問題と直結させないという前提です。

 性器の外観を変えるとすれば、やはり手術が必要でしょう。最高裁が生殖能力要件で指摘した「意思に反して身体への侵襲を受けない自由への制約」という点では、同じことです。ただ、この問題、単なる戸籍の問題を超えて、他の社会生活に連動させるには解決すべき問題が多すぎます。

 戸籍上の性別が女性であれば、女性用の公衆浴場、更衣室、トイレを使用していいか等が問題になります。これは、性器の外観だけでなく、容貌など全体的な外観も問題になるでしょう。

 

施設管理者に丸投げは混乱を招く

 最も端的に問題になるのは、公衆浴場でしょう。性同一性障害でない女性の多くは、温泉旅館の女性用浴室に外見上は男性の人が入ってくれば嫌だろうと思います。そういう感情は今の時代に合わないので是正すべきだと言われても困るでしょう。

 女性用浴場に入っていい人の範囲を決める権限があるのは施設管理者なのでしょうが、そんな問題を丸投げされても管理者も困るでしょう。利用を断った性同一性障害の人から、人権侵害で訴えられる恐れもあります。

 

 戸籍の問題は裁判所の判決に従って早急に法改正すべきですが、波及する可能性のある他の問題について、社会的な議論が必要です。

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 徳島県で、県教委が高校などに配備した「1人1台」のタブレット端末の故障が多発していることが問題になっています。約8億円かけて1万5千人ほどの高校生に配付しているうち、現時点で3,500台以上が故障で使えず、複数生徒で1台を使うなどの緊急措置をとっているようです。

 故障機は全て中国の「ツーウェイ」社製です。今年の7月くらいから故障が急増したようで、県教委ではこの夏の異常な暑さが原因としています。たしかにそれもあるでしょうが、他のメーカー製ではこんな現象が起こっていないので、やはり品質が劣悪だったのでしょう。

 

調達は気を遣う

 私も若いころ県教委でパソコン、CADなどの整備を担当していました。ただ、そのころは今のようなWTOの国際調達のルールなどはなかったので、今よりはずっと楽でした。それでも、採用しなかったメーカー等から苦情を言われないよう、機種選定にはとちも気を使いました。

 その後、管理職になってから携わった調達では、WTOのルールがあったので、国際問題を起こさないよう苦労しました。今回の徳島県の調達も、金額からもちろんWTO案件でしょうから、難しい問題もあったかもしれません。

 

納入実績要件は?

 今回の徳島県のケースで私が疑問なのは、国内での一定の納入実績があることを要件にしなかったのだろうかという点です。中国製は除くなどという条件は難しいでしょうが、国内の教育機関や研究機関での数千台規模の納入実績のあるメーカー、製品であることを要件とすることは可能だったような気がします。それをしなかったとすれば、冒険が過ぎたと思います。既に十分な実績があったとすれば、徳島県教委は不運だっと言っていいかもしれません。

 中国製のパソコンやタブレットについては、バックドアが仕込まれているかもしれないという懸念もあります。高校で学習用だけに使用している分にはあまり問題にならないでしょうが、数年後に一般に払い下げられると危険かもしれません。

 今回の騒動、全国的にいい教訓になったかもしれません。

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 「となりの億万長者」を読んで興味深く感じたのですが、あれは1990年代の研究に基づいています。社会情勢も変化しているので、あの本に書かれている原則が今も生きているかどうか知りたく、幸い市立図書館にあったので予約し、前著を読んで間もなく本書を読むことができました。

 「となりの億万長者(新版)」(トマス・スタンリーほか)を読んで   参照願います。

 

 本書は前著の続編のような性格ですが、著者は異なります。前著の著者トーマス・J・スタンリー博士と、その娘サラ・スタンリー・ファラー博士が、前著で示した原則が現在も通用するか共同研究を始めた矢先、父のトーマス博士が不慮の事故で亡くなってしまったそうです。娘のサラ博士が引き続き研究を進め、本書を完成されたとのことです。本書は、父と娘の共著になっています。

 結論から紹介すると、前著で示された原則は現在も生きているということです。すなわち、身の丈に合った生活を続け、貯蓄や投資に励めば、誰もがいずれは億万長者になれる!

 本書も、前著同様、調査対象を抽出して多くのサンプルを集め、分析してあります。

 前著には「成功を生む7つの法則」が紹介されていましたが、本書では「となりの億万長者に見られる七つの要素」が紹介されています。ほとんど同じものですが、表現、ニュアンスが微妙に変わっています。

要素1 収入よりも低い支出で生活している。

要素2 資産形成のために、時間やエネルギーや資金をうまく配分している。

要素3 周りを気にしたり、流行を追うよりも、経済的な独立のほうが重要だと思っている。

要素4 両親からの遺産や相続を受けていない。

要素5 子供は経済的に自立している。

要素6 市場のチャンスをとらえるのがうまい。

要素7 自分に合った職業を選んでいる。

 要素7の「経済的独立」というのは、ローンの返済のために働かなくてもいいのはもちろん、仕事を辞めても食っていける状態です。

 前著が大評判を得た後、大勢の億万長者から「これは私だ!」等の感想、体験談が手紙やメールで寄せられ、それらもたくさん紹介されています。本書だけ読んでもいいでしょうが、やはり前著も読んだ方が理解が深まると思います。

 本書の内容には非常に満足しているのですが、日本語版について少し不満があります。
 英単語をそのままカタカナにしたような訳が多く、読みにくいのです。「シクリカル」「コントラリアン」等の言葉は日本では一般的ではありません。「デカ億万長者」は10倍、1千万ドル以上の資産を保有する人のことかと思いますが、確信を持てません。「10キロをバイクで通勤」は日本でいうバイクなのか米国でいうバイク(自転車)なのかも疑問になってしまいます。英語、米語に慣れている読者ばかりではないので、もう少し丁寧に翻訳していただきたいと思います。

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 報道によると、全都道府県、政令指定都市の2023年人事委員会勧告が10月19日に出そろいました。全都道府県等で月例給、期末・勤勉手当とも引き上げられました。

 都道府県の行政職の月例給の平均改定率は、時事通信によると最高の大阪府が1.21%、最低の新潟県が0.74%と、少しばらつきがあります。給料表自体はほとんどの都道府県が人事院勧告と同じ改定をしたと思われるので、職員構成の違いが主な理由だろうと思います。

 引き上げ勧告は、昨年に引き続きで、2年連続です。ただし、昨年は若年層だけが引き上げられ、上の方の号給は給料表も据え置きでした。新旧の給料表を比べると、1級は88号以上、2級は56号以上、3級は36号以上、4級は16号以上、5級は8号以上、6級以上は全ての号が据え置きでした。おそらく、40代以上の職員はいわゆるベースアップはなかった人がほとんどでしょう。

 今年の勧告も、若年層の引き上げ率が大きいのですが、上の方も1,000円ほど引き上げられています。したがって、全職員の月例給の引き上げは、久しぶりになります。

 この月例給の改定率は、報道されている民間企業の賃金改定と比較すると、かなり小さく感じられます。しかし、今回の改定は、人事院と人事委員会が合同で民間企業の給与を調査し、月例給は本年4月分の民間給与、ボーナスは直近1年間(昨年8月~本年7月)の民間の支給状況を集計し、それに合わせて行われたものです。おそらく、民間企業も、基本給の引き上げはわずかにとどめ、賞与、インフレ手当等の形で賃金アップをしたのでしょう。

 

 国もほとんどの地方公共団体も、勧告通りの給与改定を行うものと思います。しかし、この程度の改定では、定期昇給と合わせても物価上昇分にも足りるかどうかといった水準で、暮らしの向上にはつながりません。
 給与については公務員が先導するわけにはいかないので、やはり、まずは民間企業の思い切った賃金引き上げが必要です。最低賃金の大幅引き上げ等、労働分配率を高める政策を行わなければ、格差がますます広がり、社会の不安定化を招いてしまいます。

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 また岸田政権の人気取り政策が飛び出しました。飛び出したはいいですが、どうせまた、不発に終わり、金だけ使う結果になるのでしょう。国民に簡単に見透かされてしまうようなことは、やっても無意味だと思うのですが・・・。「増税メガネ」と呼ばれているのが、よほど嫌なようです。

 岸田首相が所得税減税の検討を自民党などに指示しました。10月20日、首相との面会を終えた自民の萩生田政調会長が記者団に対し、「これから減税策を考えるのに、来年から防衛増税をやるのは国民に全く分かりづらい話だとし、来年度から実施が見込まれていた防衛力向上のための増税は先送りが既定路線だという考えを示しました。

 野党は「露骨な選挙目当て」として反発していますが、野党に言われなくても国民も感じています。

 萩生田氏が言うことはもっともで、増税が目の前に見えているときに、多少財源にゆとりができたから減税だなどという話は考えられません。防衛増税を先送りしても、防衛力向上自体は先送りするつもりはないのでしょう。結局、借金を増やすことになります。

 今、税収が予想外に増えて財源に余裕ができたのであれば、その財源は今後の増税を少しでも緩和するために使うとか、膨大な借金を少しでも減らそうとするのが当然です。自分のお金じゃないからそんなアホな使い方をしようとするのでしょう。

 そもそも、国民が物価高に苦しんでいるのは、円安が不自然に進んでいるせいでもあり、円安に歯止めがかからないのは政府の膨大な借金が大きな要因であると言われています。今の財源のゆとりくらいでは焼け石に水であることは承知していますが、膨大な借金も少しずつ返さなければ、財政再建に取り組む政府の姿勢が見えず、世界の信用も得られません日本の安売りが続くばかりです。

 一時的な戻し減税などで数万円もらえれば少しは嬉しい人もいるかもしれませんが、将来の自分や子、孫の負担が増えることを思うと、私は全く嬉しくありません。
 既に減税などと言い出してしまったので、これを撤回するとがっかりする人もいるでしょうが、減税したとしても支持率は下がります。早めに方針を撤回すべきでしょう。

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