性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更しようとする場合、生殖能力をなくす手術を事実上求められる性同一性障害特例法の規定について、10月25日、最高裁が違憲の判決をしました。もう一つ問題になっていた、「変更後の性器部分に似た外観を持つ」という外観要件については、高裁段階での審理が不十分として差し戻し、高裁からあらためて審理されることになりました。
私は、戸籍上の性をどうするかという点については、外観要件は生殖能力要件以上に不要ではないかと考えています。ただし、戸籍以外の問題と直結させないという前提です。
性器の外観を変えるとすれば、やはり手術が必要でしょう。最高裁が生殖能力要件で指摘した「意思に反して身体への侵襲を受けない自由への制約」という点では、同じことです。ただ、この問題、単なる戸籍の問題を超えて、他の社会生活に連動させるには解決すべき問題が多すぎます。
戸籍上の性別が女性であれば、女性用の公衆浴場、更衣室、トイレを使用していいか等が問題になります。これは、性器の外観だけでなく、容貌など全体的な外観も問題になるでしょう。
施設管理者に丸投げは混乱を招く
最も端的に問題になるのは、公衆浴場でしょう。性同一性障害でない女性の多くは、温泉旅館の女性用浴室に外見上は男性の人が入ってくれば嫌だろうと思います。そういう感情は今の時代に合わないので是正すべきだと言われても困るでしょう。
女性用浴場に入っていい人の範囲を決める権限があるのは施設管理者なのでしょうが、そんな問題を丸投げされても管理者も困るでしょう。利用を断った性同一性障害の人から、人権侵害で訴えられる恐れもあります。
戸籍の問題は裁判所の判決に従って早急に法改正すべきですが、波及する可能性のある他の問題について、社会的な議論が必要です。
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