地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2025年03月

 文部科学省が東京地裁に旧統一教会に対する解散命令請求していましたが、3月25日、東京地裁は文部科学省の主張を認め、解散を命じる決定をしました。教団信者による不当な献金勧誘行為などについて「類例のない膨大な規模の被害を生じさせた」と指摘しています。法令違反を理由とした解散命令は3例目ですが、これまでの2例はオウム真理教など幹部らが刑事責任を問われた件で、民法上の不法行為を根拠とした初のケースのことです。

 あの悪辣な反日教団に対して解散命令が出されるのは大歓迎なのですが、民法上の不法行為を根拠とした点で、少し釈然としないものがあります。民法上の不法行為は、「故意又は過失により他人に損害を与える」ことだけが要件なので、例えばレストランなどで誤ってグラスを割ってしまうことなどまで含まれてしまうからです。恣意的な運用で信教の自由を侵すことを避けるため、従来の政府の解釈も、民法上の不法行為は対象とせず、刑事罰に限っていました。

 ただ、当然のことながら、民法上の不法行為が全て対象になるわけではなく、犯罪と同一視できるほど悪質性の高い行為に限定するのでしょう。そうであれば、刑事事件として有罪判決を受けているかどうかを形式的に問題にする必要はないということでしょう。

 今後の裁判の中などで、日ごろ愛国的なことを言っていた日本の右翼的な政治家たちがあのような反日集団とどのようにかかわっていたのか、明らかになることを願っています。
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 3月26日、兵庫県の斎藤知事第三者委員会の報告について記者会見を行い、自身のパワハラについては認めて謝罪したものの、告発者探しなどの公益通報者保護法違反の問題については、あの文書は誹謗中傷性の高いものだとして、相変わらず対応は適切だったと居直っています。やはり予想どおりでした。

 適切だったと主張するだけで、なぜ適切なのか具体的な根拠の説明はないようです。認めても自分にダメージの少ないものだけ認めて謝罪してしまい、それで済ませようという計算でしょう。

 しかし、彼の主張は矛盾しているように思われます。第三者委員会は多くのパワハラを認定し、今回は知事もそれを認めました。つまり、あの告発文は、かなりの点で真実であったことに争いはないわけです。であれば、あれは根拠のない「嘘八百」「誹謗中傷」ではなく、正当な告発、公益通報に当たり、知事の指示による県当局の対応は違法であったと解さざるを得ないでしょう。パワハラを認めたことによって、論理に破綻を生じたようです。

 さらに、告発されている当事者である彼自身が、あの文書を評価、判断することは、やってはいけないことです。それをやってしまった時点で、違法、アウトであることは、元大阪府知事の橋下氏が指摘されているとおりでしょう。

 兵庫県議会は、それらの矛盾、問題点を議会でキッチリ追及していただきたいと思います。そして、それらの正当な議会活動に対して脅迫したり、誹謗中傷したりする動きがあれば、県警は今度こそ厳格に取り締まっていただきたいものです。
 いずれにしても、斎藤知事の居直りで、兵庫県政の混乱は続きそうです。
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 2022年(令和4年)7月8日に奈良市で発生した安倍元総理の暗殺事件、発生から2年半も経つのに、起訴されただけで裁判が始まっていません。刑事事件でこんなに裁判が遅れるのは、異例でしょう。2023年4月に発生した、岸田前総理に向かって爆発物を投げた殺人未遂事件では、懲役10年の一審判決を受けた木村隆二被告が、2025年3月4日に控訴までしています。

 やはり、安倍事件の遅れが不可解です。あの山上容疑者が犯人であることは疑問の余地がなく、動機も明確です。彼は、旧統一教会に恨みを抱いており、安倍元総理が旧統一教会の広告塔のような存在だったから狙ったという動機には納得できます。

 事件当時の容疑者の精神状態にも問題はなく、山上容疑者本人は責任能力の点で争うつもりもないでしょう。

 なんでこんなに遅れるのか、検察が刑罰を無理矢理重くしようとして材料を探しているのではないかと、つい邪推してしまいます。もう起訴はさえているので、それはないのでしょうが・・・。

 恨みによる普通の殺人で、彼は初犯です。彼の動機には同情すべき点が多く、情状酌量の余地もあります。殺人は許されませんが、安倍氏を狙ったことは、筋違いとは言えません社会に与えた影響が大きいことは間違いありませんが、悪い影響ばかりではありません。この事件をきっかけに旧統一教会問題への関心が広がったという、社会にとって極めて良い影響もありました。彼が事件を起こしたおかげで結果的に数われた教団の被害者も多いでしょう。

 また、彼は、再犯のおそれは、通常の犯人より少なそうです。

 普通に判断すれば、執行猶予がついてもおかしくありません。それを、無理に厳罰に持っていきたい人たちがいる?

 いずれにしても、こんなに裁判を遅らせるのは、人権問題です。

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 3月19日、斎藤知事の内部告発文書に関して、兵庫県の委託を受けて調査を行っていた第三者委員会は、知事の言動をパワハラと認めるとともに、告発文書をめぐる県の対応が公益通報者保護法に違反しているとする報告書を公表しました。

 この第三者委員会は、弁護士らで構成され、法律家らしく緻密に事実認定を行ったうえで報告されています。先の県議会百条委員会の報告は黙殺した斎藤知事ですが、この第三者委員会の報告も黙殺するつもりなのかどうか、注目が集まっていますが、知事は記者団に対し「指摘されたことはしっかり受け止めていく。反省すべきところは反省し、しっかり県政を前に進めていくことが私の責任の果たし方だ。」と述べたものの、告発文書については「ひぼう中傷性の高い文書だったと考えている。県としての考え方は、これまでの記者会見で述べたとおりだ。」と述べたと報じられています。要するに、黙殺しようとしているということでしょう。

報告は知事にとって予想外だった?

 第三者委員会の報告は、特に公益通報者保護法違反の問題について、百条委員会の報告よりも踏み込んで違法を認定しています。ここまで厳しい判断が示されることまではともかく、第三者委員会の判断が知事にとって厳しいものになるだろうということは、私も含め、ほとんどの人にとっては予想どおりでした。

 第三者委員会の調査は県が委託したものであり、知事も了解して委託したのでしょう。知事は、このような報告は予想できなかった?委員会のメンバーが、発注者である知事に忖度してくれるだろうと思った?追及を一時的に逃れるために苦し紛れに第三者委員会に委託することにしてしまった?

 いずれにしても、自分で委託しておいて、その結論を無視すれば、何のために予算を使って委託したのかということになります。黙殺することは許されません。

懲戒処分は?

 私が注目しているのは、元県民局長に対する懲戒処分について、違法・無効としていることです。「違法だから取り消すべき」と言っているのではなく、「明らかに違法」として「その部分について行われた懲戒処分は効力を有しない」と言っています。
 重大かつ明白な瑕疵がある行政処分は、処分者による取消しを待つまでもなく、当然に無効で、始めから無かったことになるというのが行政法の原則です。しかし、確認的に取消しを行うのが一般的です。兵庫県当局も困っているでしょう。どうするのか、注目しています。

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 本書は、2024年5月にパリ経済学校で行われた両著者の対談の記録です。サンデル氏は、正義に関する数々の著書で著名なハーバード大学の政治哲学者です。ピケティ氏は、大ベストセラー「21世紀の資本」の著者です。私は、両著者の著書それぞれに感銘を受け、影響を受けています。

 「これからの「正義」の話をしよう」(マイケル・サンデル)を読んで

 「実力も運のうち」(マイケル・サンデル)を読んで

 「資産所得倍増には賛成だが」  参照願います。

 ピケティ氏によれば、人類はフランス革命等の以降、政治闘争や社会運動のおかげで政治的にも経済的にも平等の方向に向かっていました。しかし、1980年頃から新自由主義が横行するようになり、不平等が拡大しつつあるようです。ピケティ氏は、新たな社会運動等によって平等化の方向に向かわせることは十分に可能と考えておられます。

 レーガンなどによって始まった新自由主義の大きな要素であるグローバリゼーション、能力主義等は、我々の社会に分断をもたらしました。市場に任せればうまくいくという考えが事実に反していることは、米国の医療の惨憺たる状況を見れば一目瞭然です。米国が何を言おうと、日本の国民皆保険の方が優れた体制であることは明白で、民間保険に代替させるようなことをしてはなりません。

 不平等を是正ために、所得の低い人にも高等教育の機会、成功のチャンスを与えるという手法は誤りで、介護とか配管工とかの社会に必須の仕事をしている労働者の待遇を上げなければならないという点で、両著者の意見は一致しているようです。学歴重視、能力重視には、低学歴者、敗者に対する侮辱を含んでおり、いわゆる中道のエリート政治家たちのこのような言動が、社会の分断を招き、米国ではトランプ大統領の誕生、フランスではル・ペン氏の躍進をもたらしたという分析です。ヘッジファンドマネージャーが、教師や看護師の5千倍も稼いでいるという米国の現実は、不公平どころか労働者に対する侮辱であるとしています。これでは、社会が分断されるのも当然です。
 本書には、不平等を是正していくための具体的な提案(グローバル税制など)もいくつも盛り込まれています。日本の政治家の皆さんも、大学無償化(一見平等な機会を与えることは敗者に対する侮辱を含みがち)などを議論する暇があったら、一般の労働者の生活の向上を図るため、本書などで勉強され、不平等の解消に努めていただくことを期待しています。

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