地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

2025年04月

 米国トランプ政権が次々と発信している政策を見ていると、民主主義の失敗を痛感しています。少なくとも長期的に見れば明らかに米国に不利益に働く政策短期的に見ても米国の利益になるか疑わしく世界には悪影響を及ぼすことが確実な政策が、次々に繰り出されます。発表したもののあまりの評判の悪さに、すぐに軌道修正されたり撤回されたりもします。

 あれは、国民がろくに考えずに威勢のいい発言ばかりするポピュリストを選んでしまった結果であり、民主主義の失敗を如実に示すものです。

 米国のことを笑っている場合ではありません。日本の政界から聞こえてくるのも、7月の参議院選挙に勝つためにどうするかという話ばかりです。

 日本は今、安全保障、食糧安全保障、少子化と人口減少等、様々な問題に長期的な戦略で対応しなければならない時に、目先の選挙に勝つためのことに議論が集中しているような情けない状態です。選挙に勝つためには給付金がいいか減税がいいか議論しているようでは、日本の衰退に歯止めがかけられるはずはありません。

 先日読んだある本に、欧米の政治家がプーチンや習近平との駆け引きで負け続けているのは、欧米の政治家は国内での選挙に勝つために能力を使わなければならず、外国との交渉に勝つ能力を磨く暇がないからというようなことが書かれていました。的確な分析で、もちろん日本にも当てはまるでしょう。日本は無策のまま衰退を続けるのでしょうか?

 かといってロシアや中国の体制は絶対に嫌だし、民主主義の弊害を取り除く方策を考えなければなりません。

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 4月22日(火)、石破首相が、物価高対策としてガソリン価格を1リットル当たり10円引下げることを表明しました。生活必需品があれこれ値上がりしている中で、なぜガソリンなのか疑問です。

なぜガソリン?

 マイカーが生活必需品である地域があることも承知していますが、それでも本当に生活に困っている人はマイカーなど持たず、ガソリン代が下がっても恩恵はありません。公共交通や運輸業者などの経営が苦しいのであれば、その部分に限って支援すればいいことであり、ガソリン代を引き下げる必要はありません。

 露骨な参議院選挙対策という声が聞こえてきますが、それに加えて、自動車メーカーや石油業界から政治献金をもらっている見返りでしょうか?

 温室効果ガス排出量削減のため、ガソリン消費を抑制すべき時に、ガソリン消費を奨励するような施策は行うべきではありません。そんなことをするくらいなら、コメの価格を引き下げたり、生活保護費の底上げをしたりすべきでしょう。

国民民主党も

 国会中継で、国民民主党が「ガソリン暫定税率の撤廃」を訴えていましたが、同様の理由で私は反対です。そんな財源があるなら、他に回すべきです。
 私もマイカーを持っているので、ガソリンが安くなれば助かることは助かりますが、食料品が安くなった方が助かります。また、地球環境のためには、ガソリンは高くてもやむを得ないと思います。

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 愛知県豊橋市の新アリーナ建設計画をめぐり、建設推進派が多数を占める豊橋市議会と、昨年11月に計画の中止と既に締結済みの整備運営契約の解除を掲げて当選した市長が裁判で争うことになったようです。

県への審査の申立てから裁判へ

 報道によると、議会が「契約解除には議会の議決が必要」とする条例の改正案を可決したのに対し、市長は議決が法令に違反すると主張し、議決の取り消しを求めて愛知県に審査を求めましたが、知事は3月末にこれを棄却していました。市長側が、この条例を「議会の権限を越え法令に違反する」と主張したのに対し、県は「条例で契約解除を議決事項として定めることを否定する内容が法令などで明文化されていない」などとして棄却しました。

 県の裁定に不服な市長側は、今度は条例改正のの取消しを求めて名古屋地裁に市議会を提訴しました。提訴理由は、「議会の権限を越え法令に違反する」に加え、この条例改正が契約解除を阻止することが目的で「裁量権行使の逸脱または濫用にあたる」などのようです。しかし、この主張、私は無理があると思います。

「解除」という言葉に違和感

 一般に契約の「解除」とは、相手側の債務不履行とか相手側が暴力団関係者だったことが判明した等の契約書で定められた事由があった際に一方的に行うものでしょう。本件についてはそんな事由はないようで、一方的な「解除」はできません。「解除」などと言いつつ、実際は「合意による解約」でしょう。

 契約の相手側がこんな「解除」にすんなり応じるはずはありません。この契約のためにこれまで費やした経費はもちろん、将来得られるはずだった利益も補償しなければならないと思います。

 万一、市長側が裁判に勝ったとしても、「解除」は難しそうです。

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 2024年の夏に表面化したコメ不足問題、政府が備蓄米の放出を始めても品不足感は解消されず、価格も一部を除き高騰したままです。政府は流通の目詰まりなどという認識を示していましたが、流通関係者の間では基本的に品不足という見方が多かったようです。特に凶作だったわけでもないのに生じたこの事態は、政府の失策であることは間違いありません。

 私も、需給計画、見通しが根本的に誤っていた、甘すぎたのだろうと思います。訪日外国人観光客が食べたために不足したなどという分析もありますが、国としてインバウンドを推進しておきながら、その分をコメの需要に盛り込んでいなかったとすればお粗末過ぎるし、また食糧問題に関してそんな綱渡りの計画で実施するなど、正気の沙汰ではありません。農林水産大臣がテレビでコメの輸入の増加に対して文句を言っていましたが、こんな事態を招いたのは農水省の責任です。私もコメの輸入増加には反対ですが、農水省は文句を言える立場ではないでしょう。

 欧米先進国の多くは、主食用食糧の輸出国です。それは、各国が万一の場合にも国民を飢えさせないために、農家への所得補償をして安い食糧を余るほど生産し、ふだんは余剰分を輸出しているからということです。それは利己的な政策だとは思いますが、せめて日本もカロリーベースで最低でも70%の自給率は確保しなければなりません。日本の経済力はジリ貧を続けており、今のように必要なだけの食糧を海外から輸入し続けられるかどうか分かりません。

 今回の「令和のコメ騒動」を教訓に、食糧安全保障を再構築しなければなりません。
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 NHK朝ドラ「虎に翼」で、ヒロインの再婚相手の星航一が戦前に「総力戦研究所」に所属し、その組織が優秀な若者を集め、模擬内閣を発足させて日米が戦争になった場合の結果を予想させたというエピソードがありました。ここでメンバーば、何度もシミュレーションを繰り返し、日本が必ず敗けるという結論を出して政府に報告しました。

 「人は自分の信じたいことだけ信じる」 参照願います。

 ネット情報でこのエピソードが史実であることを知り、調べたところ、本書に詳しく紹介されているようなので、読んでみることにしました。

 私が読んだのは、小学館が発行している「日本の近代 猪瀬直樹著作集8 日本人はなぜ戦争をしたか」、副題が「昭和16年夏の敗戦」です。これと別に、中公文庫で「昭和16年夏の敗戦 新版」(猪瀬直樹)が刊行されており、この巻末には石破茂氏との対談が載っているとのことですが、市立・県立図書館、ブックオフにも在庫がなく、残念ながら入手できませんでした。本文の内容は、本書と同じでしょう。

 「虎に翼」の星航一のモデルは、東京地裁の判事だったところを駆り集められた、三淵乾太郎で、彼は模擬内閣で司法大臣兼内閣法制局長官を務めています。これと同様、陸軍から駆り出されたメンバーは陸軍大臣、海軍から駆り出されたメンバーは海軍大臣といった具合に、出身母体、専門性に応じて、模擬内閣の閣僚らが割り当てられています。各メンバーは、それぞれの省庁等からデータをもらって持ち寄り、ち密に戦争の帰趨をシミュレートしました。その予測は驚くほど正確で、真珠湾攻撃と原爆投下だけは予測できなかったものの、南方(インドネシア等)からの石油や鉄鉱石の輸送は船が沈められてダメになり物資不足になることや、戦争末期にはソ連が参戦することまで予測しています。戦争は、ほぼその予測どおりに進み、敗戦に至ります。

 本書は、研究所の研究生やスタッフの日記、研究生が提出したレポート、証言のほか、「木戸幸一日記」、極東軍事裁判の記録などを集約して、この研究所や模擬内閣による机上演習、議論に迫っています。

 この研究所のこと以外にも、いろいろ知ることができました。東条英機は、陸軍大臣のころは主戦論者の中心でしたが、天皇陛下に対する忠誠心は人一倍厚い人でした。昭和天皇は、戦争を是非避けたいと考えていて、主戦論者の中心である東条を内閣総理大臣にし、主戦論を抑えて戦争を回避するよう命じました。東条も懸命に陛下の指示を達成しようとしましたが、回り始めた歯車は戻せなかったようです。私は、東条を誤解していました。

 巻末の資料も含め、読みごたえがありました。

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