エマニュエル・トッド氏は、人口学、家族人類学などが本来の専門であり、出生率の変化などからソビエト連邦の崩壊、リーマンショックなどを予言したこと等で有名です。
本書には、「アメリカ帝国の失墜と日本の運命」という副題が付されています。1998年から2016年に行われた朝日新聞によるトッド氏へのインタビューをまとめたものです。
私は、2年前に一度読んだのですが、もう一度読み返したくなり、図書館で借りてきました。
社会が近代化するためには教育の向上が必須であり、識字率が向上すると一部の人間だけが権威を独占することが困難になります。また、特に、女性の識字率の向上は出生率の低下をもたらし、それを経ずに社会が近代化することは困難です。その段階で、伝統的なシステムとの決別のため、社会的な混乱が生じ、それが、フランス革命、ロシア革命、中国の文化大革命だったというのが、トッド氏の考えです。
中東のいくつかの国は、現在この段階にあり、それが混乱の根本的な原因であるとしています。
トッド氏は、2002年に刊行した「帝国以後…アメリカ・システムの崩壊」の中で、米国発の「前代未聞の規模の証券パニック」を予言しています。「どのようにして、どの程度の早さで、ヨーロッパ、日本、その他の国の投資家たちが身ぐるみ剥がされるかは分からないが、早晩身ぐるみ剥がされるのは間違いない。」
リーマンショックは、2008年に起こっています。
アメリカについて
米国については、非常に厳しい意見です。2002年の「帝国以後…」でも、「米国はもはや解決ではなく問題をもたらす。」と指摘していましたが、本書でも「米国の腐りきった金融業界は、世界中に何の価値もない証券を売りまくった。人類史上これに匹敵するひどい詐欺があっただろうか。」と述べています。
また、45歳から54歳までの米国の白人の死亡率が1999年から上昇していること、収入の中央値が下がっていることなど、米国社会の混乱、衰退を指摘しています。
その他、行き過ぎたグローバリズムが社会を混乱に陥れている例が、数多く指摘されています。「ユーロは憎しみの製造機」という指摘もあります。
イラン問題などトランプ大統領の起こす騒動や傍若無人な海洋進出を続ける中国の問題など、現在の問題を考えるうえで、大変参考になる本です。
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