本書は、前著「日本人の勝算」での主張、すなわち、日本の再生のためには最低賃金を引き上げて中小企業を改革するしかないことについて、反対意見を詳細に論破し、実行しなかった場合の悪夢のようなシナリオを描いて見せています。

 「中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか」という刺激的な副題がついています。前著でも著者の主張に賛同しましたが、本書を読んで、さらに確信が深まりました。

 『「日本人の勝算」(デービッド・アトキンソン)を読んで』

 

 エビデンスの緻密な積み上げに基づいており、非常に説得力があります。理論的な反論などできないのではないかと思います。

 

国益と企業経営者の利益の不一致

 多少の例外はあるでしょうが、規模の大きい企業の方が生産性が高く、賃金も高いことは否定しようがありません。それでも、人口が増えていた時代は、雇用を吸収するために企業の数を増やすことが国益にかなっていました。

 人口が急激に減少している時代には、人口減少のスピード以上に企業数が減少しなければ、企業の平均規模は縮小し、生産性が低下します。

 生産性に低い企業を退出させて生産性を上げる現実的な方法としては、最低賃金の引き上げがベストというのが著者の考えのようです。私もまったく同感です。

 中小企業経営者としては、従来通り安い労働力を使って生産性が低くても利益を上げられる方がありがたいわけで、国益と企業経営者の利益が不一致になってしまっています。

 「最低賃金を1000円に引き上げたことで倒産してしまうような、低賃金労働に依存した企業は、日本社会にとっても労働者にとってもマイナスでしかないのです。人手不足下でもあり、倒産してくれたほうがありがたいくらいなのです。」等、反発する人は多いと思いますが、これ以外の処方箋はないような気がします。

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