日経新聞の論説委員、編集委員らがそれぞれの得意分野について、2021年を予測したものです。大きく「日本経済はこれからどうなる」「日本企業・・・」「世界・・・」の3つの章で構成され、全部で23の論点について解説されています。
当然ながら、どの章も、新型コロナからの回復の見込み等が話題の中心です。ただ、本書は、10月に既に出版され、執筆は9月ころまでに行われているようなので、例えば米大統領選の結果は出ていません。「書籍」という形のメディアの弱点なのでしょうが、それでもかなり正確に予測されている事柄もあり、参考になります。
米中対立
新型コロナと並んで、日本にも世界にも大きく影響するものとして取り上げられているのは、米中対立です。かつての日米貿易摩擦は、単に通商問題、赤字黒字の問題でした。今の米中対立は、通商問題に加え、ITなどのハイテク覇権をめぐる問題、海洋覇権をめぐる問題が大きくなっています。
現在の安全保障は、通信インフラが支えています。衛星を含む通信インフラが敵国に握られていれば、紛争が生じた際にそれを遮断され、同盟国との通信にも支障が出て、敗戦は必至です。したがって、アメリカが自国や同盟国の通信インフラから中国企業を排除することは当然で、やむを得ないことであり、解決策などない気がします。
自国の高度な技術による半導体を相手国に輸出したくないことも当然で、米企業から半導体などを受託生産している台湾のTSMC(台湾積体電路製造)などを自陣営に囲い込もうとする動きも活発になるだろうと予測されています。
貿易環境の激変
新型コロナの感染拡大で、多くの国がマスクなどの輸出制限に走り、WTOはそれに対して有効な対策を何も取ることができませんでした。WTO協定は、これまでは各国の「輸出したい」という意欲と「自国の生産を守りたい」という意欲の調整が主な役割だったため、輸入障壁を制限するルールは詳細ですが、輸出制限についての規定は少ないようです。
アメリカやその同盟国と取引を継続しようとするハイテク企業(製造業)は、部品の調達も中国企業など以外から行わなければなりません。サプライチェーンの再編成が必要になる企業も多いでしょう。
グローバリゼーションの見直しの動きは数年前から進んでいましたが、新型コロナと米中対立で急激に表面化しました。
日本企業、政府には、難しいかじ取りが迫られています。
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