山口県田布施町で、固定資産税の課税誤りが放置されていたことを内部告発した職員を他の職員から切り離された一人だけの職場に異動させたパワハラ問題が昨年(2020年)6月に発覚し、全国的に話題を呼びました。私も関心があったのでこのブログで2回ほど取り上げたのですが、続報も聞こえてこず、失念していたところ、その後の情報について当時の記事にある方からコメントをいただきました。

 「山口県田布施町のパワハラ 幕引きを許すな!」 参照願います。

 

 いただいたコメントの情報をもとに私も町のホームページで議会の議事録を読んでみました。

 町議会ではこの問題の調査のために特別委員会を設置し、また、弁護士等の有識者による第三者委員会を設置して解明すると表明していましたが、実質的に何も調査しないまま9月に特別委員会も解散してしまったようです。

 

第三者委員会を設置しなかった理由

 特別委員会の委員長を務めた議員の答弁等によると、第三者委員会の設置について町の顧問弁護士から法律上の疑義を指摘されたとのことです。法律上の疑義というのは、地方自治法では附属機関の設置は執行機関には認められているものの、議会については根拠規定がないというものです。

 それは、そのとおりです。議会が外部人材による調査委員会等を設置する根拠規定は見当たりません。ただ、禁止する規定もなく、三重県などでは例があるようです。

 長部局でも、法律や条例によらず、自治法の根拠を有しない審議会、委員会など、山ほどあります。

 第三者委員会の設置が不適当だとしても、特別委員会に外部有識者を参考人として招致して意見を聞くことは完全に適法です。第三者委員会の設置に疑義があるのなら、特別委員会の中で解明すればいいことであり、調査自体を放棄してしまうのは、本末転倒です。幕引きの口実にしたかったのでしょう。議事録や報道を見ると、あの町の議員さんの多くは、町行政の適正化より、くさい物に早く蓋をすることに意識が集中していたようです。

 特別委員会では、有識者の意見を聞いて、再発防止策だけ提言しています。実態や原因を究明せずに再発防止策だけ提言というのは、妙な話です。調査したという形だけ整えるためのアリバイ工作ですね。

 

長や公平委員会の権限を侵す?

 特別委員長は、「執行機関に第三者委員会のような付属機関を設置し、人事異動等の人事行政を諮問することは、 地方自治法の趣旨から町長の執行権限を阻害するものであり、適当でないことを確認」とも言っていますが、これもごまかしです。条例で人事に関する権限を有する附属機関を設置するなどすれば、適当ではないでしょうが、長の権限行使の参考にする目的で有識者に意見を聞くための委員会(条例に基づかない附属機関)など、設置しても何の問題もないでしょう。また、長の権限行使をチェックすることは議会の役割で、長の執行権限を阻害することにはなりません。

 また、特別委員長は「人事に関することは、県の公平委員会、全てこっちに任されていますので、私たちじゃちょっと 事実関係に関してはちょっとできないということになっており・・・」とも言っています。公平委員会は各自治体に設置するもので、県に設置するものではありません。田布施町の場合、一部事務組合に委任しているのでしょう。また、長が行う権限の行使についてチェックすることは議会の役割で、公平委員会の権限などと関係ありません。

 

 やはり、世間の注目が薄れると、変な動きが出てしまうのですね。本件も、まんまと幕引きをさせてしまったようです。

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