1989年のベルリンの壁崩壊、1991年のソビエト連邦崩壊によって東西冷戦というイデオロギー衝突の時代が終結しました。当初は、国際政治における重要な対立が終わったので調和のとれた世界が生まれるという楽観論もあったようですが、すぐに否定されました。本書は、1996年に、次の時代がどういう世界になるのかの予測として書かれたものです。

 従来は西欧文明が圧倒的な力を持ち、他の文明圏は従属的でしたが、近年の世界を見ると、移民や難民が増えたことによる軋轢、中国の台頭による軋轢など、「文明の衝突」と言えるようなニュースに溢れています。

 

本書の主張

冷戦が終わり、それまではイデオロギー対立の中で抑え込まれていた民族問題などの「文明」の対立が顕在化する。文明が発達すると、みんなが西欧文明のようになるわけではなく、異なる価値観を持ったまま発展する。圧倒的な力を持っていた西欧が相対的に衰えつつあり、他の文明との衝突が発生している。

世界は、中華、日本、ヒンドゥー、イスラム、西欧(北米などを含む。)、ロシア正教会、ラテンアメリカ、アフリカ(一つの文明に数えるべきでないとする考えも有力)の8または7の文明圏に分かれている。特にその断層線で争いが頻発するようになり、異なった文明間の争いは激しく深刻なものになる。

当時は日本経済がアメリカを脅かす勢いだったこともあり、独立した文明圏という名誉をいただけたようです。今ならどうでしょうか?

 

現在をかなり正確に予測

 ムハンマドの風刺画を巡るフランスとイスラム諸国の対立は、文明の衝突という言葉にピッタリです。民主主義や個人の自由の尊重を受け入れようとしない中国の専横も、技術だけ近代化しても西欧的な価値観は必ずしも受け入れられないことを示しています。

 日本に関した予測もあります。

 「アメリカが世界で唯一の超大国であり続け、世界の問題に積極的に指導力を発揮し続けられるか、アジアにおける軍事的プレゼンス及び影響力を広げようとする中国と戦うことをアメリカが確約するか、莫大な資源という犠牲を払うことなく、戦争という大きな危険なしに、アメリカと日本に中国を封じ込める力があるか。アメリカがはっきりした決意も公約も示していないし、その可能性も低いので、日本は中国に順応することになるだろう。・・・日本は歴史的にも、自国が適切と考える強国と同盟して安全を守ってきた。」

1996年に書かれたのに、現在の日本のジレンマを正確に予測しています。儒教道徳でもいいので、もう少し中国が道徳的な国になってくれるといいのですが・・・。

また、書かれた当時の世界では、覇権国アメリカの専横に対して日中韓などのアジア諸国が連帯して立ち向かう場面が多く、非西欧連合のように分析されていますが、現状はアメリカを中心にアジア諸国も同調して、中国の専横に待ったをかけている場面が目立ちます。

著者も、中国が「ならず者国家」に急変することまでは予測できなかったようです。

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