新渡戸稲造は、少し前の五千円札の肖像になっていて、高校の日本史でも習ったので、名前は知っていましたが、何をされた方かよく知りませんでした。彼は、国際連盟の事務次長などもされていますが、基本的には偉大な教育者で、東京女子大学の初代学長などをされています。でも、最大の功績は、「武士道」を著して日本人の道徳心を世界に知らしめたことであることが、本書を読んで理解できました。

 

 「武士道」は、新渡戸稲造がアメリカ滞在していた1900年に英語で執筆して出版されたものです。それが各国語に翻訳され、もちろん日本語にも翻訳されています。

 原題は、Bushido  The soul of Japan」(武士道、日本の精神)で、私が読んだのは、「新渡戸稲造博士と武士道に学ぶ会」編、奈良本辰也氏の訳による「対訳 武士道」です。残念ながら、日本語のページだけ読みました。

 

最初に、武士道とは誰かの思想ではなくて日本人の倫理システムであることが説明され、次に武士道の源泉が仏教、神道、孔子の教えにあるとし、それぞれがどんな影響を武士道に与えたか説明されています。

さらに、武士道の基本的な教えである、義、勇、仁、礼、誠、名誉など、また、切腹が行われる理由なども説明されています。匹夫の勇は軽んじられ、大義の勇が尊敬されることも説明されています。

儒学の文献などはもちろん、ギリシャ哲学、西洋の古典文学などから引用して武士道の考え方と比較している箇所も多く、著者の博識、教養に圧倒されました。

 

 エリート、支配階級であった武士の行動規範、道徳が、日本人全体の規範となり、「大和魂」になったメカニズムも説明されています。

 武士道は、名誉を何よりも重んじ、道義に外れた恥ずかしい行いを拒否します。そのためには、命さへ投げ捨てるのが武士でした。

 

 今、日本人の公徳心が世界的にみて高い水準にあるのは、この武士道の名誉心がまだ残っているためだろうと思います。これを「民度が高い」などと得意になるのは、武士道に反する恥ずかしいことでしょう。

 ありもしない功績をあるかのように誇示し、バレている嘘を抜け抜けと吐き続ける政治家もいる今日です。庶民の間では生き続けている武士道的な道徳が、支配者である政治家の世界からは真っ先に失われてしまったのは何故でしょうか?

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