仕事上の必要からSDGsに関する本を何冊か読んでいますが、本書が一番印象に残りました。

本書には、SDGsについての基本的な解説や導入のノウハウ的な説明はほとんどありません。読者がそれらについての基礎的知識があることを前提として、SDGsが社会現象となっている背景(SNSの普及、中国の人権問題と米中対立、経済的格差の拡大など)の説明、SDGsとの関連などが説明されています。

そのうえで、企業が自らのアイデンティティーを持ち、発信していくことの重要性が説かれています。ノウハウ本ではなく、広く社会問題を扱ってSDGsの本質に触れる本だと思います。

 著者は、外資系のネットメディア「ハフポスト日本版」の編集長などをされ、TBS系の「サンデーモーニング」のコメンテーターとしても活躍されていた方です。

 

 本書では、「アイデンティティー」ということにかなりのページを割いています。

 タバコを吸う女性が増えたのも、タバコがうまいからではなく、「自立した個」としてのアイデンティティーを求めてのことという説が紹介されています。女性に限らず、有害だと分かっていてタバコを吸い始めるのは、「大人」であるというアイデンティティーをアピールしたいのかもしれません。

 個人がSNSによって意見などを発信し、同じような意見を持つグループでアイデンティティーが生まれます。消費行動についても、自らのアイデンティティーに沿うようになります。それが不買運動に繋がったりします。

 各企業も、自らの活動について説明することが求められ、行動のバックボーンとしてのアイデンティティーを持たざるを得ません。

 企業自身が、自分たちのビジネスが社会にとってなぜ必要なのかを積極的にアピールしなければならず、また、経営者などがその存在意義を腹の底から理解していなければなりません。そうしておかないと、危機が発生していた時に社会からの支持が得られないとのことです。

 まだ企業の中には、SDGsを「きれいごと」「優等生的」と揶揄する雰囲気も消えてはいません。しかし、時代は変わったのだと認識する必要があります。

 企業、組織でSDGs関連の仕事に携わる人には、ぜひ一読いただきたいと思います。

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