著者は認知科学者であり、その専門性を基に多くの会社から依頼されて数々の製品デザインに関与してこられたデザイナーです。本書も、人間の心理をベースとして、使いやすい製品デザインについて説明されています。

 あるきっかけで「デザイン思考」に興味を持ち、その流れで本書を手に取りました。「デザイン思考」のデザインもそうですが、本書でいう「デザイン」も単に外見をカッコよくすることではなく、使いやすいという機能面を重視した考え方です。

 

アフォーダンスとシグニファイア

 良い製品デザインの要件として、「アフォーダンス」と「シグニファイア」が挙げられますが、これはなかなか難しい概念です。何度も関係個所を繰り返して読み、ネットでも調べて、なんとなく理解できました。

 本書でいう「アフォーダンス」とは、あるモノについて、人がそれに対してどう働きかけるか(何をするモノなのか、どうやって使うのか)ということのようです。シグニファイアとは、その(どうやって使うのかの)手がかり、ヒントというような意味のようです。例えば、ドアであれば、開閉して人が出入りできるというアフォーダンスがあり、ノブや取っ手は、どうやって操作するかを人に示唆するシグニファイアです。細長い板が貼り付けてあれば、そこを押せば開くだろうと見当が付きます。引手が付いていれば、引くか横にスライドさせて開けるのだろうと見当が付きます。

 建築家の中には、見た目をスッキリさせるために、どうやって開け閉めするのか分からないようなドアを作る人もいるとのことです。昔の車で、キーを抜くにはギアをバックに入れなければならないものもあったそうで、そういう馬鹿げたデザインも紹介されています。

 

 ヒューマンエラーで片づけられている事故の多くも、製品のデザインに問題があるケースが多いとのことで、問題の根本までさかのぼった「人間中心のデザイン」を提唱されています。読みながら、「あるある!」と共感する箇所がたくさんありました。

 本書は、デザインを学ぶ学生の教科書としても広く使用されているようです。しかし、製品がますます多機能になって、使いやすい製品はなかなか難しそうです。私も、自宅の照明のスイッチをしょっちゅう間違えます。

 デザイナーを目指す人ばかりでなく、私たちが制度を設計する、仕事のやり方を考える上でも、参考になります。

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