本書は、2022年2月24日に起こったロシア軍によるウクライナへの侵攻を受けて6月に出版されたものですが、全部が侵攻後に執筆されたものではなく、2005年ころから著者が週刊誌などに載せた文章が集約されています。
中堅官僚に過ぎなかったプーチンが権力を掌握するに至った過程、手法、日本との北方領土交渉の状況なども詳細に説明されています。私が本書を手に取ったのは、プーチンがウクライナ侵略を始めた理由、プーチンの主張する正義を知りたかったからですが、それらももちろん説明されています。ただ、複雑すぎて、なかなか頭の整理ができません。でも、プーチンが全面的に悪で、ゼレンスキーが善だと決めつけることもできないことは理解しました。
今の日本では、ウクライナでの戦争について多少なりともロシアに理解を示すとバッシングを受けそうな雰囲気があります。著者もそれを承知しているので、再三、「今回のロシアによるウクライナ侵攻は、ウクライナの主権と領土の一体性を毀損するとともに、既存の国際秩序を武力によって変更する、許すことのできない行為だ。」と主張しつつ、プーチン側の言い分を説明しています。
本書を読んで理解したのは、ウクライナは決して一体ではなかったということです。帝政ロシア時代、ウクライナの東部や南部は小ロシアとも呼ばれ、その地域には日常的にロシア語を話し、「自分は広義のロシア人だ」という自己意識を持つ人が多いようです。一方、西部(ガリツィア地方)は元はハプスブルグ帝国の版図で、同帝国解体後はポーランドに属し、日常的にウクライナ語を話します。両者が一つの国に統合されたのは、第二次大戦後、ソ連領になってからです。
ウクライナの政治は、ロシア寄りの人々、独立派の人々のせめぎあいで、この独立派の中には、親ナチスの流れをくむ人たちもいたため、ロシア側がゼレンスキー政権をネオナチと非難する根拠になっています。
クリミアの問題にしても、欧米のメディアの報道だけを見聞きしていては分からない問題も多いことを知りました。
ウクライナの問題は、ロシア側の言い分には理解できる点も多いものの、武力侵攻で解決しようとした点で、どこかにプーチンの大誤算があったのでしょう。こんなことをしなければ、ウクライナは次第に小国に分裂し、順次ロシアに飲み込まれていったかもしれません。プーチンの侵略により、ウクライナの民族意識が強固なものになったようです。
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