森友学園をめぐる近畿財務局での決裁文書改ざんに関与させられて自殺された近畿財務局職員の遺族が起こしていた損害賠償請求訴訟において、11月25日、大阪地裁は、佐川元理財局長への賠償請求を認めない判決を出しました。国家公務員が職務上の行為で損害を加えたときは国が賠償責任を負うという国家賠償法の規定から、公務員個人への直接の請求を認めないとしたものです。

 

国家賠償法第1条

  国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 

判決自体は予想どおりだが・・・

 国家賠償法でこのような規定がある以上、あの判決は予想されていました。被害者救済という面からは、国等に責任を負わせるほうが被害者には有利です。しかし、今回のようなケースでは、こんな形は到底納得できるものではありません。

 国が国家賠償法第1条第2項の規定に基づいて、佐川元理財局長に対して求償権を行使するかどうか不明で、どうやら行使しないような気配だからです。

 今回のケースは、決裁文書の改ざんを指示した公務員に故意又は重大な過失があったことは明白であり、国は、遺族に支払った賠償金の全額をその公務員に請求することが納税者に対する責任です。

 

国には「住民訴訟」がない

 地方自治体であれば、住民は、自治体に対して、損害を与えた公務員に求償請求することを求める住民監査請求、住民訴訟の制度が地方自治法で用意されています。記憶に新しいところでは、山口県の超高級乗用車購入について知事に賠償請求するよう県に命じた判決があります。

 ところが、国では、この住民監査請求、住民訴訟に相当する制度がないのです。これでは国に緊張感をもって行政執行することを期待するのは難しいと思います。

 全国市民オンブズマンなどがこのような制度の創設を求めていますが、なかなか実を結んでいないようです。

 

 今回の事例を契機に、国段階での住民訴訟制度の創設を求める動きが盛り上がることを期待しています。また、今回のケースについて、決裁文書改ざん指示にかかわった公務員(元理財局長だけとは限らない。)に対して国が求償請求するよう、メディアや野党は、納税者に代わって国に圧力をかけていただきたいものです。

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