著者は、京都大学経済学部などの教授などを歴任された経済学者です。本書の題名は、老後に生活困難にならないための心得をファイナンシャルプランナーなどが書いた本にありがちな題名ですが、そうではなく、少し学術的な内容です。
定年制の歴史、年金、退職金、医療保険、介護保険、雇用保険などの制度について、一通りの説明がされています。特に、米国をはじめとする先進各国では定年制は「年齢による差別」とされ、人種や性による差別と同様に違法とされているにもかかわらず、なぜ日本では適法な制度として定着しているのかについて、詳しく考察されています。
私は、2018年ころ、正社員で定年後に契約社員として再雇用されている運転手が、同じ仕事をしていながら賃金が著しく下げられたことを違法として訴えた事件について報道の解説を読み、米国などでは定年制が違法とされていることは知っていました。しかし、何でも米国追従の日本でなぜ従来どおりなのか不思議に思っていましたが、本書で一応理解しました。年功序列、終身雇用が幅を利かせている社会で定年制を廃止するのは、米国などよりずっと大変そうです。
「定年再雇用後の給与 最高裁の判断は?」
「非正規職員の処遇等 最高裁の判断」 参照願います。
また、定年を廃止した場合に生じうる問題についても、米国などを例に解説されています。知力、体力、気力の衰えについての周囲の評価と本人の自己認識とは、必ずしも一致しないでしょう。現在66歳で働いている私も、周囲にどう評価されているか不安ではあります。
本書も、最後のほうで、定年後の生活を安心して楽しく暮らすための具体的なアドバイスもされています。まず、現役の時に社会保険制度にはキッチリ入っておくことが第一で、そのうえで、安心のためには2千6百万円ほど、ゆとりのある生活のためには5千万円ほどの貯えがあればとのこと・・・。それはそうでしょう。
ただし、2千6百万等の数字はインフレがないことを前提とした数値で、インフレがあれば予測困難とのことです。また、「将来にインフラ経済が日本を襲わないということはありえず、必ずインフレは到来する。」とのこと。
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