本書は、数年前に橘氏が著してベストセラーになった話題作「言ってはいけない 残酷すぎる真実」「もっと言ってはいけない」と同傾向で、あからさまに口に出してしまうと差別主義者のレッテルを貼られてしまうような事実(科学的な実験等で裏付けられたこと)を解説した本です。

 「言ってはいけない 残酷すぎる真実」(橘玲)

 「もっと言ってはいけない」(橘玲)  参照願います。

 

 なぜ人々が正義や善意を振りかざして、皇族や著名人をネットなどで寄ってたかってバッシングするか、その心理について、人類の進化の過程で我々のDNAに刻み込まれた考え方の特性や最新の脳研究の成果などから解き明かされます。

 ヒトは集団でなければ生きていくことができません。①目立ちすぎて反感を買うと共同体から放逐されて死んでしまう。②目立たないと性愛を獲得できず子孫を残せない。 という生活を何十万年も続け、今の我々はそんな状況で勝ち残る特性を備えた者の子孫です。

 近年の脳科学で、自分より下位の者と比べると快感を感じ、上位の者と比べると不快を感じることが分かっています。また、ルール違反をした者を罰すると快感を感じることも分かっています。だから、自分より上位の人(著名人など)のルール違反に対し、自分が反撃されないように匿名で、正義を振りかざして引きずり下すことは、人間にとってこの上ない娯楽であり、我々の本能的な行動のようです。進化の過程で、そのように設計されているのです。

 「能力の低い者は、自分の能力が低いことを正しく認識できているのか」に関心を持った研究者が実験で確認したところ、「バカの問題は、自分がバカであることに気づいていないこと」という「ダニング=クルーガー効果」も解説されています。能力の高い人は自分を少し過小評価するのに対し、能力の低い人は自分を大幅に過大評価しがちのようで、これも集団内で生き残り、子孫を残すために有利な資質のようです。この現象、効果は、日本の政治家についてもしばしば観察されるので、私たちは見慣れています。

 相談して正しい結果が得られるのは、一定以上の能力を持つ者だけで話し合った場合に限られるという実験結果も紹介されています。バカが混じっているとバカに引きずられ、それが民主政治がうまくいかない根本原因であり、決定の場からバカを排除することが望ましいなどという話は、「リベラル」はもちろん、一般人でも抵抗があるでしょう。

 このほか、人種、男女の性差や差別の問題など、今の社会ではあからさまに発言することがはばかられるような話が満載です。社会を一歩離れたところから見直すために持つべき視点を得るために、必読の書だと思います。

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