本書は3部で構成され、全体の5分の3を占める第1部は、政府の統計やリクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」などから、定年後の仕事についての「15の事実」を導き、本当の実態を解説しています。
高齢になっても企業の経営者等としてバリバリ働き続ける人、現役時代の貯えで悠々自適で暮らす人、また、生活費を必死で稼がなければならない人など、様々な境遇の人がいます。現役世代の人たちはその姿を見て、自分はどんな老後になるのだろうと不安を募らせています。しかし、統計が示しているのは、そういう姿は定年後の「典型」ではなく、「定年後の「小さな仕事」に無理なく従事しながら、日々慎ましくも幸せな生活を送っている姿が、高齢期の「典型」であるとのことです。
第2部は、その「典型」に属する7人の高齢者が、生きがいを持って仕事を楽しみ、幸せに暮らしている実例が紹介されています。
第3部は、高齢者が無理なく働きながら幸せに暮らすために、本人、会社、社会がどのようにあるべきかの提言的な記述になっています。
『「小さな仕事」が日本社会を救う』という副題で、定年後も無理をしない範囲で楽しく仕事を続け、それによって担い手の不足に苦しむ日本社会も救うことを説いています。
たしかに、定年前後を境に、収入は大幅に減らされ、正社員から非正規雇用になる人が多数派です。現役世代の人たちは、その姿を見て不安になるかもしれませんが、子育てなどが終わってしまえば稼がなければならないお金も多くはなく、年金をもらえるようになれば月10万円も稼げばゆとりのある生活ができます。責任も軽くなり、時間にもゆとりができて、「他者に貢献する」「新しい経験をする」など、仕事本来の楽しみを見つけて生きがいを持って暮らしているのが、典型的な高齢就業者の姿です。
私もその一員で、本書に書かれていることは事実であると実感しています。
高齢期の就労は、若いころの「高い収入と栄誉」を求める意識から解放され(解放されない人もいますが)、小さな仕事を通じて「他者への貢献」「生活との調和」「体を動かすこと」などを求める方向に変化します。その意識の変化によって、権限や責任が少ない代わりに賃金も安い小さな仕事にやりがいを感じることができるのです。
多くの人が自分に適した仕事に出会えるよう、労働市場の進化が必要です。日本が経済大国として復活することは難しいでしょうが、小さくても豊かで幸せに暮らせる国を目指すべきでしょう。
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