京セラ、KDDIを創業し、日本航空を再建して2022年8月に亡くなられた稲盛和夫氏の最後の著作です。氏の経営哲学が日本のみならず中国の経営者などからも熱烈に支持されているということで、読んでみました。また、この12カ条の信奉者を自称するある経営者があまり社員を大切にしていないように感じられたことから、何が書かれているか知りたくなったことも、本書を手に取った動機の一つです。
著者による「まえがき」には「これら12の経営の原理原則を守りさえすれば、会社や事業は必ずうまくいきます。」と書かれています。
長くなりますが、その12カ条を紹介します。
1 事業の目的、意義を明確にする。公明正大で大義名分のある高い目的を立てる。
2 具体的な目標を立てる。立てた目標は常に社員と共有する。
3 強烈な願望を心に抱く。潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望を持つこと。
4 誰にも負けない努力をする。地味な仕事を一歩一歩堅実に、弛まぬ努力を続ける。
5 売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える。入るを量って、出ずるを制する。利益を追うのではない。利益は後からついてくる。
6 値決めは経営。値決めはトップの仕事。お客様も喜び、自分も儲かるポイントは一点である。
7 経営は強い意志で決まる。経営には岩をもうがつ強い意志が必要。
8 燃える闘魂。経営にはいかなる格闘技にもまさる激しい闘争心が必要。
9 勇気をもって事に当たる。卑怯な振る舞いがあってはならない。
10 常に創造的な仕事をする。今日よりは明日、明日よりは明後日と、常に改良改善を絶え間なく続ける。創意工夫を重ねる。
11 思いやりの心で誠実に。商いには相手がある。相手を含めてハッピーであること。皆が喜ぶこと。
12 常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心で
読んでみると、著者の経験に裏打ちされ、とても説得力があります。ただ、経営学者が整理した「原則」とは異なり、「強い意志で必死に努力を重ねる」等の部分がいくつかの条で重複しており、あまり体系的ではありません。本書は、氏の多くの講演などを編集したものであるためかもしれません。また、「強い意志」「努力」「前向き」などが多くの箇所に出てくるのは、氏の思いが強い部分なのでしょう。
もう一つ難点を挙げると、この12カ条の文言だけ読んでも従業員を大切にする意識が感じられないことです。本書を読めば、第1条の「事業の目的、意義」の中で、従業員の物心両面の幸福を追求することがあらゆる事業の基本的な目的であることが前提であることが分かります。京セラのホームページによれば、同社の社是は「敬天愛人」、経営理念は「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」です。従業員に将来の心配をさせない待遇を与えつつ、社会に貢献しているという仕事の生きがいも与えるという、すばらしい理念だと思います。
それがこの12カ条の文言だけ読んでも読み取れないことは、少し残念です。それが、稲盛氏の信奉者を自称しながら従業員を大切にせずに必死の努力だけ求める経営者が現れてしまう原因かもしれません。
少々批判的なことも書きましたが、著者の経営への熱い思いが伝わりました。経営、組織の運営に携わる人は、ご一読を・・・。
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