日本の人口減少問題を描いた小説です。著者は、退官された厚生労働省のキャリア官僚で、現在は、内閣官房参与(社会保障・人口問題担当。2022年任命)をされておられるようです。私は、県庁で高齢者福祉を担当していたころ、厚生省の老人福祉計画課長をされていた山崎氏にご挨拶させていただいたことを記憶しています。
「今からでも出生率回復に全力を!」 参照願います。
物語の主役は、内閣府で人口問題を担当し、解決のために「人口戦略法」を成立させようと奮闘する官僚らで、一緒に懸命に努力する総理大臣、厚生労働大臣らの姿も描かれます。彼らは、人口戦略法を成立させて、その次に「子ども保険」制度の創設を目指しています。
本書には「人口問題を止める方策はあるのか」という副題が付されており、冒頭の注書きに「この物語はフィクションである。登場人物は著者による創作で、モデルは存在しない。しかし、登場人物が語り、取り組む人口問題の内容は、すべて公開資料に基づく事実である。」とあります。法案作成までの勉強会の場面などで、人口学者など様々な分野の専門家による解説があります。
また、法案が国会へ提出されるまでの「与党プロセス」「閣議決定」「記者会見」、国会提出後の「野党ヒアリング」「委員会審議」等の場で、様々な反対意見に対して答弁が行われ、本書を読んだだけで人口問題に関してかなり詳細な知識が得られます。
野党やマスコミなどから、拙速ではないかとか、なぜ税ではなく社会保険なのか、出生数の目標などは国家による家族問題への介入ではないか、セクハラではないか等の質問が出され、それに答える形で、社会保険方式と税方式の長短、急がなければならない理由、「小さくても豊かな国」を目指すことが非現実的である理由、急いで取り組むべき分野なども分かりやすく示されています。
現政権には、本書に登場する総理大臣や厚生労働大臣のように、覚悟を持ってこの問題に取り組んでくれることを切に望みます。ここで悠長に構えたり、先送りしたりすることは、売国的な態度だと思います。
私自身、人口問題には以前から深い関心を持ち、勉強してきたつもりでしたが、初めて知ったことも多く、とても得るところの多い本でした。分厚く、ストーリー展開よりも解説部分が多いので必ずしも読みやすい本ではありません。しかし、一般的な解説書や論文を読むよりはずっと分かりやすいと思います。
人口問題は多くの政策分野に関係するので、少子化問題を直接に担当している人ばかりでなく、国や地方自治体で何らかの政策にかかわっている人たちには必読の本だと思います。
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