SB新書で250ページ足らず、分厚くない読みやすい本ですが、これからの政治、社会の在り方について示唆をいただきました。
副題は、「選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる」です。ネコというのは、政策の決定などは意識的、無意識的に示される大衆の意思をアルゴリズム、AIで解析して自動化してしまい、政治家はアイドル、または上手くいかなかった場合のサンドバッグの役割だけでいいという意味です。ネコは人々の好感を得るためのアイドル、サンドバッグはゴキブリいう役割分担です。
読み始めたときは真面目な本ではないのではないかと危惧しましたが、データに立脚し、危機に瀕している民主主義の今後のあり方について説得力のある提言がされています。改革すべき最大のネックは選挙制度とのことで、私も同感です。
裏表紙に本文の一部が抜粋されています。
『経済と言えば「資本主義」、政治と言えば「民主主義」。勝者を放置して徹底的に勝たせるのがうまい資本主義は、それゆえ格差と敗者も生み出してしまう。生まれてしまった敗者に声を与える仕組みが民主主義だ。二人三脚の片足・民主主義が、しかし重症である。』
データ分析によれば、21世紀に入ってからの経済成長率は民主的な国ほど低かったようです。既に経済が成熟していた先進国に民主的な国が多いのだから成長率が低いのは当然だと考える人もいるでしょうが、経済発展が同程度の国同士で比較しても民主的な国の方が成長率が低いとのことです。また、20世紀には民主的な国々の方が高い成長率を誇っていたことも事実です。21世紀に何が変わって様々な「民主主義の劣化」が起こったのか?
民主主義が衆愚政治に陥る危険があることは、それが発祥したギリシャ時代から知られていました。21世紀になり、ネット、SNSが爆発的に普及し、フェイクニュースや一つの意見が爆発的に拡大するようになりました。そのため政治家は、これまで以上に大衆の意向を忖度しなければならなくなりました。自分でも理解できない新たな課題に、なにも理解していない大衆の意見を忖度して施策を決めるのでは、適時適切な施策ができるはずがありません。
現在の選挙制度は、数百年前の技術的な限界から、代表者を選んですべてを託す丸投げの制度です。しかし、今の技術なら、様々な課題に有権者の意見を直接に反映させることも容易です。
本書では、最終的な政治形態として、意識的・無意識的に表れる有権者の意思を集め、AI、アルゴリズムによって有権者の意向に合う最善の施策を決めていく形を提案しています。
それを一気に実現するにはハードルが高すぎるので、中間的な形として、被選挙権、選挙権に定年を設けるやり方、平均余命によって一票の重みを加重するやり方、新生児まで選挙権を広げて代理投票を制度化するやり方等も示されています。
特に日本の政治の問題点として、高齢者ウケする施策に偏った「シルバー民主主義」があげられます。著者も指摘していますが、高齢者がそんなわがままな政策を求めているとは限らず、政治家が高齢者に忖度した結果です。私も高齢者ながら子や孫の将来の苦労を少しでも軽減する政策を求めていますが、私の希望はなかなか叶えてもらえません。
また、政治家の年金について、将来現れる成果に応じて金額を決める成果報酬も提案されています。たしかに、日本を今のような貧相な国にしてしまった責任者に、年金など支払いたくありません。
とても示唆に富む本でした。賛否にかかわらず、政治、行政に携わる方は、必読です。
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