著者は児童精神科医であり、医療少年院の勤務などで犯罪を犯した多数の少年たちを診察する中で、彼らの多くが知的障害や発達障害を抱えていることに気づきました。彼らの多くは、丸いケーキを三等分しようとする場合の切り方が分からず、簡単な足し算引き算も、簡単な図形を模写することもできないとのことです。

 この問題は、少年院に入所する少年たちばかりでなく、一般の学校でも存在し、著者らは問題解決に向けて啓発活動をしておられます。

 

知的障害があってもほとんどが放置

 現在の定義ではIQ70未満を知的障害とするのが一般的です。しかし、この定義は1970年代以降のものであり、それ以前は85未満を知的障害としていた時期があったとのことです。それだと全体の16%にもなり、多すぎて対応できないので70未満に変更されたとのことです。その結果、従来は知的障害に数えられていた全体の14%ほどの、IQ70以上85未満の子供たちがケアの対象から外れました。彼らは一般に「境界知能」といわれています。14%は、クラスの下から5人ほどに当たります。

 また全体的なIQはさほど低くなくても、一部の機能が著しく劣る知的障害、発達障害もあるようです。

 彼らの多くは学科が全く理解できず、授業は苦痛だったでしょうが、適切なケアを受ける機会を得られず、犯罪行為に至ってしまうこともあります。

 ただ、彼らに劣っている機能を鍛える訓練を施すことによって、改善させることが可能で、本書ではそれが提言されています。

 

2023年の神戸の事件

 2023年6月、神戸市で6歳児が母親とその兄妹ら4人から虐待、殺害された事件がありました。あの兄妹らには知的に問題があったようです。

 「神戸の6歳児遺棄、誰が悪いのか?」 参照願います。

 

 本書で危惧されていることが、最も悲劇的な形で現実になってしまったようです。

 本書は、教育(特に子供の教育)に携わる人たちには必読ですが、話題になった本なので、ほとんどの人は読んでいるでしょう。著者は、「コグトレ研究会」を検索してサイトを訪問することを勧めておられます。著者が主宰する研究会で、知的に問題がある児童に対するノウハウの普及を進めるもののようです。

 教育関係者だけでなく、行政関係者、子育てに悩む親らにも参考になる本だと思います。

 興味深く読ませていただき、犯罪を犯した人に対する見方が少し変わりました。

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