「LIFESPAN」とは寿命のことです。著者は、ハーバード大学の遺伝学の教授で、同大学の老化生物学研究センターの共同所長なども務め、老化の分野では世界の第一人者です。
「老化は誰も避けられないもので治療などできない」というのが世間の常識ですが、本書はそれに異を唱え「老化は病気である」と主張しています。本書では、様々な最新研究の成果も紹介されています。
永遠に生きられるかどうかは分からないようですが、研究段階では、元気なまま通常の寿命よりずっと長く健康で生きているラットなどは当たろ前のようです。長寿遺伝子に作用して活性化させる物質もいくつか発見されていて、その薬で細胞内の遺伝子に働きかけることによって、細胞を若返らせ、老化を防ぐことも既に現実のものになっています。
私は本書を新聞の書評で見かけ、読んでみたいと思ったのですが、本書が日本ではなぜもっとセンセーションを起こしていないのか不思議です。著者の実績から、怪しげな本ではないことは確かだと思うのですが・・・。これだけ証拠を並べられても半信半疑の人も多いでしょうし、あまり長生きしたくないと思っている人が多いのかもしれません。
人を対象とした厳密な臨床試験ではまだ証明されていませんが、著者をはじめとする研究者自身、またはその高齢の家族などで、ラットで有効性が確認された薬を服用するなどして、老化を防いだり若返ったりしている例も多いようです。挙げられている薬は、ネットで調べたところ日本でも市販されているものもあります。メトホルミンは糖尿病治療薬として処方されている安価な薬ですが、長寿遺伝子を活性化させる効果もあるようです。
遠くない将来、健康なまま120歳くらいまでは生きる人がたくさんいる社会が来ると著者は考えておられます。
また、がんや脳疾患など、老化によって引き起こされる病気も多く、老化そのものを防げば医療費の大幅な縮減も可能です。
本書の後半には、人の健康寿命が大幅に延びた場合の社会への影響も考察されています。長寿命化によって環境破壊がさらに進むのではないか、人口が増えすぎて食料が不足するのではないかといった問題も言及されていますが、これらの問題については著者はさほど心配していません。著者が懸念していることの一つに、社会の格差拡大があります。富裕な人だけが120歳まで健康で働いてますます財を蓄え、楽しい生涯を送ることです。これでは富裕層以外の人の不満が爆発し、社会が不安定化するでしょう。
今の最先端の生命科学の状況を知ることができ、今後の社会を考えるうえでとても考えさせられる本です。ただし、本文だけで500ページ近くあり、特に何も老化防止の対策をしていない高齢の私は、やっと最後まで読むことができました。
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