副題は『ストーリーで学ぶ「ハイデガー哲学」』です。私は、ハイデガー(私はハイデッガーのほうが聞きなれています)については哲学者の名前だということだけ知っている程度で、どんな思想、哲学なのか全く知りませんでした。新聞の書評で本書を知り、物語仕立てでハイデガー哲学の概要を学ぶことができれば儲けものという感じで、手に取りました。
ある国の王子が、サソリに刺されて1か月以内に死ぬことを宣告されます。死の恐怖から怒り悲しみ、他者に理不尽なことをし、森をさまよっているときに不思議な老人と出会います。その老人から「自分の死期を知らされるなんて、おまえはとてつもなく幸福なやつだな」と意外な言葉をかけられるところから物語がスタートします。その後、ハイデガーの哲学を学び、他人を愛することを知りながら、死の恐怖を克服します。
王子が幸福の中で死を迎えても、そこで物語は終わらず、「幸福の王子」(オスカー・ワイルド)に続きます。まるで、オスカー・ワイルドの「幸福の王子」が本書の後日談、後編のような体裁です。王子の名前(オスカー)は、ここから借用したのでしょう。気の利いた演出だと思います。
謎の老人が教授するハイデガー哲学のエッセンスを列挙すると、以下のような内容です。
人間は、自分以外の人間やモノをすべて「道具」(代替可能なもの)とみなしている。
人は自分の死を自覚すると、「自分の人生は何だったのか」「自分という存在は一体何だったのか」自分に問いかける。人が死を恐れるのは、自分の死を考えると自分の死後も世界はこのまま続き、自分が代替可能なモノに過ぎないことを思い知らされるからである。
人間とは、「自己の固有の存在可能性を問題とする存在」である。
そのように学び、王子は「自分はなんてかけがえのない存在だったのだろう!そして、他者はなんてかけがえのない存在だったのだろう!」と叫び、「それぞれがかけがえのないものとして存在していた。そして、それらがあふれる世界の中で、自分はかけがえのないものとして存在している。」と幸福感に包まれ、死を迎えます。
280ページほどの短い物語で、私の理解も十分でないとは思いますが、それでもハイデガー哲学のエッセンスをおぼろげながら知ることができた気がします。
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