著者は若いころは外科医、その後在外公館の医官をへて、高齢者施設での経験も豊富な医師です。また、主に医療や老化を描いた小説家としても著名です。私も、がん治療を描いた「虚栄」認知症を描いた「老乱」など、何冊か楽しませていただきました。

 本書は、著者が高齢者施設での勤務などを通じて出会った多くの高齢者の観察に基づき、老い方を論じた書です。著者は、病気や障害の重症度とその老人の苦悩の深さは一致しないことに気づきました。症状が軽くてももっと改善しないことを苦にする人もいれば、重度の障害で車いすを余儀なくされていても、「年を取ればこんなもの」と達観して気楽に暮らしている人もいます。どちらが幸せな生き方、老い方か・・・。

 著者が高齢者医療に従事するようになったころ、多くの老人が、腰が痛い、膝が痛い、さっさと歩けない、細かい字が見えないなどを嘆き、相談してきたそうです。当人は想定外の不幸に見舞われたような嘆きぶりでも、客観的に見れば、老いれば当然のことです。つまり、多くの老人は、老いることの心の準備ができていなかったために、当たり前のことに苦悩しているということです。

 高齢になれば体のあちこちに不具合が生ずることは当然のこととして、笑って受け入れる身の丈を知って達観して暮らすのが、上手で楽な老い方であるというのが、本書の主張です。

 それに付随して、医療への過信を戒めています。認知症治療薬などには懐疑的で、現時点ではあまりあてにしてはならないようです。また、リハビリも同様、がんばってもダメなものなダメなので、あまり期待しすぎるとダメだった時の落胆が大きいので、あまり期待値を上げない方がいいようです。

 著者も著者の奥様も、がん検診を受けたことがないそうです。がん検診を受けない医師は多いとのこと・・・。検診には、放射線被ばくが伴い、日本人のがん患者の30人に一人は検査による被ばくが原因と言われているそうです。

 導入した高額機器の元を取るための検査、使用期限が迫った薬を廃棄しないための処方も行われているなど、医療界の裏話も満載で、勉強になりました。

 私も、要介護になるのを少しでも先延ばししたくて、節制したり運動したりしていますが、いつかは要介護になって死ぬことを意識し、心の準備は忘れないようにしたいと思います。

 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。

 
サイト案内(目次)

スポンサードリンク