著者は、ゴールドマン・サックス証券会社などを経て、現在は社会的金融教育家として、金融に関する情報発信や教育活動をされている方です。副題は、「ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」」です。
中学2年生の少年が主人公で、たまたま知り合った若い女性と一緒に、謎のおじさん(ボス、投資家)からお金、社会のしくみについて教えてもらうというストーリーです。中高生向けのようですが、成人、老人も勉強になりました。
説明は、まず、ボスが二人に「お金の正体」を理解させることから始まります。その正体とは、①お金自体には価値がない、②お金で解決できる問題はない、③みんなでお金を貯めても意味がない の三つの言葉に集約されています。
①については簡単に理解できます。お金(現在ではお札)そのものは単なる紙の印刷物で、日銀などの発行者は、お札が古くなれば焼却処分します。また、②についても、無人島にお金を持っていっても何の役にも立たないことはもちろんです。
「物語を解決しているのはお金自体ではなく、お金を受け取る人々」「お金が商品に変わるのではなく、自然資源に無数の労働が結びついて商品が生産される」「お金の力は選ぶ力。解決してくれる人を選ぶことしかできない」等、例を挙げて解説されています。人は、お互いに労働を提供し合い、支え合って生きていますが、それを効率的に媒介するのがお金です。お金自体には価値がなく、お金を提供することで他人の労働を提供してもらえるだけです。
また、政府が国民に税をお金で払うことを要求、または容認すれば、国民はお金を求めるようになり、お金への需要が生じます。国民がお金に価値を感じるようになれば、媒介手段として活用できます。
国内で考えれば、お金は移動するだけで増えも減りもしません。現在の日本で預金が増えているのは、誰かの借金が増えているわけです。誰かとは、主に政府です。政府の借金の増加は、個人や企業の預金の増加として存在しており、帳消しです。国債の増加を「つけを将来の世代に払わせる」わけではなく、政府が借金して得たお金は現在の国民の労働に対して支払われており、将来の世代の労働をあてにしているわけではありません。
これらの理論は、現代貨幣理論に沿っているように私には思えます。
「文藝春秋オピニオン2020年の論点100」を読んで
国債が国内で消化されている限り、増加しても全く心配する必要がないという点はまだ完全に信じ切れませんが、本書の内容は説得力があります。
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