昔テレビドラマとして放送されたのをたまたま見て感動し、その本を図書館で見かけたので読もうと思いました。

 幹部警察官(警部)が、妻を殺害したといって自首してきます。アルツハイマーが進行し、数年前に白血病で死んだ一人息子のことすら忘れてしまいそうになって、「子供のことを忘れないうちに、母として死にたい」と苦悩する妻が「殺してくれ」と泣きながら懇願したため、彼は不憫になって妻を絞殺します。彼は、警察学校の教官だった時の教え子からも慕われる人格者でした。

 彼は、犯行の動機や状況は詳細に供述するものの、犯行から自首まで2日間の空白があり、その間に何をしていたかは頑なに供述を拒みます。警察主流派は世間の非難を軽くしようと「死に場所を求めてさまよっていた」というストーリーをでっち上げ、それを本人にも自供させて、送検します。検察の主流派も、そのストーリーに乗って起訴し、裁判所の主流派もそれを容認します。しかし、その不自然なストーリーに納得できない警察、検察の非主流派が2日間の謎を解明しようとしますが、できません。「調書の捏造」を報じたマスコミもあり、裁判所の非主流派もストーリーに納得できないまま実刑がが確定し、刑務所に収監されます。

 本書では、非主流派の面々の内面の葛藤、各組織内の争い、警察と検察の暗闘などが描かれています。

 その中で、裁判長も「『迅速なる訴訟進行』こそ出世の早道」と考え、4者(警察、検察、裁判所、弁護士)の利害が一致して事件を早く終わらせる描写があります。その部分、まさに「絶望の裁判所」に描かれていた状況であり、私が傍聴した贈収賄事件の進行と重なります。

 「絶望の裁判所」(瀬木比呂志)を読んで  参照願います。

 

 2日間の謎は、納得できなかった警察官の努力で最後に明らかになりますが、ネタバレになるので、ここでは省略します。ただ、私は骨髄バンクに登録し、ドナーになる機会を20年以上待っていましたが叶わず、55歳で登録を抹消されました。その無念な経験もあって、この犯人の気持ちはよく理解できます。
 テレビで見て真相を知っていながら読んだわけですが、それでもおもしろく、感動もしました。

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