私は、ほとんどの日本人と同じく、ロシアの武力侵略の問題ではウクライナを応援しています。本書の副題は「日本と世界に何が起きるのか」ですが、これはウクライナの敗北を前提にしています。したがって、実は読んでいて憂鬱になってしまいます。

 著者はフランスの人口学者、家族人類学者で、自殺率や乳幼児死亡率の動き等の人口データや家族形態等を分析し、ソ連の崩壊、米国発の金融恐慌の発生など、数々の「予言」を的中させてきました。彼の分析は非常に説得力があり、私もこれまでに彼の著書を何冊か読み、ファンになっています。

 「グローバリズム以後」を読んで

 「第三次世界大戦はもう始まっている」を読んで

 「老人支配国家日本の危機」を読んで  参照願います。

 ウクライナの敗北は、米国や西欧などの「西洋」が、ロシアなどの「その他の世界」に敗北していくことの象徴です。「その他の世界」が西洋に背を向けるのは、「その他の世界」の低賃金労働者を搾取しながらブルジョアとしてふるまう西洋への反発、自分たちの価値観を押し付けようとする傲慢さに嫌気がさしていること等からです。

 本書は、2023年の夏ころ未来予測の形で執筆されましたが、2025年の春時点で見ると、既にかなり実現してしまっている感があります。

米国や西洋の衰退

 米国は先進国で唯一、平均寿命が低下している国です。2014年に78.7歳だったのが、2020年には77.3歳に、2021年には76.3歳になっています。黒人の死亡率は減少を続けており、白人男性の自殺、アルコール中毒等による死亡が平均寿命を引き下げています。

 ユニセフの統計によると、2020年ころの乳幼児死亡は、新生児千人当たり、米国は5.4人、ロシアは4.4人、英仏独は3人台、日本は1.8人とのことです。米国は衰退しており、その米国が主導している西側も衰退を免れません。

 米国や西洋の発展、繁栄の原動力であった勤勉、教育の重視などのプロテスタント的な美徳は、影をひそめてしまいました。米国の有名大学、特に理工系学部に占める外国人学生が増えました。製造業を支えるエンジニアの数は、米国は、人口が圧倒的に少ないロシアより少ないとのことです。これでは、製造業が衰退してしまうことも当然です。

 こんな状態に至ってしまえば、いかにトランプが保護主義的な施策を打ち出しても、エンジニアがいなければ製造業が復活できるはずがありません。物価上昇、物資の不足などで混乱を招くだけでしょう。
 日本は幸いにまだ米国ほど絶望的な状態ではありません。しかし、大学の理工系の不人気など、米国社会に近づきつつあります。西洋の失敗に学び、地に足の着いた産業政策を行っていかなければなりません。

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