本書は、2024年5月にパリ経済学校で行われた両著者の対談の記録です。サンデル氏は、正義に関する数々の著書で著名なハーバード大学の政治哲学者です。ピケティ氏は、大ベストセラー「21世紀の資本」の著者です。私は、両著者の著書それぞれに感銘を受け、影響を受けています。

 「これからの「正義」の話をしよう」(マイケル・サンデル)を読んで

 「実力も運のうち」(マイケル・サンデル)を読んで

 「資産所得倍増には賛成だが」  参照願います。

 ピケティ氏によれば、人類はフランス革命等の以降、政治闘争や社会運動のおかげで政治的にも経済的にも平等の方向に向かっていました。しかし、1980年頃から新自由主義が横行するようになり、不平等が拡大しつつあるようです。ピケティ氏は、新たな社会運動等によって平等化の方向に向かわせることは十分に可能と考えておられます。

 レーガンなどによって始まった新自由主義の大きな要素であるグローバリゼーション、能力主義等は、我々の社会に分断をもたらしました。市場に任せればうまくいくという考えが事実に反していることは、米国の医療の惨憺たる状況を見れば一目瞭然です。米国が何を言おうと、日本の国民皆保険の方が優れた体制であることは明白で、民間保険に代替させるようなことをしてはなりません。

 不平等を是正ために、所得の低い人にも高等教育の機会、成功のチャンスを与えるという手法は誤りで、介護とか配管工とかの社会に必須の仕事をしている労働者の待遇を上げなければならないという点で、両著者の意見は一致しているようです。学歴重視、能力重視には、低学歴者、敗者に対する侮辱を含んでおり、いわゆる中道のエリート政治家たちのこのような言動が、社会の分断を招き、米国ではトランプ大統領の誕生、フランスではル・ペン氏の躍進をもたらしたという分析です。ヘッジファンドマネージャーが、教師や看護師の5千倍も稼いでいるという米国の現実は、不公平どころか労働者に対する侮辱であるとしています。これでは、社会が分断されるのも当然です。
 本書には、不平等を是正していくための具体的な提案(グローバル税制など)もいくつも盛り込まれています。日本の政治家の皆さんも、大学無償化(一見平等な機会を与えることは敗者に対する侮辱を含みがち)などを議論する暇があったら、一般の労働者の生活の向上を図るため、本書などで勉強され、不平等の解消に努めていただくことを期待しています。

 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。

 
サイト案内(目次)

スポンサードリンク