250頁ほどの講談社現代新書ですが、読みごたえがありました。私は一応法学部出身で、就職後も法律的な仕事が多かったのですが、自分がほとんど何も知らないことを思い知りました。

 この著者の別の著書を読んでおもしろかったので、他の著書も読みたくなってネットで検索し、まず本書を読むことにしました。著者は、30年以上裁判官を勤められた後、明治大学法学部教授に転身された方です。

 「絶望の裁判所」(瀬木比呂志)を読んで
 「現代日本人の法意識」(瀬木比呂志)を読んで   参照願います。

 本書は、日本人が法的リスクに鈍感であることを多くの事例で指摘し、リスクの恐ろしさを知って予防を促すものです。

 第1章でろくに契約書も作らずにお金や土地の貸し借りをする日本人の危うさが、数多くの例で示されています。第2章では交通事故、第3章は不動産関係のトラブル、第4章は痴漢冤罪を例に日本の刑事司法の恐ろしさが説明されています。その後の章でも、離婚、相続、雇用など、発生しやすいトラブルと、それらを防いだり被害を最小限にするための方策が説明されています。

 日本の刑事裁判が人権を無視した恐ろしいものであることは、「絶望の裁判所」に関する投稿の中で紹介した私が仕事の関係で傍聴した刑事裁判の見聞から私も承知していました。本書では、不利益を最小限にするために可能な対策も説明されています。

 本書では、起こりやすい個人的なトラブルに関する法的リスクと、その対処法が主に紹介されています。しかし、最後の部分に、日本という国家の危機管理がお粗末な状況であることが指摘されています。

 軍部の独走を許して無謀な戦争に突入した危機管理の欠如、危険極まりない金融商品を顧客に売り続ける金融機関、赤字国債の大量発行を続ける政府、過酷事故が発生した場合は日本を壊滅させかねない原発の稼働拡大・・・
 危険を冷静に把握して、管理しきれないリスクは冒さないという当たり前の危機管理ができていない日本政府のていたらく、こんな状態から脱却しなければなりません。いろいろ考えさせられました。

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