原発事故を巡り、東電の株主42人が旧経営陣に総額23兆円超を東電に賠償するよう求めた株主代表訴訟の控訴審判決で、東京高裁は6月6日、旧経営陣の法的責任を否定し、13兆円超の賠償を命じた1審判決を取り消しました。
争点となったのは、巨大津波を予見できたか(予見可能性)、対策をしていれば事故を防げたのか(結果回避可能性)です。2002年に政府が公表した地震予測「長期評価」に基づき、東電の子会社は最大15・7メートルの津波が到達すると試算していました。また、東電の担当部署は長期評価を受け、「津波対策は不可避」とした上で、経営陣に対応を委ねていました。
一審では専門家が議論を重ねて出した長期評価の科学的信頼性を肯定し、対策工事をすれば「重大事態を避けられた可能性が十分にあった」としました。ところが、高裁判決は、事故を防ぐには原発の運転を停止するしかなかったとし、「停止を指示するほどの信頼性のある根拠と言えない」と長期評価を位置づけ、「切迫感を抱かなかったのはやむを得なかった」としました。
原発事故を巡っては、最高裁が2025年3月に、業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣2人の全面無罪を確定させています。この決定でも巨大津波の予見可能性を否定しており、今回の控訴審判決はこの最高裁の決定に準じたものでしょう。
すぐに原発の運転を止め、事故防止策を取らねばならないほど差し迫った事態でなければ、対策を先送りして事故が起きても法的責任は問われない・・・。国民感覚と懸け離れ、非常識な司法判断です。
原発のようなものについては、少しでも安全性に懸念があれば対応しなければならないことは当然です。危機が切迫している状況であるか否かで判断するのではなく、絶対に安全といえる状況であるかどうかで判断しなければならないことは、当然です。
今回の判決、判断基準を明らかに誤っています。こんな司法判断では、政治家や経営者は今後も甘すぎる判断を続け、日本が壊滅するような事態を引き起こしてしまうのではないか心配です。これは、もう人災です。
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