本書は、福島県国見町などで、コンサルタント会社が企業版ふるさと納税による寄付金等を使った怪しげな地方創生事業を自治体に提案して実施させ、暴利をむさぼろうとしていた事件を記録したものです。著者は、仙台市に本社を置く河北新報という地方紙の記者です。類似の手口の事件は、東北地方だけでなく、北海道や九州の自治体でも発生しています。
企業版ふるさと納税制度は、寄付した金額の最大9割もの法人税等の税額控除を受けることができる極めて有利な制度ですが、寄付金を支払った企業が寄付を受けた自治体から見返りを受けることを禁じています。しかし、普通に入札に参加して契約の相手方になること等は「見返り」にはならないとのことです。本書の例では、企業版ふるさと納税制度の対象となる「地方創生事業」を自治体が実施し、その対象事業に寄付した企業のグループ企業がその事業を請け負って利益を得るものです。寄付した企業は税額控除を受けるので、グループ全体の利益は不当に膨らみます。
コンサルタント会社が上記のような組み立てを考え、自治体と企業グループを結び付け、事業実施に持っていきます。さらに、自治体の人材不足に付け込んで、アドバイザーとして事業の計画から実施を仕切り、その企業しか参加できないような仕様で事業者を公募し、「競争性」を偽装して、実際は市価より非常に高い価格で契約します。
このコンサルの代表は、総務省所管の「地域力創造アドバイザー」にも登録され、国の費用で自治体に派遣されて事業のアドバイスなどをしていました。自治体職員や首長が騙されてしまったのも無理がないかもしれません。
非常に巧妙で複雑なので、一部の議員が疑問を持ってもワンマン首長が強引に議会を通してしまったりします。
国の地域創生交付金や過疎債も使ったりするので、仮に事業が失敗して何の成果も得られなくても、その自治体の懐(寄付金以外の一般財源)は痛まないというケースもあるようです。しかし、無駄になった資金はすべて税金ですし、寄付金も一般財源です。
これらの事件は、2022年から2024年頃、国見町などで発生し、2023年から著者らが記事にして追及されていたようですが、私は全く知りませんでした。地方自治関係のニュースには注意していたつもりなのですが、私の地域ではあまり報道されなかったようです。やはり現役を退くと情報に洩れが出てしまいます。
私も、県職員時代に新しい事業などで発注の仕方に悩んだことは何度もあり、コンサルの提案に跳びつきたくなる担当者の気持ちも理解できます。組織内にノウハウの蓄積が大切です。
本書は、過疎地に限らず、自治体で事業を担当される職員、議員さんに必読です。
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