2025年の始めに話題になっていた本です。著者は、バブル崩壊後の1993年に都市銀行を辞め、単身渡米されて、グローバルな機関投資家に対する投資コンサルティングに従事されています。これまでに何度も、金融・経済の大きな潮流の変化を予測し、的中させておられるようです。

 本書の主張は次のようなことです。1980年代から世界を席巻してきた新自由主義の中で、日本はその流れに乗れずに「失われた30年」を経験しました。しかし、その流れ、グローバリズム、小さな政府への志向が終わり、今は逆方向へ向かいつつあって、その新たな流れは日本にとって有利なものであるとのことです。

 カジノのオーナーは、必ずハウスが勝つようなシステムを築きますが、覇権国アメリカも自国に有利な仕組みを築きます。米国の庇護の下、日本は冷戦下の「大きな政府」のルールで勝ち続けましたが、ソ連が崩壊し、米国にとって日本を優遇する意味がなくなりました。また、勝ちすぎた日本は、米国の脅威とみなされました。その結果、新自由主義の「小さな政府」のルールの下で潰されていたのが「失われた30年」です。日本は、既存の雇用を守るために徹底した効率化をせず、新自由主義の最大の敗者になりました。

 新自由主義における最大の勝者は中国で、米国にとって最大の脅威になりました。そのため今度は、中国を抑え込むために「強い日本」が必要になりました。また新自由主義の弊害も顕著になって、「大きな政府」へのルールチェンジが起こりつつあり、日本に追い風が吹き始めたとのことです。

 この追い風を生かして日本経済を復興させなければなりません。人口減少によるデフレ圧力が懸念されていますが、著者によれば、人口減少は必ずしもデフレの原因になるわけではなく、インフレの原因にもなるとのことです。労働力不足が賃金の上昇、消費の拡大につながるからです。読んでいて、とても説得力があり、いろいろ腑に落ちました。

 中国経済の急速な減速や米中対立の現状と見込みについても、多くのことを知ることができました。全体的に豊かになる前に急速な高齢化を迎えている中国の動きが心配です。これまで「偉業」のない習近平が、追い詰められて「窮鼠猫を噛む」ように台湾侵攻に踏み切る懸念もあります。

 特に現役世代には一読をお薦めします。
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