著者の佐高氏は、歯に衣を着せないリベラル派の著名な評論家、もうお一人の前川氏は政治家にあらがった硬骨の官僚として著名な元文部科学事務次官です。

 表紙には、「「本当の学び」で国家と権威を疑え」という副題、「排外主義、陰謀論、ポピュリズム、断定調が渦巻く時代ー鵜呑みにせず、自ら問い続ける者だけが生き延びる。」「この国の未来のためには、いまこそこの力が必要だ!」等の呼びかけが記されています。本書の発行は2025年9月ですが、著者らの切実な想い、危機感は、2026年2月の衆院選では国民に届いていなかったようです。

 「はじめに」の中で先の大戦の戦争責任に触れ、「騙された」と言えば免罪されるわけではないことが指摘されています。その上で、「なぜ、玉木や立花や斎藤(兵庫県知事)や石丸に、とりわけ若い人はだまされるのか?」と問いかけ、本編は教育、学びに関する議論が中心になっています。日本の教育の歴史、世界の教育の状況について、いろいろ知ることができました。もちろん、本書の趣旨に添い、書かれていることを鵜呑みにしたわけではなく、自身の体験等からそれが真実であろうと納得した上での知識です。

 明治の始めの「学制」は学問によって国民に生計の途を与えることを目的としていましたが、明治中期以降は、国家に有為な人材を育成することが主な目的に変わりました。個人の人生を豊かにするためではありません。「学校外の義務教育」という制度が日本以外の先進国にはどこでも存在しますが、日本の義務教育は今も学校だけしか認められていません。学校で指導要領等に従って、国家に有為な人材を育てるためでしょう。

 日本でも、私立学校は国の監視が緩く、比較的自由な教育も行われていると指摘しています。私も、県の教育委員会にも在席したことがあり、知事部局の私学所管課にも在席したことがあるので、良く分かります。

 両著者は、SNSでの情報拡散で世論が簡単に傾くことに危惧を抱かれています。この世論の雪崩によって高市早苗が自民党総裁になり、日本の首相になって改憲の旗を振ったら本当に危ないことだと指摘されています。残念ながら、その危惧が現実になってしまいました。

 対処するには、社会としては既存のメディアが頑張ってファクトチェックをきちんとすること個人としてはじっくり腰を落ち着けて読書をする習慣をつけ、なんでも疑ってみることが勧められています。また、過去には、騙されたことに人々が気づいた時に革命が起こるようです。
 危ない世の中になってしまいました。
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