著者は、日本銀行、JPモルガン・チェース銀行を経て、現在はふくおかフィナンシャルグループのチーフストラテジストをされておられる金融の専門家です。本書は、現在進行中のインフレ、円安の原因と影響の深刻さを訴えるため、今年(2026年)1月に急いで出版されたもののようです。
本書を読んで、日本でインフレが続くこと、極端な円安に歯止めがかからないこと、国民の生活が苦しくなっていること等が、今の政治が続く限り当然であることが良く理解できました。
日本政府は、年間GDPの2倍以上という他国と比較しても極端に巨額の国債を抱えています。著者によれば、単に発行残高が多いことが問題なのではなく、それを中央銀行が買い支え、日銀の保有割合が半分ほどにもなっていることが問題だということです。国内の投資家か国債を買っているのであれば、得た資金を政府がバラまいても市中に流通している通貨の量は増えません。しかし、中央銀行が保有してしまうと、国内の財やサービスの量が変わらないのに通貨の量だけ増え、通貨の価値が下落してしまいます。
このことは、もちろんインフレ、円安の根本的な原因になります。
また、日本では実質金利(名目金利からインフレ率を差し引いたもの)の大幅なマイナス状態が続いています。預貯金の利息が0.2%ほど、物価上昇率が3%ほどなので、実質金利は2.8%ほどのマイナスになります。つまり、預金しておくと、毎年2.8%ずつ価値が減っていくということです。
これも、日銀が政策金利を低く抑えつつ、低い金利で国債を大量購入しているためのようです。個人も企業も、トータルでは借金より預金の方が多く、借金が多いのは政府だけです。国民から削り取って政府の負担だけが減っている形です。
「高市首相が日銀の植田総裁と2月16日に会談した際、追加利上げに難色を示していたことが分かった」と報道されました。また、2月25日には、4月に選任される日銀の審議委員に、リフレ派(早期利上げに慎重)の2人を国会に提示したことも重なり、再び円安機運が高まっているようです。ため息が出てしまいます。
このような実態(マイナス金利)に気づいて行動(投資)を起こした人と行動を起こさなかった人とで、資産の格差が広がっていきます。
ほか、なぜ貿易収支が赤字に転落してしまったのか、経常収支はまだプラスなのになぜ円高にならないのか、実質賃金が増えないのはなぜか、労働法制・慣行の問題、外国人排除の気運の危険性など、詳しく解説されており、よく理解できました。
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