本書は、2025年10月に朝日新聞社が開催した「朝日地球会議2025」という国際フォーラムでのインタビュー、パネル討論等を記録したものです。エマニュエル・トッド、オードリー・タン、モニカ・トフト各氏らへのインタビューやパネル討論、佐橋亮、錦田愛子、望月洋嗣氏によるパネル討論等が掲載されています。
トッド氏は地球会議の中で「(米国は)そのうちベネズエラも攻撃するかも」と発言していましたが、この予言も今年(2026年)1月4日に現実化しました。本書で述べられているトッド氏の見解は、当然ながら氏の著作「西洋の敗北」等との重複が多いのですが、別の言い方での説明などで理解が深まります。
「西洋の敗北と日本の選択」(エマニュエル・トッド)を読んで 参照願います。
本書の半分以上はトッド氏関係のものですが、それ以外で私が最も興味を惹かれたのはオードリー・タン氏の話です。氏のことは、台湾のデジタル担当大臣としてIT技術を使ってコロナを抑え込んだことを報道で知っていましたが、それ以外はほとんど知りませんでした。
氏が進めている「vTaiwan」というデジタルツールは、特定の政策課題について立場の異なる多くの人がソーシャルメディアを使って議論を重ね、迅速に政策を「共創」するシステムのようです。そこには誰でもアクセスし、自分の意見を表明できます。他人の意見に賛同や反対もできますが、返信や再投稿のボタンはないので、荒らし行為はできないとのことです。代わりに、自身のアバターが同調者へ近づく様子や、異なる意見の間に橋を架ける様子を見ることができます。意見の対立する者同士の間で広範な合意を得る提案をすると、「橋渡しボーナス」を獲得できるとのことです。AIがファシリテーターの働きをし、どこまでなら合意できるのか探るようです。
日本でも、安野貴博氏が東京都知事選に立候補した際に同じようなシステムを披露し、今は東京都等でも試行が進められていることが紹介されています。この「デジタル民主主義」が進展すると、議会や政党のあり方も変化せざるを得ないでしょう。「22世紀の民主主義」という本に、「政治家はネコになる」という言葉がありましたが、そんな時代が近づいているようです。
「22世紀の民主主義」(成田悠輔)を読んで 参照願います。
私は、安野氏の「チームみらい」について、最近生まれた有象無象の新政党の一つと思って関心がなかったのですが、ちょっと違ったようです。「デジタル民主主義2030」というサイトで彼らの取組を見ることができるので、注目したいと思います。
ほか、日本の核兵器保有の議論や、大国が自身の「勢力圏」を露骨に主張し始めた中での中堅国である日本のあり方等の話も興味深いものでした。
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