財政制度等審議会の増田寛也分科会長代理が、「医学部の定員削減は、社会全体における希少な人材の最適配分の観点から喫緊の課題である」と発言されたことが報じられています。大学の医学部定員を削減する議論に伴う発言です。
医学部定員削減
日本の大学医学部の定員は2013年から9000人台を推移しており、このままの定員では、人口10万人あたり医師の数は2022年の274人から2040年には350人近くまで増加するとのことです。財務省は人口減少や医療提供の効率化で医師の需要が減るため、2029年から2032年までの間に需給が均衡し、その後、過剰となることが確定的だと分析しています。医学部定員削減はやむを得ないことであり、私も賛成ですが、「人材の最適配分」のためには他の二つの要素が必要だと思います。
そのうち一つは、医師の地域的偏在を解消することです。それについては、既に医師過剰地域での開院規制等が議論されているようなので、ここではこれ以上触れません。
医師の高収入見直し
もう一つは、医師の収入が他の職業と比較して極めて高いので、偏差値の高い若者の人気が医学部に集中している状況を是正しなければならないことです。エマニュエル・トッド氏によれば、米国、特に製造業の衰退は、簡単にカネを稼ぐことができる金融業や弁護士に優秀な若者が集中し、優秀なエンジニアが不足したためとのことです。
社会全体には何の財やサービスも生み出さない詐欺的な金融商品を扱うだけとトッド氏が評している米国の金融業等とは異なり、医師の仕事は崇高なものであることはもちろんです。また、偏差値の高い人が本当に優秀な人材であるとは限らないことも承知しています。しかし、私の高校時代の同級生等を眺めても、国立医学部に進学した連中は頭の回転が速く、さほどガリ勉しなくても成績優秀な人が多かったと思います。
また、私が県立病院に勤務していた時に一緒に勤務していた医師の多くは、長時間の診療に献身的に従事したうえ、臨床研究までやっておられました。彼らが高収入であることは当然です。しかし、のんびりと仕事しながら高収入を得ている医師も見ています。
優秀な若者が医学部に集中し続けると、優秀なエンジニアが不足するとともに、将来、ノーベル化学、物理学賞等の日本人受賞者がいなくなってしまうのではないかと不安になります。
医学部定員を削減しても、優秀な人材が医学部に集中する状況は変わりません。「人材の最適配分」のためには、医師の収入の見直しも必要です。
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