著者お二人はともに元外務キャリア官僚です。兼原氏は元内閣官房副長官補、国家安全保障局次長として安倍官邸で外交を支え、垂氏は長年中国関係一筋に携わってこられた前駐中国大使で、本書はその対談です。

 日中は、近現代において日中戦争の他に多くの関りがありますが、現在の中国共産党政権はそれらの多くを隠し、自らに都合のいい部分だけを誇張したり、虚偽の歴史を捏造したりしています。そのため、特に中国国民は正しい歴史を知らず、日本人も私も含めてほとんど知らない人が多い実態です。

 本書は、中国政府が語らない(語れない)ことを中心に、日中の近現代史が俯瞰されています。

 孫文、蒋介石、康有為ら、辛亥革命(清朝を倒して中華民国を建国した民主革命)に参加した主要人物のほとんどが日本滞在経験者です。また、中国共産党の創設メンバーの約三分の一は日本留学組です。それは、日露戦争の日本の勝利(1905年)と同じタイミングで、清朝が科挙を廃止したことが主因のようです。アジアの黄色人種の国が列強の一角であるロシアを倒したことから、立身出世を目指す優秀な若者には日本が理想的なモデルに映り、「日本に学べ」の気運が高まって、エリート層がこぞって日本に留学しました。日本の社会も、彼らを物心両面で支援しました。

 辛亥革命をリードした孫文らの「中国同盟会」は、中国の革命各派が大同団結したものですが、東京の大倉喜八郎邸で頭山満らアジア主義者の支援を受けて設立されました。

 それらの事実は、現在の中国では日中戦争の歴史等に上書きされて、ほとんど知られていないようです。

 共産党軍が国民党軍と戦っているときに毛沢東が示した「721指針」については、垂氏が文藝春秋オピニオンにも紹介していました。「共産党軍の兵力の1割だけが日本軍と戦い、2割は国民党とともに戦ったふりを行い、そして残りの7割は温存して農村で根拠地を拡大せよ」というものです。支配の正当性を抗日戦争を戦ったことに求めている中国共産党としては、表に出したくない事実でしょう。

 「文藝春秋オピニオン2026の論点100」を読んで  参照願います。

 尖閣諸島が疑問の余地なく日本の領土であることも示す証拠もたくさん示されています。その他、興味深い事実をたくさん知ることができました。
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