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 多くの家庭では、電気、ガス、水道等の公共料金は、給与や生活費を管理する金融機関の口座から自動的に引き落とされる手続をしています。我が家もそうです。

 しかし、地方自治体で、そのやり方で支払っているところは極めて少数で、その理由は、次のようなことだろうと思います。

 

自治法は口座自動振替を認めているか?

 自治法第232条の4で、地方公共団体の支出は、長の命令により、会計管理者が審査したうえで行わなければならないことになっています。自動振替は、一度手続をすれば、長の命令の有無にかかわらず、会計管理者の審査がされたかどうかにかかわらず、指定金融機関の公金口座から勝手に引き落とされます。これは、自治法の許容するところではないと思われます。

 また、自治体が支払をする方法は、自治法第232条の5第2項に列挙されている方法と、第232条の6で規定している小切手の振出等に限定されています。限定列挙の中に、「公金振替」がありますが、これも自治令第165条の2で、会計管理者の通知に基づいて行うこととされており、自動振替は想定されておりません。

 結局、口座自動振替は、自治法の規定に反していると考えられることから、多くの自治体では採用していないのでしょう。我が小規模自治体でも検討しましたが、NHK受信料などは資金前渡の方法をとり、資金前渡職員の口座から自動引落しする方法としました。

 NHK受信料を長期継続契約、資金前渡の対象に指定」参照

 

自動振替を採用している自治体の財務規則(例)

第○条 電気、ガス、水道、下水道、電気通信役務及び放送受信に係る料金は、口座自動振替の方法により支払うことができる。この場合において、債権者の振替情報をもって請求書の提出に代えることができる。

 

 確かに便利だろうと思います。違法かもしれませんが、誰の権利も侵害しておらず、この違法を訴える原告適格を有する者は、私には想定されません。

 私は、やりませんが、法令が現実に追い付いていない結果とも考えられ、割り切って断行された自治体を批判する気はありません。

 

〈参照条文〉

地方自治法

 (支出の方法)

232条の4 会計管理者は、普通地方公共団体の長の政令で定めるところによる命令がなければ、支出をすることができない。

 会計管理者は、前項の命令受けた場合においても、当該支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認したうえでなければ、支出をすることができない。

232条の5 普通地方公共団体の支出は、債権者のためでなければ、これをすることができない。

 普通地方公共団体の支出は、政令の定めるところにより、資金前渡、概算払、前金払、繰替払、隔地払又は口座振替の方法によつてこれをすることができる。

(小切手の振出し及び公金振替書の交付)

232条の6 第235条の規定により金融機関を指定している普通地方公共団体における支出は、政令の定めるところにより、現金の交付に代え、当該金融機関を支払人とする小切手を振り出し、又は公金振替書を当該金融機関に交付してこれをするものとする。ただし、小切手を振り出すべき場合において、債権者から申出があるときは、会計管理者は、自ら現金で小口の支払をし、又は当該金融機関をして現金で支払をさせることができる。

2 略

 

地方自治法施行令

(口座振替の方法による支出)

165条の2 地方自治法第235条の規定により金融機関を指定している普通地方公共団体において、指定金融機関、指定代理金融機関その他普通地方公共団体の長が定める金融機関に預金口座を設けている債権者から申出があつたときは、会計管理者は、指定金融機関又は指定代理金融機関に通知して、口座振替の方法により支出をすることができる。


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