ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 社会人の基礎知識 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

カテゴリ: 社会人の基礎知識

 私のこのブログで、年末が近づくと急に閲覧数が増えるページがあります。年次有給休暇を繰り越す際の1日未満の端数の扱いに関する過去の記事です。

 「年次有給休暇を繰り越す際の1日未満の端数」

 「地方公務員と労働法制」 参照願います。

 

 年次有給休暇を繰り越す際に1日未満の端数を切り捨てる運用をしている地方自治体が、まだかなり存在するようです。1日未満の端数は、そのまま繰り越すか、切り上げて繰り越さなければ「違法の疑いがある」とされています。しかし、この表現は、人事院や総務省に遠慮した表現であり、民間や地方公務員の場合は明確に違法でしょう。

 私が県庁に在職中は、その県庁をはじめ、切り捨てが主流でした。その後、人事委員会や公平委員会で措置命令等が出されたり、民間での議論が進んだりした影響等で、是正する自治体も増えていると思います。しかし、まだぼやっと放置している自治体も多いようです。過去に容認した経緯もあって、総務省が助言に熱心ではないからかもしれません。

 この時期にあの記事の閲覧数が増えるということから、まだ是正していない自治体が多いことのほか、まだ年次有給休暇の付与を1月から12月の暦年を基準としている自治体が多いことが分かります。年次有給休暇の付与を1月1日にしても4月1日にしても違法という問題は生じません。しかし、新採用を4月1日、定年退職を3月31日、定期異動も4月1日が多数という実態の下では、年次有給休暇を管理する期間も4月初日から3月末日とする方が合理的です。

 「年次有給休暇の基準日を合理的に1」

 「年次有給休暇の基準日を合理的に2」

 「年次有給休暇の基準日を合理的に3」  参照願います。

 こちらのほうも、早めに見直すべきでしょう。
 

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 県を定年退職後3つ目の職場、民間中小企業でパート勤務をしています。先日、その会社の上司から、カスタマーハラスメントについての対応策の策定を依頼されました。

 そこで、まず、カスタマーハラスメント対策についての世間の状況を調べました。

カスタマーハラスメント対策に関する社会の状況

 厚生労働省が「ハラスメント防止規程」(企業の社内規程用のモデル)を公表していますが、これにはカスハラ関係の言及はなく、別に令和4年に詳細な「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を定めて周知しています。

 企業では、NTTドコモグループ、ANAグループなどが、カスハラに対する基本方針を定めて対外的に公表していますが、そのような企業はまだ多くはないようです。

 古巣の県庁の人事当局に問い合わせたところ、県(知事部局)では、ハラスメント全般に関する指針は平成25年に定めているものの、カスハラについては現時点では記載がないとのことでした。現在、人事院が国家公務員に対するカスハラへの対応について検討中であり、そこで何らかの結論が出されれば、県の現行指針に盛り込む等の対応を検討するということです。

 そこで、今年(2024年)の人事院勧告・報告を見たところ、「3 Well-beingの実現に向けた環境整備」という項目の中に「今後、幹部・管理職員等を対象とした研修等を通じて、カスタマー・ハラスメントもハラスメントの一つであり、各府省には職員を守る責務があることや過度な要求に対しては毅然とした対応も求められること等について認識を広げていく。また、各府省や民間における取組に関する情報を収集しつつ、職員保護の観点から組織として講ずべき措置の整理等更なる対応について研究し提供するなどして、各府省を支援していく。」と記載されていました。来年の勧告・報告あたりに、何らかの対応が打ち出されるだろうと思います。

我が社の対応策

 人事院が示すものと、それに対する県庁の反応を見てから我が社の対応を決めようかとも思いましたが、その前に動くことにしました。実際のカスハラの場面で、相手に「当社では〇〇指針に基づいて対応させていただきます。」と言えたほうが対応しやすいので、少しでも早く何か定めようと思ったからです。

 厚労省の「企業マニュアル」はかなり詳細、網羅的なので、これと別に我が社独自のものを定めることは無駄だと思いました。そこで、ANAグループのものなどを参考に、どういう行為をカスハラと認定するかという定義と、カスハラに対しては組織として毅然と対応することを宣言し、お客様に理解をお願いする「基本方針」(A4で2枚程度)を定めてホームページで示すことにしました。その「基本方針」の中で、厚労省の「企業マニュアル」に沿って対応することを書き込みました。

 我が社の対応が、少しでもカスハラ対策を検討されている皆さまの参考になれば幸いです。

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 県を定年退職して9年目、現在は退職後3つ目の勤務先、民間中小企業でパートタイムで働いています。定年後しばらく、別の小規模な地方公共団体で働いていた時はもちろんですが、民間企業の今も、法制執務の知識が意外に役に立ち、同僚からも重宝されています。

 県の職員でも、県の条例や規則の制定、改正に従事する機会はあまり多くないと思います。税条例や給与条例の担当であれば毎年1、2回は改正があったでしょうが、普通はあまり縁のない仕事です。私も県条例や規則の改正等を担当したのは数えるほどです。しかし、市町村課とか地方課などに在籍していると、市町村向けのモデル条例、規則(昔は「条例準則」といいました。)の制定・改正に従事する機会は頻繁にありました。特に、1999年に地方分権一括法が成立し、機関委任事務の廃止の関係などで2000年3月末までに膨大な数の市町村条例、規則の改正を支援したときは、大変な作業でした。

法制執務のノウハウはわりとレア

 今、私は、民間企業の社内規程の改正等も担当していますが、法務部を持っている大企業は別として、規則改正のノウハウを持つ社員などいません外部にも適当な専門家はいません

 例えば、制度改正に伴って就業規則を改正しようとする際、社会保険労務士は改正すべき内容は熟知しているでしょうが、規則の文案を作成することは一般に不得手です。社労士試験にそんな科目はなく、そんな訓練を受けていないのだから、当然です。

 弁護士や司法書士も同じようなものです。こちらで規則案を作って審査をお願いすればやってくれるかもしれませんが、案の作成まではなかなか依頼できません。

 法制執務のノウハウは、契約書を作成する際にも役立ちます。

 もちろん、民間企業ですから法制執務のルールをすべて適用させる必要はありません。例えば、漢字の送り仮名も法令文のルールは一般社会の原則と異なるものがあり、そんなものは役所ルールを押し付けるべきではありません。ただ、それら以外の点は、法制執務のルールに従ったほうが意味が明確になる場合が多いと感じています。

 地味で退屈だと思っていた法制執務の仕事ですが、経験しておいて良かった!

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 2024年3月から「戸籍の広域交付制度」が始まりました。私はこの制度の開始のニュースを見逃していたようで、知らなかったのですが、市役所の窓口で教えていただき、早速恩恵にあずかりました。

 この制度は、最寄りの市区町村役場で、他の市区町村の戸籍謄本であっても、一括して取得することができるものです。この「一括して」というのが、特に相続手続の際、とても便利です。

 例えば、親が亡くなると、相続手続のため、故人が生まれてから死亡までの連続した戸籍の謄抄本が必要になります。手続をしようとする相続人の住所と同じ市町村に本籍がずっとあればいいのですが、結婚などのタイミングで本籍が別の市町村に移ったりしていると、前の市町村からも取り寄せる必要があります。通常、生まれてから死亡するまで3、4回は戸籍が変わります。様式変更があって「改製」されたりもしています。それを順次遡りながら郵送で請求するのは大変な手間でした。

 それが、「広域交付制度」により本籍地が遠方であっても、自身の住所地など最寄りの市区町村役場で必要な戸籍謄本をすべて取得でき、かなり負担が軽減されることになりました。また、亡くなった人が出生時から本籍地を何度も変更している場合、最後の本籍地にまず死亡時の戸籍謄本を請求して、取り寄せた戸籍謄本からその本籍地の前はどこに本籍地を置いていたかを確認して、その本籍地が遠方であれば、さらに郵送でその管轄の役所に請求し、出生時の戸籍謄本を取得できるまで同じ作業を繰り返さなければなりませんでした。

 郵送で請求する場合、手数料は定額小為替などを同封する必要がありますが、そもそも戸籍が何回変わっているのか分からず、何通分の料金を同封すればいいのか不明なので、かなり多めに入れることもありました。

コンビニ交付より便利だ

 マイナンバーカードを使ってコンビニで遠隔地の戸籍を取り寄せることは従来から可能でした。しかし、その手続は、戸籍筆頭者等を特定しなければいけません。したがって、一括して請求することはできず、一つずつ遡って請求しなければなりません。

 この広域交付制度のほうが、ずっと便利です。

 この制度には、いろいろ制約があり、親や祖父母の戸籍は請求できますが、兄弟の分はダメとのことです。また、代理請求もできません。それでも大部分の相続はこの制度で対応可能と思われます。法務省の戸籍情報連携システムを利用した仕組とのことですが、電子政府の目に見える成果だと思います。

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 年次有給休暇の付与日、基準日は、一般には公務員も民間企業も4月1日にすることが合理的です。私が勤務している会社では、就業規則を改正して、従来は1月1日としていた基準日を4月1日に移行しましたが、その経験を綴っています。

 「年次有給休暇の基準日を合理的に 1」

 「年次有給休暇の基準日を合理的に 2」 参照願います。

 

義務5日分の扱い

 我が社では、2024年1月1日に社員に年休を付与し、その後2月に就業規則を改正して基準日を4月1日にしたので、4月1日にも付与します。これは、2025年1月に付与するはずだった分の前倒しです。10日以上の年休を付与された社員には付与日から1年以内に最低5日の年休を取得させなければなりませんが、2024年1月から1年間と同年4月から1年間の二つの期間が重なってしまいます。

 このような場合、義務5日分の扱いは2通りの手法があります。

 一つは、2024年1月から2025年3月末までの15か月間に7日(5日×15月/12月、切り上げ)の取得を義務付けるやり方です。もう一つは、2024年1月からの1年間と同年4月からの1年間のいずれも5日以上の年休取得を義務付ける手法です。この場合、2024年4月から12月の間に5日取得すれば、それだけで両方クリアできます。

 どちらの手法も認められますが、前者で実施する団体が多いようです。我が社もそちらを選び、前回のブログ「・・・合理的に 2」で紹介した改正附則の条項の次の項に「第〇条第〇項の規程により時季を指定して社員に取得させる年次有給休暇の日数は、令和6年1月1日から令和7年3月31日までの15か月間に限り7日とする。」と定めました。

 

違法な移行措置をする自治体もある

 当社で基準日を移行するに際し、ネット等で先行事例を調査しました。

 基準日を4月1日に移動した自治体の中には、3か月分を按分して付与したり、前の基準日から15か月後を次の基準日にしたりするケースもあるようでした。これらは、民間企業がやれば違法なので、地方自治体がやっても違法でしょう。

 条例で定めれば違法ではないというのは誤りです。労働基準法は国家公務員は除外されていますが、地方公務員には一部の条項を除いて原則として適用され、条例も法律に従って制定しなければなりません。ただ、現業以外の地方公務員は労働基準監督署が監督せず、人事委員会や首長が監督することになっているため見過ごされているだけです。

 「地方公務員と労働法制」 参照願います。

 

 合理的な制度に移行するのも、適法に実施しなければなりません。

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