ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 読書、テレビ等 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

カテゴリ: 読書、テレビ等

 昨年の夏からコメが不足して高騰したり、野菜やタマゴの高値も続いていますが、それでもスーパーには食料品が豊富に並び、日本ではほとんどの人は飢える心配などせずに暮らしています。しかし、世界に目を向けると、飢えで苦しむ人が大勢おり、日本も今の暮らしを続けることができるのか不安になります。

 本書の副題は「食料安全保障から考える社会のしくみ」で、表紙にはさらに「戦争、原油高騰、温暖化、大不況etc.本当は何が飢餓をもたらすのか」という問いかけがあります。読んでみて、食料問題を考えるうえで必読の入門書であると感じました。

 著者は、京都大学博士(農学)、農業研究者です。しかし、このテーマを語るには、エネルギー、社会、経済の問題を避けて通れません。今の日本の農業は、海外から輸入した化石燃料や化学肥料を使うことを前提としています。1キロカロリーのコメを作るため2.6キロカロリーの化石燃料を使っていて、エネルギー収支はマイナス179%とのことです。トラクターをほとんど使わず、化学肥料もわずかしか使わなかった1955年ころは、投入エネルギー(労働など)の1.1倍ほどの収穫が得られ、エネルギー収支はプラスでした。

 本書は5章で構成されています。第1章は「日本は何人養える?」で、28の一問一答になっています。そこで結論的には、海外から化石燃料を輸入できるという前提であれば8千万人か9千万人、海外からエネルギーも食料、肥料等も輸入できなければ3千万人(鎖国していた江戸時代の人口)という検討結果になっています。

 1998年に農林水産省が、水田は全て作付けし、畑にはジャガイモやサツマイモなどの高カロリー野菜を植え、考えられる限りの対策をとったと仮定したシミュレーションでは、8千万人という結果だったとのことです。ただ、この試算は、石油等の輸入は現状のままという前提です。

 第2章は「飢餓はなぜ起きる?」というテーマで、飢饉のときに都市住民より農民の餓死者が多い理由、農業国に貧しい国が多く飢える人も多い理由等が示されます。第3章は「大規模農業はすべてを解決するのか?」というテーマで、大規模化した場合の問題点等が示され、それぞれも問題が検討されています。

 ウラン燃料も限界が見えているので原子力発電も一時しのぎにしかならず万一の事故の際の「取り返しのつかなさ度」(著者の造語)を考えれば頼れるようなものではありません。太陽光発電などもまだ問題を解決できる技術水準ではないようです。
 このようなことを長期的視野で検討し、政策を考えるような政治家が存在してくれればいいのですが・・・。
 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。

 
サイト案内(目次)

 NHK朝ドラ「虎に翼」で、ヒロインの再婚相手の星航一が戦前に「総力戦研究所」に所属し、その組織が優秀な若者を集め、模擬内閣を発足させて日米が戦争になった場合の結果を予想させたというエピソードがありました。ここでメンバーば、何度もシミュレーションを繰り返し、日本が必ず敗けるという結論を出して政府に報告しました。

 「人は自分の信じたいことだけ信じる」 参照願います。

 ネット情報でこのエピソードが史実であることを知り、調べたところ、本書に詳しく紹介されているようなので、読んでみることにしました。

 私が読んだのは、小学館が発行している「日本の近代 猪瀬直樹著作集8 日本人はなぜ戦争をしたか」、副題が「昭和16年夏の敗戦」です。これと別に、中公文庫で「昭和16年夏の敗戦 新版」(猪瀬直樹)が刊行されており、この巻末には石破茂氏との対談が載っているとのことですが、市立・県立図書館、ブックオフにも在庫がなく、残念ながら入手できませんでした。本文の内容は、本書と同じでしょう。

 「虎に翼」の星航一のモデルは、東京地裁の判事だったところを駆り集められた、三淵乾太郎で、彼は模擬内閣で司法大臣兼内閣法制局長官を務めています。これと同様、陸軍から駆り出されたメンバーは陸軍大臣、海軍から駆り出されたメンバーは海軍大臣といった具合に、出身母体、専門性に応じて、模擬内閣の閣僚らが割り当てられています。各メンバーは、それぞれの省庁等からデータをもらって持ち寄り、ち密に戦争の帰趨をシミュレートしました。その予測は驚くほど正確で、真珠湾攻撃と原爆投下だけは予測できなかったものの、南方(インドネシア等)からの石油や鉄鉱石の輸送は船が沈められてダメになり物資不足になることや、戦争末期にはソ連が参戦することまで予測しています。戦争は、ほぼその予測どおりに進み、敗戦に至ります。

 本書は、研究所の研究生やスタッフの日記、研究生が提出したレポート、証言のほか、「木戸幸一日記」、極東軍事裁判の記録などを集約して、この研究所や模擬内閣による机上演習、議論に迫っています。

 この研究所のこと以外にも、いろいろ知ることができました。東条英機は、陸軍大臣のころは主戦論者の中心でしたが、天皇陛下に対する忠誠心は人一倍厚い人でした。昭和天皇は、戦争を是非避けたいと考えていて、主戦論者の中心である東条を内閣総理大臣にし、主戦論を抑えて戦争を回避するよう命じました。東条も懸命に陛下の指示を達成しようとしましたが、回り始めた歯車は戻せなかったようです。私は、東条を誤解していました。

 巻末の資料も含め、読みごたえがありました。

 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。

 
サイト案内(目次)

 終活の一環として、老後を楽しく生きるためのノウハウを探るため、この種の本を多読しています。つい先日この著者の本を読み、おもしろく、参考になったので、本書も読んでみました。私の妻は私より5歳若いので、私は「ひとり老後」の可能性は少ないのですが、「ひとり老後」で有効なノウハウは私にも有効だろうと思います。

 『「がんばらない老後」のすすめ』(保坂隆)を読んで  参照願います。

 本書の第3章は「ケチケチせずに賢く倹約する」です。ここでは、まず、贅沢な消費文化にどっぷり浸かった愚かな生活を戒めています。次に、定年後も住宅ローンを払い続けるような計画は老後破産一直線だとしています。

 また、生活費の「レコーディング・ダイエット」が推奨されています。レコーディング・ダイエットとは、食べたものと体重を毎日記録するというダイエット法です。あれを食べたから体重が○キロ増えたという原因と結果が明確になるので、自然に食生活が改善されるというものです。これを生活費のやりくりに応用し、家計簿をつける「監視と記録」により、無駄な出費に気づくことができるというわけです。

 さらに、生活費をうまくやりくりするためには、週単位の家計簿がお勧めとのことです。月単位より週単位のほうが変動幅が狭くなり、無駄に気づきやすいとのこと。月単位で請求が来る光熱水費等を除けば、たしかに週単位のほうがいいかもしれません。お金を貯める時だけでなく、使うのを倹約する時も、目標を刻んだ方が気持ちの負担を減らせるそうです。

 第4章「健康的な生活がいちばんの節約になる」では、体を動かすことや、毎日決まったタイミングで体重と血圧を測り、記録(グラフ)することが推奨されています。体重変化が一目瞭然になるので、自然に対策を講ずるようになり、「測るだけダイエット」という言葉まであるようです。

 病気をしても「一病息災」と考えることや、病気や不安に慣れることも推奨されています。過度に不安にならず、楽観的に生きるのが賢い生き方です。

 69歳の私はまだ勤めていますが、本書を読んで、本格的な隠居生活、年金だけの生活が楽しみになってきました。
 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。

 サイト案内(目次)

 本書は、2024年5月にパリ経済学校で行われた両著者の対談の記録です。サンデル氏は、正義に関する数々の著書で著名なハーバード大学の政治哲学者です。ピケティ氏は、大ベストセラー「21世紀の資本」の著者です。私は、両著者の著書それぞれに感銘を受け、影響を受けています。

 「これからの「正義」の話をしよう」(マイケル・サンデル)を読んで

 「実力も運のうち」(マイケル・サンデル)を読んで

 「資産所得倍増には賛成だが」  参照願います。

 ピケティ氏によれば、人類はフランス革命等の以降、政治闘争や社会運動のおかげで政治的にも経済的にも平等の方向に向かっていました。しかし、1980年頃から新自由主義が横行するようになり、不平等が拡大しつつあるようです。ピケティ氏は、新たな社会運動等によって平等化の方向に向かわせることは十分に可能と考えておられます。

 レーガンなどによって始まった新自由主義の大きな要素であるグローバリゼーション、能力主義等は、我々の社会に分断をもたらしました。市場に任せればうまくいくという考えが事実に反していることは、米国の医療の惨憺たる状況を見れば一目瞭然です。米国が何を言おうと、日本の国民皆保険の方が優れた体制であることは明白で、民間保険に代替させるようなことをしてはなりません。

 不平等を是正ために、所得の低い人にも高等教育の機会、成功のチャンスを与えるという手法は誤りで、介護とか配管工とかの社会に必須の仕事をしている労働者の待遇を上げなければならないという点で、両著者の意見は一致しているようです。学歴重視、能力重視には、低学歴者、敗者に対する侮辱を含んでおり、いわゆる中道のエリート政治家たちのこのような言動が、社会の分断を招き、米国ではトランプ大統領の誕生、フランスではル・ペン氏の躍進をもたらしたという分析です。ヘッジファンドマネージャーが、教師や看護師の5千倍も稼いでいるという米国の現実は、不公平どころか労働者に対する侮辱であるとしています。これでは、社会が分断されるのも当然です。
 本書には、不平等を是正していくための具体的な提案(グローバル税制など)もいくつも盛り込まれています。日本の政治家の皆さんも、大学無償化(一見平等な機会を与えることは敗者に対する侮辱を含みがち)などを議論する暇があったら、一般の労働者の生活の向上を図るため、本書などで勉強され、不平等の解消に努めていただくことを期待しています。

 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。

 
サイト案内(目次)

 私は、ほとんどの日本人と同じく、ロシアの武力侵略の問題ではウクライナを応援しています。本書の副題は「日本と世界に何が起きるのか」ですが、これはウクライナの敗北を前提にしています。したがって、実は読んでいて憂鬱になってしまいます。

 著者はフランスの人口学者、家族人類学者で、自殺率や乳幼児死亡率の動き等の人口データや家族形態等を分析し、ソ連の崩壊、米国発の金融恐慌の発生など、数々の「予言」を的中させてきました。彼の分析は非常に説得力があり、私もこれまでに彼の著書を何冊か読み、ファンになっています。

 「グローバリズム以後」を読んで

 「第三次世界大戦はもう始まっている」を読んで

 「老人支配国家日本の危機」を読んで  参照願います。

 ウクライナの敗北は、米国や西欧などの「西洋」が、ロシアなどの「その他の世界」に敗北していくことの象徴です。「その他の世界」が西洋に背を向けるのは、「その他の世界」の低賃金労働者を搾取しながらブルジョアとしてふるまう西洋への反発、自分たちの価値観を押し付けようとする傲慢さに嫌気がさしていること等からです。

 本書は、2023年の夏ころ未来予測の形で執筆されましたが、2025年の春時点で見ると、既にかなり実現してしまっている感があります。

米国や西洋の衰退

 米国は先進国で唯一、平均寿命が低下している国です。2014年に78.7歳だったのが、2020年には77.3歳に、2021年には76.3歳になっています。黒人の死亡率は減少を続けており、白人男性の自殺、アルコール中毒等による死亡が平均寿命を引き下げています。

 ユニセフの統計によると、2020年ころの乳幼児死亡は、新生児千人当たり、米国は5.4人、ロシアは4.4人、英仏独は3人台、日本は1.8人とのことです。米国は衰退しており、その米国が主導している西側も衰退を免れません。

 米国や西洋の発展、繁栄の原動力であった勤勉、教育の重視などのプロテスタント的な美徳は、影をひそめてしまいました。米国の有名大学、特に理工系学部に占める外国人学生が増えました。製造業を支えるエンジニアの数は、米国は、人口が圧倒的に少ないロシアより少ないとのことです。これでは、製造業が衰退してしまうことも当然です。

 こんな状態に至ってしまえば、いかにトランプが保護主義的な施策を打ち出しても、エンジニアがいなければ製造業が復活できるはずがありません。物価上昇、物資の不足などで混乱を招くだけでしょう。
 日本は幸いにまだ米国ほど絶望的な状態ではありません。しかし、大学の理工系の不人気など、米国社会に近づきつつあります。西洋の失敗に学び、地に足の着いた産業政策を行っていかなければなりません。

 にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村 ご覧いただきありがとうございます。

 
サイト案内(目次)

↑このページのトップヘ