ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 債務負担行為 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

タグ:債務負担行為

 債務負担行為と長期継続契約は、いずれも、複数年にわたる契約や、新年度開始早々に役務の提供を受ける必要がある契約などに使われる制度ですが、手続や効果に違いがあり、うまく使い分ける必要があります。

 

債務負担行為と長期継続契約の違い

 債務負担行為は、あらかじめ契約等をする年度の予算の中で議決しておく必要があります。それほど手間のかかる書類ではありませんが、議会にかけるという面倒くささがあり、議会担当部局が嫌がることもあるかもしれません。

 長期継続契約は、一度条例(条例の委任を受けた規則も可)で契約の種類を指定しておけば、契約の都度議会に諮る必要はなく、便利です。しかし、自治法第234条の3で、「各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない」とされているので、契約書に「予算が否決、減額された場合には契約の取消し又は見直しをする」旨の条項を盛り込むことが一般的です。相手方が、こんな勝手な条件を嫌がるかもしれません。

 相手方がどうしても嫌がれば、債務負担行為を設定してそのような条項を設けずに契約を締結しなければなりません。

参 考

自治法第214条(債務負担行為) 歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。

自治法第234条の3(長期継続契約) 普通地方公共団体は、第214条の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。

 

様々な工夫

 庁舎の清掃等の維持管理は、ほとんどの自治体が外部に委託しています。新年度の4月から翌年の3月末までの1年間を委託期間とする場合、新規に落札した業者が履行の準備を整える時間等を考慮すると、2月中には入札を済ませるべきでしょう。3月の中旬以降に入札したのでは、現行の業者ばかりが有利な不適正な入札にならざるを得ません。

その場合、入札条件の中に「必要な予算が議決されなかった場合は契約しない」「契約締結は3月〇日(翌年度当初予算の議決予定日以降の日)から3月末日までに行う」旨を加えておきます。そうすれば、契約の時点では翌年度予算は議決されているので、契約書自体には「予算が否決、減額された場合には契約の取消し又は見直しをする」旨の条項など必ずしも盛り込む必要はないはずです。
 翌々年度までの支出を伴う契約はこの手法は使えませんが、41日から翌331日までを役務提供期間とする一般的な契約は、大丈夫です。そのような工夫をしている自治体もあります。

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 また41日が近づいてきました。今年(平成30年)の41日は日曜日で、普通の役所は閉庁で契約の締結などできないはずですが、全国の地方公共団体で大量の41日付けの契約書が作成されると思います。

 

 私の属する小規模自治体では、かねてから日付を偽った契約について問題意識を持ってきましたが、ようやく41日付け契約を一掃する準備を完了しました。厳密に言うと、契約書を作成しなければならないような契約については、41日には締結しないということです。今年は日曜日なので、ないと思いますが、平日の場合、少額の事務用品を発注することなど(契約書の作成を省略できる範囲の契約締結)はあり得ます。契約書を作成しなければならないような契約は、4月1日にはしないということです。

 41日の奇跡 虚偽公文書作成、大量発生の予感」参照

 

日付を偽った契約一掃の手法

 41日から役務の提供を受けることが必要な、庁舎管理、警備、機器やソフトの賃借、維持管理などの契約、NHKの受信契約は、すべて条例等で長期継続契約に指定し、前年度中に契約できるようにしました。これにより、新年度分は前年度の2月には入札手続を始めており、翌年度予算が議決される日以後、前年度中に契約締結をすることとしています。

 また、職員研修などは、その年度に入ってから委託したのでは、講師の確保ができません。これまでは、ヤミ、口頭で発注しておいて4月の初旬に正式に契約していたのですが、債務負担行為を設定し、前年度のうちに正式に発注、契約するようにしました。

 

このようにした理由

 過去の記事でも、再三問題にしていたように、民間では問題にならない契約書の日付遡りは、公務員にとっては犯罪行為です。業者との癒着の元にもなり、4月初めに業務が集中する元凶にもなります。

 せっかく長期継続契約、債務負担行為という、簡単に前年度中に契約締結ができる手段があるのですから、使わない手はありません。

 私の古巣の県庁では、いまだに犯罪行為(契約日付の遡り、長期継続契約等の手続によらずに入札等を前年度中に実施など)を続けています。県庁でも正そうと思ったのですが間に合わず、改善できませんでしたが、再就職した現在の小規模自治体で、適切な会計制度を構築できました。そのことを喜び、かつ、誇りに感じています。

 

 「長期継続契約をもっと有効に活用せよ!」ほか、「長期継続契約」カテゴリの各記事を参照願います。


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 NHK受信料について、
以前在職していた県庁も同様だったのですが、私が現在所属している小規模自治体でも、根拠なく年度をまたいで契約している実態でした。また、口座自動振替にすれば受信料が多少安くなるので、その2点が気になっていました。このたび(平成2912月)、長の御理解をいただき、適正化できたので、御報告させていただきます。

 

長期継続契約の対象に指定

 NHK受信契約は、4月から1年ごとの契約にしたとしても、その更新の合意は3月末までにされているはずであり、年度をまたがざるを得ません。しかし、自治法第234条の3でも自治令第167条の17でも、NHK受信料は対象とされておらず、自治体が条例で長期継続契約に指定するか、債務負担行為を設定しなければ、年度をまたいで契約できません。

 当自治体の「長期継続契約が締結できる契約を定める条例」では、施設等の維持管理や機器等の賃貸借に加え、「その他長が特に必要と認める契約」という包括的な号が設けられており、これに基づいて「日本放送協会との放送受信契約」を指定しました。

 私がかつて属していた県庁など、他の自治体では財務規則で追加できるような条例になっている場合が多いので、その場合は財務規則を改正すればいいわけです。
 なお、自治法に精通しておられる方は、長期継続契約は各年度の予算の範囲内で役務の提供を受けなければならないことを危惧されるかもしれません。しかし、このような運営費は、暫定予算でも認められるべきもので、所要の予算が議決されないというのはありえない事態だと思います。また、万一の場合は、テレビを除却(受信料のかからない状態に)する覚悟です。

                          

資金前渡の対象に指定

 多くの自治体では、電気、ガス、水道などの公共料金は、資金前渡として資金前渡職員の口座に振り込み、その口座から自動引き落としとしています。しかし、自治令第161条第1項の各号を見ても、NHK受信料は該当せず、他の公共料金と同じ扱いにしようとすれば、第17号に基づいて、自治体の規則(財務規則等)で指定しなければなりません。

 先日、財務規則の改正手続を終え、NHK受信料を資金前渡の対象に加えました。


この制度改正をした理由

 この規則等の整備によって安くなる受信料は、年間わずか550円です。しかし、一度やっておけばずっと有効であること、年度をまたぐ契約を適正化すべきことから、実施しました。もっと大胆に、公金口座から直接自動引き落としを容認している自治体があることも承知していますが、違法っぽいので、次善の手法にしました。(このことについては、いずれ別稿で)
 「地方自治体の口座自動振替の可否」参照

 地方自治法もNHKも総務省の所管です。長期継続契約にしろ資金前渡にしろ、法律、政令でNHK受信料を初めから対象にしなかったことは、立法ミスのような気がしますが、自治体でできる改善は、今後も続けたいと思います。

 

〈参照条文〉

地方自治法

(長期継続契約)

234条の3 普通地方公共団体は、第214条の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。

地方自治法施行令

(資金前渡)

161 次に掲げる経費については、当該普通地方公共団体の職員をして現金支払をさせるため、その資金を当該職員に前渡することができる。

1~(8)、(10)~(12)、(15)(16) 略

(9) 官公署に対して支払う経費

(13) 電気、ガス又は水の供給を受ける契約に基づき支払をする経費

(14) 電気通信役務の提供を受ける契約に基づき支払をする経費

(17) 前各号に掲げるもののほか、経費の性質上現金支払をさせなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で普通地方公共団体の規則で定めるもの

(長期継続契約を締結することができる契約)

167条の17 地方自治法第234条の3に規定する政令で定める契約は、翌年度以降にわたり物品を借り入れ又は役務の提供を受ける契約で、その契約の性質上翌年度以降にわたり契約を締結しなければ当該契約に係る事務の取扱いに支障を及ぼすようなもののうち、条例で定めるものとする。



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 法令を解釈する場合、その法令が合理的に正しく制定されているという前提で解釈する必要があります。

 毎年41日から必要なサービスについての契約であれば、3月末までに締結する必要があります。それができないような制度をわざわざ創設したと考えることはできません。

 立法者の意思は明確です。

 

自治法第214条(債務負担行為) 歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。

自治法第234条の3(長期継続契約) 普通地方公共団体は、第214条の規定にかかわらず、     翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。

 

事業年度開始前の契約を否定するような文言はない

 自治法第234条の3では、この制度は、債務負担行為の例外として定められています。つまり、債務負担行為の手続をせずに、翌年度以降にわたり役務の提供を受ける契約を締結できるということです。契約時点からみて、翌々年度に役務の提供を受けて債務を負担することと同様、翌年度に役務の提供を受けて債務を負担することももちろん認められます。当年度の歳入歳出予算に載っているかどうかなど、考慮する余地はなく、そのように読める文言もありません

 

 以上のように、制度創設時に対外的に説明した趣旨、目的が、あいまいにされていたため、運用について誤解が生じ、41日以降でなければ契約を締結できないとか、長期(複数年)の契約でなければならないなどという馬鹿げた解釈が生まれてしまったのでしょう。

地方自治法第214条(債務負担行為)

歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。

 

債務負担行為は、幅広く使われる制度です。条文のとおり、歳出予算に計上されていないけれども今後の支出が見込まれるもので、継続費にも繰越明許費にも計上されないものは、債務負担行為として定めておく必要があります。いろいろなケースが考えられるため、継続費や繰越明許費は、施行令で要件、効果や手続が定められているのに、債務負担行為は具体的な定めがありません。何も定めがないため、便利に使えるわけです。

 

一般的な債務負担行為

 数年度にまたがる事業について、「年度まで」という期間と、既に歳出予算に計上されている範囲外で支出が見込まれる金額を示して設定するのが、最も一般的な使われ方です。一般的には翌年度以降にまたがる事業に使われます。継続費のように、年度ごとの年割額を定める必要はありませんが、契約の締結は債務負担行為を設定した年度しかできません。

 

一般的な債務負担行為

 損失補償、例えば、民間の産業を支援するため、その企業が事業資金を金融機関から借り入れるときに自治体が保証するような場合も、支払が生ずる可能性があるので、債務負担行為を設定します。

 

消防団員等公務災害補償等責任共済契約

 この契約は、消防団を持つ全国の市町村等が、消防団員等の公務災害に備え、消防団員等公務災害補償等共済基金という特殊法人と締結する契約です。この基金は、総務省の関連団体です。

この契約の特徴は、一度加入すると特に更新手続もなく、毎年度掛金を支払い続けることになることです。毎年の掛金も団員の数などに応じて変動します。

普通に考えると、年度までという期限を示せないもの、債務を負担する金額を示せないものは、債務負担行為の設定は困難なように思いますが、「地方財務実務提要」(総務省監修と思われる。)によると、債務負担行為でいいとされています。

期間の欄には「年度以降毎年度」、限度額の欄には「共済掛金」と書けばいいそうです。

これは、便利です。一度議会で設定すれば、未来永劫、年度を超えた契約ができるわけです。

 

NHK受信契約への応用

 消防共済でこういう手法が認められるのですから、同じように、一度受信契約を結ぶとずっと継続されてしまうNHK受信料にも応用できることになります。そのようにしている自治体の例は、今のところ見当たりませんが、我が自治体でやってみようと思います。

追記 平成29年度の補正予算で、我が自治体でNHK受信契約を債務負担行為に設定しました。

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