先月(2023年7月)20日、定年再雇用者の給与について、最高裁小法廷が、「基本給の大幅減少は不合理」と判断した二審判決を差し戻し、審理を名古屋高等裁判所に差し戻す判決を言い渡しました。私は、ニュースを見て、最高裁がこの格差を容認したのかと少し驚きましたが、詳しく見るとそうでもないようです。
高裁の審理不足を指摘
この事件の2人の原告は、名古屋自動車学校の正社員として30年以上、教習指導員を務めていました。それぞれ2013年と2014年に60歳となった定年退職した後、嘱託職員として5年間再雇用されていました。再雇用では、定年前と業務内容は変わらなかったにも関わらず、基本給が定年前の約16万~18万円から約7万~8万円に減少し、その金額は、同社の入社後1~5年未満の正社員の基本給、約11万円を下回る金額だということです。
原告2人は、この基本給の大幅減少を「正社員との不合理な格差に当たる」と主張し、定年前の賃金との差額の支払などを求める訴訟を名古屋地方裁判所に提起しました。名古屋地裁は、定年前と同じ業務内容であったにも関わらず基本給が正社員時の6割を下回り、新人正社員をも下回る水準だった事実を重視して「不合理な待遇格差」に当たると判断し、自動車学校側に約600万円の支払いを命じました。
しかし、双方とも判決を不服として控訴し、名古屋高裁は1審の判決を支持しました。
それに対して最高裁は、「労働条件の違いの合理性は、基本給の性質や支給の目的を踏まえて検討すべき」との判断枠組みを示し、再雇用者において役職就任が想定されていないこと等を指摘し、「再雇用の嘱託社員の基本給は、正社員の基本給とは異なる性質・支給目的があるとみるべき」としました。そのうえで、2審ではこうした基本給の性質などの違いについて検討が不十分であるとして、高裁に審理のやり直しを命じて差し戻しました。
かなり面倒な認定になりそう
これまで、私も含め、再雇用の給与は定年前の給与の6割がギリギリのセーフで、それを下回ると違法になるという相場観があったように思います。地裁、高裁の判決は、その一般的な認識に従い、それに対して最高裁は、もっと詳細に審理するよう促したということでしょうか?
ただ、最高裁の注文は、とても難しい注文に感じます。雇用者自身、基本給の目的や性質など、あまり意識していないでしょう。社会一般の通念から導くのでしょうか。
個々の労働者の事情は勘案できないでしょう。再雇用とはいえ、まだ子育て中の人もおり、家族の生活を支えなければならない人もたくさんいます。また、扶養家族がいないから薄給でいいという訳にもいかないでしょう。
一般的には再雇用後は仕事が異なる
裁判になっているケースは、本件も含め、定年前後で同じ仕事に従事しているケースが目立ちます。公務員などは、定年前後で責任の度合いも仕事内容も全く異なるケースがほとんどで、比較するのも無意味です。
年齢による給与体系の違いはもちろん、定年制そのものも「年齢による差別」として違法とされる諸外国と比べ、日本社会は少し異質のようです。
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