ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 地方交付税 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

タグ:地方交付税

 6月19日、普通交付税の算定に各自治体のマイナンバーカードの普及率を反映させることを検討することが明らかになりました。総務大臣が、記者会見の際、発表したようです。「また始まった」という感じです。
 総務省は、地方の固有財源である交付税を勝手にいじって、政策誘導しようとすることがしばしばです。やりたいことがあれば国の予算でやるべきで、地方の懐に手を突っ込むべきではありません。

国が本気でやればいい
 以前は、所得税の電子申告をするには、マイナンバーカードが必要でした。私もそれでマイナンバーカードを取得しました。しかし、数年前、国税庁は、マイナンバーカードなしでも電子申告ができるID・パスワード方式を創設し、マイナンバーカード普及の足を引っ張りました。マイナンバーカードなしでも行政の電子化を進められることを示してしまいました。やっていることが、ちぐはぐです。
 本気で行政の電子化を進めるなら、すべての預貯金口座にマイナンバー登録を義務付けるべきでしょう。そうすれば、脱税やマネーロンダリングもやりにくくなり、給付金詐欺も減るでしょう。行政サービスもスピードアップできます。

過去の交付税悪用
 バブル崩壊後、国は地方に公共事業をジャブジャブやらせるため、地方債の元利償還金に対し交付税措置をし、その結果、地方財政はひどい状況になりました。
 平成11、12年ころには、住民基本台帳カードなるものを創設するために、多額の交付税措置をしましたが、惨憺たる失敗に終わりました。
 交付税、特に普通交付税は、地方公共団体の基本的な財政需要をなるべく正確に測定して交付すべきもので、こんな下らないことや飴と鞭のような使い方をすべきものではないでしょう。 

 総務省の官僚は、交付税を自分たちの予算と勘違いしているのではないでしょうか?

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 ここでは、公務員以外の社会人も知っていた方がいい地方交付税の基本的な仕組を説明します。

 地方交付税は、国が徴収した国税の一定割合を、地方の取り分として一定のルールで地方公共団体に配分するものです。配分されるのは、所得税、法人税、酒税、消費税などの一定割合(税の種類により別々の率)です。総額は、国の平成29年度予算で見ると、国の税収全体の27%ほどになっています。

 

普通交付税と特別交付税

 地方交付税は、普通交付税と特別交付税に分かれ、地方交付税法で、普通交付税は、交付税総額の94%、特別交付税は6%と定められてあります。

 普通交付税は、通常の財政需要に基づいて配分され、特別交付税は、災害などの特別な財政需要に基づいて配分されます。

 

普通交付税の算定

 普通交付税は、ある自治体が一般的な行政サービスを提供するために必要な金額基準財政需要額)から、通常見込まれる税収等の収入額基準財政収入額)を差し引いた金額が交付されます。豊かな自治体は、必要な金額より収入される金額が大きいので、差し引きした結果がマイナスになり、普通交付税は交付されません。これを不交付団体とよび、東京都などがそうです。

 基準財政収入額は、税収については実際の課税額の75%で算定することになっているため、実際の収入より低めになります。この差額が、各自治体にとっては、自由に使える部分となり、建設事業や独自施策の財源になります。

 基準財政収入額の算定には、人口、面積のほか、小・中学生の数、学校数、学級数、高齢者の数、道路の延長や面積など様々なデータを使って細かく算定されます。

 

特別交付税の算定

 特別交付税は、災害などの特別な財政需要に基づいて算定されます。具体的には、災害による死傷者の数、被災した農地の面積などが算定に使われるようです。そのほか、国体が開催された県や会場になった市町村、先進的な施策に取り組む自治体などに、大目に配分されますが、配分方法の詳細は明らかにされておらず、ブラックボックスになっています。

 

地方交付税による政策誘導

 地方交付税は、国の目指す方向に地方を誘導する手段として使われます。

 平成の大合併を進める際には、様々な「飴と鞭」がありましたが、交付税による次のような鞭もありました。

 一般に、人口が少ない団体は、標準的な団体と比較してどうしても経費が割高になります。従来は、基準再生収入額の算定に際して手厚く配慮(補正)されていたのですが、市町村合併を推進するため、その補正が縮小されました。その結果、小規模な市町村ほど交付税が減額されることになり、多くの小規模町村の背中を押しました。

 景気対策として、地方公共団体に借金をして公共事業を大量に行わせるため、借金の元利償還金の一部を基準税政需要額に算入するようなことが行われることもあり、地方全体の財政難の原因にもなりました。

 

財政力指数

 財政力指数という指標は、次の計算式で求めます。

  基準財政収入額 / 基準財政需要額(3か年平均)

 つまり、必要な財源のうち何パーセントを自前の税収などで調達しているかという指標です。数字が大きいほど裕福な団体です。

 全国市町村の平均は、0.5程度です。つまり、必要な財源の半分程度しか自前で調達できず、不足分は普通交付税で賄っているということです。山間地や離島などの町村では、0.1を下回るところもあります。

 地方交付税の動向が、地方行政に及ぼす影響は、絶大です。

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