ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 地方自治法 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

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自治法、自治令の定め

自治法第231条が定めているのは、歳入を収入するときは必ず「調定」をすることです。また、自治令第154条は、調定とは、「所属年度、歳入科目、納入すべき金額、納入義務者等を誤っていないかどうかその他法令又は契約に違反する事実がないかどうかを調査して」、収入することについて内部的に意思決定することであると定めています。つまり、収入すべき金額を正確に確認できないような時期に調定などはできないということです。また、内部的な意思決定である調定の前に、外部に納入通知をしたり、税額を通知したりもできません。

自治令第142条で一番注目すべきことは、各項各号のどこにも、調定の日をもってその歳入の属する年度を決めるとは書かれていないことです。

同条第1項第1号は、4月、5月に特別徴収する住民税はその月の属する年度の歳入にするといっています。この税額等を特別徴収義務者や納税義務書に通知するのは、前年の5月ですから、その時点で翌年度分の調定をしなければならないことになります。

同条第3項では、延滞金などはもとの歳入の属する年度と同じ年度の歳入とするといっているので、出納整理期間中に収入された歳入に係る延滞金等は、旧年度の歳入になります。しかし、この金額が確定するのはもとの歳入が納付されたときであり、調定するのは新年度の4月、5にならざるを得ません。

つまり、自治法施行令は、その歳入を所属させるべき年度の前年度以前、または翌年度に調定する場合があることを予定していることは明らかです。それを否定して「観念的な調定日」などというアホな概念を作り上げる必要はありません。

また、地方公営企業法施行令の規定ぶりの比較からは、自治法施行令の方は、調定日を問題にしていないことが分かります。

これらのことから、自治法、自治令が、調定の日で年度を区分するつもりがないことは、明らかです。

 

無難な処理

 法的に正しいのは、実際に金額の計算その他の確認をした日を調定日とすることです。しかし、総務省から妙な見解が示されているので、無難に処理しようとすれば、嘘でもなんでもその歳入を所属させるべき年度内の日付を書いておくことが無難です。

 御自分の組織内で、監査委員事務局の書記等を相手に論陣を張る覚悟がなければ、そのように処理されるのが無難だと思います。また、会計のシステムが、調定日で所属年度を判定してしまうような安直な仕様になっている場合も、そうせざるを得ないでしょう。

 

どちらの処理でもトラブルの恐れは少ない

 歳出について、支出負担行為の日や履行検査の日をいつにするかは、特に補助事業の場合などは、大きな問題です。履行確認の日をうっかり正直に41日などと書いておくと、補助金返還などのトラブルの元になります。

 しかし、調定日については、対外的に問題になることはほとんど想定されません。せいぜい、監査などで指摘されたら直せばいいだけです。

 実際に金額を決定したり、確認したりして意思決定した日ではない日を調定日として記載することは、本当は、虚偽公文書作成に該当します。しかし、罰せられる心配はないでしょう。

 

 法的に正しい日を記載するか、無難な日を記載するか、各自の判断です。


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 歳入の調定を行うべき時期について、地方自治法や同法施行令で明確な規定がないことについては、別稿で紹介いたしました。

 「行政財産使用許可に伴う使用料等の調定の時期」

 

 ここでは、そのことによって実務に生じている疑問について述べたいと思います。

 

自治令は調定の時期と年度区分を関連付けていない

 歳入の会計年度所属区分は、地方自治法施行令第142条に規定されています。長いので引用できませんが、この各項、各号で年度区分の基準としているのは、納期の末日特別徴収義務者が徴収すべき月納入通知書等を発した日申告があった日などです。

 調定とか、歳入の原因となる契約や許可の日とかを基準とする文言は、一切見当たりません。

 さらに、調定の日と納入通知書等を発する日を同じ年度にしなければならない根拠もなく、そのことは総務省も認めています。調定を旧年度中に行い、納入通知書の発送が新年度になっても、別に違法ではなく、その場合は、新年度の歳入になるということです。

 

翌年度以降の歳入の調定はできるか

 調定の日と歳入の所属年度とを直結させる必要がないとすれば、翌年度以降の歳入の調定を行うこともできそうです。

 典型的なのが、特別徴収の住民税です。あれは、5月中に給与支払者等に徴収すべき税額を通知し、6月分の給与から翌3月分の給与から特別徴収される分は当年度歳入に、翌4月と5月の給与から特別徴収される分は翌年度歳入になります。この翌年度4月、5月分の調定は、いつ行うべきなのでしょうか。当年度末の3月までの分の調定を行うのと同時に、当年度の5月頃行っていいのか、翌年度に入ってから調定しなければならないのかが問題です。

 

システム上の問題とは別に考えるべき

 電算のシステムで、平成30510日に調定しても平成31年度歳入にできるなら問題はありません。調定の日で、歳入所属年度を決めてしまうようなシステムになっていると、調定の時期は31年度になってからでなければならないことになります。

 しかし、それはシステムの問題であり、制度上、法令上どう判断すべきかとは関係ありません。

 

国の「通知」の疑問

 昭和381219日付けで、次のような通知(質疑応答)があります。

 問 新令第142条第1項第3号ただし書の規定による収入の調定の時期は予算に計上してあれば41日以降調定してさしつかえないか。

 答 調定は年度内にしなければならない。

 この通知は、次のような意味です。

「随時の収入で通知書等を発しないものは、領収した日の属する年度の歳入とする。ただし、地方交付税や地方債は、その収入を計上した予算の属する年度にするが、その場合でも、調定は3月末までにやっておかなければならない。」

 この通知は、3号ただし書にいう地方交付税や地方債などのことだけ言っているのか、収入調定全般について言っているのか、明確ではありません。しかし、いずれにしても内容に疑問があり、無理な事務処理をさせる元凶になっています。

 

「調定」とは何か

地方自治法 (歳入の収入の方法)

第231条 普通地方公共団体の歳入を収入するときは、政令の定めるところにより、これを調定し、納入義務者に対して納入の通知をしなければならない。

地方自治法施行令 (歳入の調定及び納入の通知)

第154条 地方自治法第231の規定による歳入の調定は、当該歳入について、所属年度、歳入科目、納入すべき金額、納入義務者等を誤つていないかどうかその他法令又は契約に違反する事実がないかどうかを調査してこれをしなければならない。

 

 自治令の規定等から、調定とは、「所属年度、歳入科目、納入すべき金額、納入義務者等を誤っていないかどうかその他法令又は契約に違反する事実がないかどうかを調査して、収入することについて内部的に意思決定する行為」でしょう。

 相手方に徴収すべき額の通知をする前には、内部的な意思決定は済ませておかなければなりません。特別徴収義務者や納税義務者に税額の通知を出す前には、当然、内部的意思決定である調定は済ませてあるのが当然です。直感的に考えれば、翌年度歳入の調定は翌年度に入ってからでなければできないような気がしますが、法令を厳密に解釈すると、翌年度以降に収入すべき歳入の調定も今年度にできると解釈すべきだろうと思います。

 

 電算システムの問題等で、実質的な調査、確認、徴収の内部意思決定は前年度中に行っているにもかかわらず形式的な調定を当年度に入ってから行うこととしている団体や、実際の調定日と「調定日として整理する日」を分けたりする団体も多いようです。

 

 調定日と年度区分については、もう一つ問題があり、別稿で紹介します。

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 いろいろな法律、政令などで、各条文の前に記載されている見出しには、2つの種類があります。一つは、法令の一部として定められた見出し、もう一つは、法令集等の編集者が分かりやすくするために勝手につけた見出しです。

 その区別は、法令集の索引に記載されています。「地方自治小六法」などでは、法令が制定されるときに付され、法令の一部である見出しは( )で括られていますが、編集者が付けた見出しは〔 〕などで括られています。

 

昔の法令には見出しはなかった

 昔の法令には、見出しは付いていませんでした。それが、昭和23年ころから見出しが付けられるようになり、現在は必ず付けられています。だから、昔からの法令には、各条文の見出しはありません。

 ただし、地方自治法などは、昭和22年の制定ですから元々は見出しがなかったのですが、全面的な改正が行われた章には、その改正の際に見出しが付されています。だから、第1編や第2編の第1章から第8章までは、見出しが〔 〕で括られていますが、「第9章 財務」は全面改正の際に見出しが付されたので、各条の見出しが( )で括られています。それ以下の編、章も、全面改正されたところは本物の見出し、それ以外は編集者が便宜上付けた見出しになっています。

 

見出しのない?条文

 比較的新しい法令で、条文にも見出しが付いているのに、一部の条文だけ見出しが付いていない場合があります。それは、前の条と同じ見出し(共通見出し)ということです。

 法令集によっては、共通見出しのために見出しがないようになっている条について、わざわざ編集者が便宜上の見出しを付けて埋めている場合もあります。

 例えば、「地方自治小六法」を見ると、第281条の3が「(特別区の配置分合又は境界変更)」、第281条の4が「〔特別区の配置分合又は境界変更〕」、第281条の5も「〔特別区の配置分合又は境界変更〕」となっています。第281条の3の見出しだけが本物の見出しで、後の2条は第281条の3と共通見出しになっていて、見出しが付けられていないのを、編集者が利用者の便宜のために付け足したものであることが分かります。

 

改正する場合

 法令を改正する場合、元々法令の一部である見出しはそれも含めて改正しなければなりません。

 地方自治体の条例、規則では、法令集の編集者が見出しを勝手につけることは少ないと思います。しかし、「財務規程集」などを編集している場合は、その条文の見出しが本来の例規についているものか、編集の際に便宜上付けたものか、一応注意が必要です。

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 市町村は、住民に最も身近な基礎的地方公共団体です。

 市・町・村は、名称は異なりますが、法制度上では扱いにほとんど違いはありません。

 しかし、地方自治法では、市と町について、要件を定めています。

 

地方自治法

第8条 市となるべき普通地方公共団体は、左に掲げる要件を具えていなければならない。

 一 人口五万以上を有すること。

 二 当該普通地方公共団体の中心の市街地を形成している区域内に在る戸数が、全戸数の六割以上であること。

 三 商工業その他の都市的業態に従事する者及びその者と同一世帯に属する者の数が、全人口の六割以上であること。

 四 前各号に定めるものの外、当該都道府県の条例で定める都市的施設その他の都市としての要件を具えていること。

 町となるべき普通地方公共団体は、当該都道府県の条例で定める町としての要件を具えていなければならない。

 町村を市とし又は市を町村とする処分は第七条第一項、第二項及び第六項から第八項までの例により、村を町とし又は町を村とする処分は同条第一項及び第六項から第八項までの例により、これを行うものとする。

 

町村が市になるための要件

 ① 人口が5万人以上

 ② 都市的な仕事(商工業など)に従事する人やその家族の割合が6割以上

 ③ 都道府県の条例では、人家が連坦している状況などの要件を定めている場合が多いようです。

 

村が町になるための要件

  要件は都道府県の条例で定められますが、人口、都市的産業に従事している世帯の割合、人家の連坦状況などを定めている場合が多いようです。

 

町村が市に、村が町になる手続

  いずれも、その町村の議会の議決を経て都道府県知事に申請し、都道府県知事が、都道府県議会の議決を経て決定します。市にする手続きの際は、都道府県知事は、総務大臣に協議し、同意を得る必要があります。

 

市と町村の機能の違い

  市と町村は、行政権能の差はほとんどありませんが、市は、福祉事務所を必ず設置して生活保護などの仕事をしなければならないところ、町村は任意で、条例で福祉事務所を設置してその仕事をしてもいいし、県に任せてもいいことになっています。

  また、町村は、議会を置かずに、「町村総会」を置くこともできますが、市は、必ず議会を置かなければなりません。

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法律上の意義

 住所についての、基本的な法律の定めは、次の3つです。

民法第22 各人の生活の本拠をその者の住所とする。

住民基本台帳法第4条 住民の住所に関する法令の規定は、地方自治法第10条第1項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解してはならない。

地方自治法第10条第1項 市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。

 

住所の認定

  各法律の規定を要約すると、住所とは生活の本拠地です。そして、住民票のことのほか、住民税の課税、選挙人名簿の登載など、全ての制度について、統一的に適用することになっています。つまり、一人に一つしか認められず、住民税上はA市を住所とするが選挙制度についてはB市を住所とするようなことは、基本的にできません。

 いろいろ線引きルールがあって、例えば、単身赴任していても毎週家族のところに帰っているようなら住所は家族のところにあって、家族と同世帯とされます。1年以上の赴任でめったに帰らないようなら、単身で生活している所が住所で家族とは別世帯になります。

本来は客観的事実に基づいて本人の意思にかかわらず市町村が認定できますが、普通は本人が住民票を置いている場所が住所として扱われます。住民税は住所地で課税されるので、まれに住民票をおいている市町村以外の市町村が認定を強行することもあります。

首長(知事や市町村長)や国会議員は住所がどこでもどこからでも立候補できますが、地方議会の議員はその自治体の選挙人名簿に載っている、つまり住民でなければ立候補できません。そのため、時々、住民票を移してしばらくしてからその市町村議会議員に立候補し、当選した後に、水道料などからそこに生活実態がないことがばれて、当選が取り消されたりするニュースもあります。

 

居所とは

 「居所」は、住所以外で、一定期間居住している場所をいいます。例えば、毎週家族のところに帰っている単身赴任者の、赴任先での生活の場などが、「居所」です。

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