ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 地方財務実務提要 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

タグ:地方財務実務提要

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『地方財務判例質疑応答集』という加除式の図書が発刊され、㈱ぎょうせいの営業の方が自治体に営業に回っておられます。我が小規模自治体も、購入検討用の見本1冊預かったそうです。

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「地方財務実務提要」の姉妹版?

本の装丁は、同社の「地方財務実務提要」と同じで、目次体系も同じにしてあり、同書を補完する位置づけのようです。

地方自治体で予算や会計の事務に携わっている実務者ならば、ほとんどの方が同意すると思うのですが、「地方財務実務提要」は便利な本です。私も、何か疑問が生じたときは、まずこの本で関連事項を探します。しかし、書かれていることを100%信用するわけではなく、そのように運用、解釈すべき理由などが納得できるものだけを信用し、参考にしています。理屈に合わない部分や、法令の解釈に基づかず単なる立法論を述べた部分もかなりあり、それらは自分の判断で、無視するようにしています。

『「地方財務実務提要」依存症からの脱却』参照

 

今度の本は?

今度の『地方財務判例質疑応答集』は、具体的な質問に対して、実際の判例をベースに解説、回答しているものです。裁判になればこのように判断されるということが分かるので、「地方財務実務提要」より信用できると思います。編集している「日本財政法学会」も、「地方財務実務提要」を編集している「地方自治制度研究会」と違い、総務省担当部局のもう一つの看板のような存在ではないようです。

 

 本体価格が10,000円と、このくらいの本(厚さ5センチメートル弱)としては高価で、今後の加除代も考えると安い買い物ではありませんが、私としては欲しいところです。予算担当者に相談してみようと思います。


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 私は、大学では行政法のゼミに所属し、マージャンも覚えましたが、具体的な法制度以外にも多くのことを教えていただきました。その中で、私の公務員生活の柱になっていることがいくつかあります。

 一つは、制度を解釈しようとするときは、解説書を鵜呑みにせずに自分の頭で理解して解釈するということです。

 このことについては、以前『「地方財務実務提要」依存症からの脱却』で紹介いたしました。

 もう一つは、解釈論を戦わせるべき時に立法論を持ち出すなということ、条文に立脚した解釈をしろということです

 

「立法論だ!」と言われたら負け

 ゼミで学生同士の議論を聞いていた恩師が言われたことで、それ以来40年近く、肝に銘じ続けています。他の学習内容は忘れてしまったことの方が多いと思いますが、これは鮮明に覚えています。

 「行政の場面で判断を迫られる場合は、現在の法制度に基づいてどう解釈すべきかという判断を求められているんだ。法令の条文に立脚せずに、「こうすべきだ。」「こうあるべきだ。」と主張するのは立法論で、議論をしているときに「お前のは立法論だ!」と言われたら、議論は負けなんです。」

 

行政の現場では

 行政の現場では、これから制度を創設しよう、改正しようとして議論することがあります。この場合は、当然、立法論で議論すべきです。

 具体的に起こっている問題にどう対処すべきか議論する場合は、当然、解釈論で議論すべきです。しかし、ここに立法論を持ち込む人がたくさんいるのが現状です。裁判になれば、このような解釈は敗訴に直結します。

 「地方財務実務提要」にも、条文上の根拠を示さずに「こうあるべきだ。」という意見だけで結論を出しているようなQ&Aがたくさん混じっています。

 残り少ない公務員人生の中で、自分で条文を十分に吟味して解釈することを若い職員に伝えていきたいと思っています。

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 難しい問題を考えるとき、ふと思いついたことをまとまった考えに整理するときなどの方法、心得が紹介されています。私も、早速いくつかやってみようと思います。

 ここで紹介されている方法のいくつかは、私も実践しています。難しい課題に対する対応策を探すとき、しっかり検討してから一度「寝させる」ことです。「寝させる」には、二つの意味があるようです。文字通り睡眠中の脳の働きに期待することが一つ、二つ目は、一旦放置して頭の中で発酵させ、熟成させることです。なかなか効果があるように感じています。

 しかし、「寝かせている」考え、思い付きのリストを作っていないので、寝かせたまま忘れ去ったアイディアもきっとあるでしょう。リストを作ってみようと思います。

 

 冒頭に、グライダー飛行機という比喩で、自分で考えようとしないグライダー人間が増えていることについて、様々な例で説明されています。これは、思考の技術以前の問題ですが、私も長年県職員をやってきて、それを感じていました。

 若手職員だけでなく、かなりの年配の職員でも、自分で法令を解釈しようとせずに「地方財務実務提要」などに書かれていることを鵜呑みにする職員自分で課題を見つけようとせず、具体的に指示されないとルーティンの仕事しかできない職員が増えている気がします。

 残り少ない公務員生活で、飛行機型の公務員を少しでも増やす努力を続けたいと思います。

地方自治法第214条(債務負担行為)

歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。

 

債務負担行為は、幅広く使われる制度です。条文のとおり、歳出予算に計上されていないけれども今後の支出が見込まれるもので、継続費にも繰越明許費にも計上されないものは、債務負担行為として定めておく必要があります。いろいろなケースが考えられるため、継続費や繰越明許費は、施行令で要件、効果や手続が定められているのに、債務負担行為は具体的な定めがありません。何も定めがないため、便利に使えるわけです。

 

一般的な債務負担行為

 数年度にまたがる事業について、「年度まで」という期間と、既に歳出予算に計上されている範囲外で支出が見込まれる金額を示して設定するのが、最も一般的な使われ方です。一般的には翌年度以降にまたがる事業に使われます。継続費のように、年度ごとの年割額を定める必要はありませんが、契約の締結は債務負担行為を設定した年度しかできません。

 

一般的な債務負担行為

 損失補償、例えば、民間の産業を支援するため、その企業が事業資金を金融機関から借り入れるときに自治体が保証するような場合も、支払が生ずる可能性があるので、債務負担行為を設定します。

 

消防団員等公務災害補償等責任共済契約

 この契約は、消防団を持つ全国の市町村等が、消防団員等の公務災害に備え、消防団員等公務災害補償等共済基金という特殊法人と締結する契約です。この基金は、総務省の関連団体です。

この契約の特徴は、一度加入すると特に更新手続もなく、毎年度掛金を支払い続けることになることです。毎年の掛金も団員の数などに応じて変動します。

普通に考えると、年度までという期限を示せないもの、債務を負担する金額を示せないものは、債務負担行為の設定は困難なように思いますが、「地方財務実務提要」(総務省監修と思われる。)によると、債務負担行為でいいとされています。

期間の欄には「年度以降毎年度」、限度額の欄には「共済掛金」と書けばいいそうです。

これは、便利です。一度議会で設定すれば、未来永劫、年度を超えた契約ができるわけです。

 

NHK受信契約への応用

 消防共済でこういう手法が認められるのですから、同じように、一度受信契約を結ぶとずっと継続されてしまうNHK受信料にも応用できることになります。そのようにしている自治体の例は、今のところ見当たりませんが、我が自治体でやってみようと思います。

追記 平成29年度の補正予算で、我が自治体でNHK受信契約を債務負担行為に設定しました。

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 地方公共団体の契約は、主に一般競争入札指名競争入札随意契約のいずれかの方法で行われます。このうち、指名競争入札とは、資力信用等から適当な複数の参加者を選んで入札によって競争させ、最も有利な条件を示した者と契約を締結する方法です。

 

「地方財務実務提要」の珍説

 この書籍は、指名競争入札の場合、1者しか参加しなかった場合は入札を遂行すべきでないとするのが通説であると言っています。また、当初の入札には複数の参加者がいたが落札者がおらず、再度の入札(いわゆる再入札)に付した際に辞退者が出て参加者が1者しかいない場合も、執行すべきでないとするのが通説であると言っています。

 条文に基づく解釈を一切示さずに、これが通説であると逃げるのは、非常に無責任な態度だと思います。そもそも、こういう説を主張している書籍は他にほとんど見当たらず、この同じ編集者のグループ(○○制度研究会)が言っているに過ぎないのではないかと思います。

 

初度の入札についての検討

 地方自治法や施行令には、指名競争入札で参加者が一人の場合は執行しないよう求めていると解釈できる文言はありません。したがって、何も条件を付けずに入札を始め、参加者が1者しかいなかったからといって打ち切ってしまうのは、法令上の根拠もなく、参加者を裏切る行為であり、できないでしょう。

 明文の規定がなくても、地方自治法等の趣旨から、当然にそう解釈すべきだという主張があるかもしれませんが、それが誤りであることは、法令の論理解釈から説明できます。

  「指名競争入札の参加者数  自治法はどう想定しているか?」参照

 私も、指名競争入札で当初から参加者が1者だったとすれば、指名が著しく不適当であった可能性があるので、入札は打ち切るべきだと考えています。しかし、その団体の規則や指名通知の際の条件等で、その旨あらかじめ明示していなければ、そのような扱いはできないと思います。そういう前提条件や説明なしに、「通説」などと私見を正当化するのは、無責任です。

 

再入札についての検討

 当初の入札には複数の参加者がいたが落札者がおらず、再入札に付した際に辞退者が出て参加者が1者しかいない場合は、どうでしょうか?

 「地方財務実務提要」では、「当初の入札がその競争性を有していたとしても、この再度入札は競争性を著しく欠くものでありますから、・・・ 執行すべきでないとするのが通説」と主張しています。この「通説」なるものが怪しいことは、前述のとおりです。

 一般競争入札も指名競争入札も、再入札については、初度の入札に参加した者しか参加できない点で、変わりはありません。つまり、この書籍の説明では、一般競争入札についても再入札でこのような事態になれば、「この再度入札は競争性を著しく欠く」ので、打ち切らなければならないことになってしまいます。しかし、一般競争入札でそのような取扱いをするはずがなく、この理由、解説は、明らかに誤りです

 初度の入札で精一杯の金額を入れた人は、それで落札できなかった場合、契約をあきらめて再入札を断念することは、ごく普通のことです。初度の入札に複数の参加者がいたということは、指名が著しく不適当ではなかったことを示しています。

 再入札に独自の競争性を要求する必要などなく、不合理です。

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