ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 失敗の本質 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしていました。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

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 東京都中央区の区立泰明小学校で、イタリアの高級ブランド「アルマーニ」のデザインによる新たな「標準服」が高価すぎると批判されています。最低限のセットで6万円ほど、替えのシャツまで含めると一式8~9万円ほどもするとのこと。保護者が苦情を言うのも当然です。

 

失敗学、危機管理論の貴重なサンプル

 この標準服の決定は、明らかに大失敗です。公立学校の使命を忘れ、経済的に困難な家庭もあることを無視した決定自体が、どんな立派な動機があろうと失敗です。

全国ニュースで批判を浴びるに至っては失敗であることは明らかで、途中過程でも引き返す機会を失するなど、決定後の様々な対応も失敗しています。まるで、失敗学の古典、「失敗の本質」(戸部良一ほか)で取り上げられているインパール作戦のようです。

 近年中に、ハーバードなどの、失敗学、危機管理論の講義レジュメに取り上げられるかもしれません。

 

失敗の数々

 行政職員として、数々の失敗を見聞きし、自らも失敗してきた私から見て、この件の失敗を列挙してみます。

1 常識、バランス感覚を欠く人物を校長に据えていたことが、まず、根元的な失敗でしょう。人事システムに問題があることは、明らかです。

2 この種の仕事は、通常の学校では副校長が中心になることが多いと思いますが、この件では副校長の役割が見えず、イエスマンだった可能性があります。副校長が適時に教育委員会に相談するなどすれば、防げていたはずで、人事配置も失敗しています。

3 利害関係者である保護者を関与させずに決定したこと、そんなやり方を許す組織であったことも、失敗です。

4 おおよその価格が明らかでない状態で導入を決めるなどは、ほとんど信じがたい失態です。

5 価格が明らかになり、高価すぎることが分かった時点で、引き返さなかったことも失敗です。関係者も、今になってみれば、アルマーニに賠償金を払うことになっても、新学期の一月くらい標準服の供給が間に合わなかったとしても、今の事態よりはましだったと思っていることでしょう。

6 区の教育委員会が、事態を把握することが遅かった失敗はもちろんですが、把握してからも、引き返させる決断をしなかったことも失敗です。断固として、計画を撤回させるべきでした。

7 私は東京都の仕組はよく知りませんが、一般的に、学校設置者は市(区)ですが、教員の人事権は都道府県の教育委員会が握っています。市(区)の教育委員会の幹部より有力校の校長のほうが立場が上のこともしばしばです。今回も、区教育委員会の指導には限界があったのかもしれません。それならば、都の教育委員会が前面に出て対応すべきでした。このようないびつな組織であることも、失敗を大きくした原因だと思います。

8 騒動になってからも学校側が公表した文書、校長の記者会見は、真正面から失敗に向き合っておらず、危機管理の観点からお粗末なものです。区や都の教育委員会が全面的に介入することをためらった結果と思われ、失敗でした。


  私たち、行政に携わる身としては、このような事件を教訓にして、適切な組織運営、意思決定に努めなければなりません。

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 研修会などで社会人になったばかりの人たちの前で話す機会があると、勉強を続けるべきこと、その中でも、座学を軽視しないことをお願いしています。

 近年、社会の変化のスピードが昔よりずっと速くなり、現在自分が持っている知識がすぐに陳腐化してしまいます。常にアップデートは欠かせません。これは、当然なことです。

 

座学を軽視する人

 「俺は仕事をする中で勉強しているので、本による勉強など不要だ。」という信念をもっている人もいますし、特に信念もなく、特別な勉強をしない人も大勢いらっしゃいます。

 私はかつて、よく本を読む上司に仕えたこともあり、反対に、実務経験一辺倒で自己啓発的な本は全く読まない上司に仕えたこともあります。前者は、勤務時間が終わるとすぐに帰宅しておられました。その上司は、「失敗の本質」といった類のビジネス書や歴史書を多読しておられ、その効果だと思うのですが、業務について我々には思いつかない方向性を示してくれたり、示唆を与えてくれました。一方、本を読まない上司には、参考にはなるような助言はいただけませんでした。
 OJTももちろん大切ですが、座学も必須です。

 

座学を重視すべき理由1 自分の経験だけではダメ

 座学を重視しなければならない理由の第1は、自分の経験だけでは全く不十分ということです。公務員は、どんな状況下でも適切に対応できることが、優秀な職員の条件です。そのためには、自分一人の経験だけでは全く不足であり、歴史上の事象に学んだり、過去の事象の集大成である経営学などに学ぶ必要があります。

 また、例えば、新たな分野、例えば、公務員の仕事をしているだけでは、企業会計、簿記の仕事は学べませんが、仕事の外でそれを学んでおくことで、他の職員より上質の仕事ができます。

 

座学を重視すべき理由2 重要な決定の効果は自分で経験できない

 これは、「最強組織の法則」(センゲ)などの経営書に書かれていて、確かにその通りだと感銘を受けました。重要な決定ほど、その本当の結果が現れるのは遅くなり、決定を下した本人はそれを体験できないことが多いということです。センゲは、経験から学ぶというのは錯覚だとまで言っています。

 例えば、製品の魅力が低下したので業績の落ちている企業で、営業部長が営業マンに対して、「足で稼げ」などとハッパをかけたとします。営業に力を入れれば、一時的に業績は回復するかもしれず、その営業部長は栄転します。しかし、製品に魅力がないことが本当の原因ですから、優秀な営業マンほどバカバカしくなって退社してしまうなど、問題はより深刻になってしまいます。

 

座学を重視すべき理由3 異なった状況下での成功体験は役に立たない

 これは、理由2にも通じることです。例えば、バブル時代の成功体験を参考に、現在の状況に対応しようとすることは、命とりかもしれません。

 

 私も、老骨に鞭打って、勉強を続けたいと思います。

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