ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 契約解除 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

タグ:契約解除

 愛知県豊橋市の新アリーナ建設計画をめぐり、建設推進派が多数を占める豊橋市議会と、昨年11月に計画の中止と既に締結済みの整備運営契約の解除を掲げて当選した市長が裁判で争うことになったようです。

県への審査の申立てから裁判へ

 報道によると、議会が「契約解除には議会の議決が必要」とする条例の改正案を可決したのに対し、市長は議決が法令に違反すると主張し、議決の取り消しを求めて愛知県に審査を求めましたが、知事は3月末にこれを棄却していました。市長側が、この条例を「議会の権限を越え法令に違反する」と主張したのに対し、県は「条例で契約解除を議決事項として定めることを否定する内容が法令などで明文化されていない」などとして棄却しました。

 県の裁定に不服な市長側は、今度は条例改正のの取消しを求めて名古屋地裁に市議会を提訴しました。提訴理由は、「議会の権限を越え法令に違反する」に加え、この条例改正が契約解除を阻止することが目的で「裁量権行使の逸脱または濫用にあたる」などのようです。しかし、この主張、私は無理があると思います。

「解除」という言葉に違和感

 一般に契約の「解除」とは、相手側の債務不履行とか相手側が暴力団関係者だったことが判明した等の契約書で定められた事由があった際に一方的に行うものでしょう。本件についてはそんな事由はないようで、一方的な「解除」はできません。「解除」などと言いつつ、実際は「合意による解約」でしょう。

 契約の相手側がこんな「解除」にすんなり応じるはずはありません。この契約のためにこれまで費やした経費はもちろん、将来得られるはずだった利益も補償しなければならないと思います。

 万一、市長側が裁判に勝ったとしても、「解除」は難しそうです。

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地方自治法第234条の3(長期継続契約) 
普通地方公共団体は、第二百十四条の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない

自治令第167条の17  地方自治法第234条の3に規定する政令で定める契約は、翌年度以降にわたり物品を借り入れ又は役務の提供を受ける契約で、その契約の性質上翌年度以降にわたり契約を締結しなければ当該契約に係る事務の取扱いに支障を及ぼすようなもののうち、条例で定めるものとする

 

なぜ長期継続契約が困難か?

  条文だけサッと読むと、各自治体が条例でNHK受信契約を指定すればよさそうに見えます。しかし、法後段の「各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。」が、ネックになってしまいます。

 

 電気、ガス、水道などなら、各年度の予算に合わせて使用することもできます。また、予算が0だったら、契約を解除することもできます。

 リースなどの長期継続契約の場合は、契約条項として、予算の減額等があった場合は契約を解除できる文言を入れ、法律の条件をクリアしています。これらは、総務省の指導・助言によるものです。

 しかし、NHK受信契約の場合は、予算に合わせて使用することもできず、契約書に予算減額の場合の解除条項を入れることなど、NHKが認めるとは考えられません。そもそも、テレビを保有している限り、契約して受信料を払うのが国民の義務だと主張しているわけですから。予算が減額されたら、テレビ自体を処分せざるを得ません。もったいない話です。

 この辺りについて、地方自治法とNHKの双方を所管している総務省としては、どう考えているのか、ぜひ、見解を伺いたいところではあります。

 

地方自治体における実務

 条例で指定していない以上、正規に長期継続契約として締結することはできません。しかし、テレビをもっていない自治体、NHKと受信契約を拒否している自治体というのも聞いたことがありません。

 どこの自治体も、無自覚に、自治法に違反して、年度を超える契約を結び、年度を超える前金払をしているのでしょう。

 

 参照NHK受信料1  地方自治法の扱いは?」

 年度を超える前金払が本当に違法かどうかについては、次を参照願います。

  「年度を超える前金払って、本当に違法?」

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