ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 懲戒免職 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしていました。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

タグ:懲戒免職

 仕事の用事で古巣の県庁に出向くことが多く、しばしば昔なじみの後輩と顔を合わせます。先日も親しくしていた後輩とばったり会ったら、「私もあと2か月で卒業です。」と言っていました。定年後の再就職先はまだ決まっていないとのことでしたが、ホッとしている様子でした。

 私も、無事に県庁を定年退職したときは、ホッとしました。

 

定年前の不安

 50歳少し手前のころ、県の教育委員会で職員の懲戒処分に関する仕事をしていました。そのころ、福岡で飲酒運転による悲惨な死亡交通事故があり、全国の自治体で飲酒運転の厳罰化が始まりました。

 各自治体が懲戒処分の基準を厳しくし、飲酒した翌朝のわずかの酒気帯びでも懲戒免職になる例が全国で頻発しました。その後、それらの処分が裁判所で取り消される例が相次いだため、現在は緩和した自治体が多いようです。

 その後、自転車の飲酒運転も取り締まりが始まりました。

 飲酒運転などするつもりはありませんでしたが、心配性の私は、二日酔いで検挙される可能性はゼロとは言えないと思いました。また、飲酒運転でなくでも、不注意で死亡交通事故を起こし、禁固以上の刑になれば、執行猶予がついても公務員の場合は失職してしまいます。

 退職金を受け取るまでは、自分の老後に安心できない気がして、定年を待ち遠しく思ったものです。

 

管理職は特に危険

 定年間近の人は、管理職であることも多いでしょう。

 ほとんどの自治体では、管理職については懲戒処分を加重します。酒気帯び運転で、一般職員ならば停職6月ほどの基準でも、管理職の場合は1ランク加重して免職もあり得ます。

 また、管理職でありながら懲戒処分を受けると、一般職員以上にかっこ悪く、職場に居づらくなることは当然です。

 

 私も、仕事自体にはやりがいを感じていましたが、一生を台無しにする危険から逃れたいため、早く定年退職を迎えたいと考えていました。

 退職を間近に控えた後輩と会い、そんな気分を思い出しました。

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 大卒なのを高卒と学歴詐称して採用され、そのまま長年勤務して定年退職し、その後に再任用されていた神戸市の職員が懲戒免職とされたことについて、11月末、報道がありました。

 この職員は1980年に24歳で市に採用され、2016年3月末に定年退職、同年4月に再任用されて引き続き市に勤務していたところ、最近、匿名の通報がきっかけで学歴詐称がばれたそうです。採用された際の試験の受験資格が、高卒までであったことが問題とされました。

 市では、定年の際に既に支給している退職手当も全額返還を求めるようです。

 市には、賛否両論が寄せられているとのことです。

 

厳しい処分の経緯

 厳しすぎるようですが、これに至る経緯もあるようです。

 2006年ころ、神戸市、尼崎市で同様の学歴詐称が問題となり、神戸市ではこのときの調査で詐称を認めた36人が諭旨免職(退職手当はもらえる。)になったとのことです。その後、大阪市や横浜市でも同様の問題が発覚し、両市などは、自己申告すれば停職1か月、後で発覚すれば懲戒免職という条件で調査したところ、それぞれ数百人の職員が停職処分になっています。

 神戸市では、その後に詐称が発覚した10人ほどが懲戒免職になっています。今回の処分は、これらとの均衡を考えてのことでしょう。

 

退職手当の返還はやり過ぎでは?

 以前は、懲戒免職処分の場合は無条件で退職手当が不支給でした。

 「退職手当支給制限処分」参照

 

 現在は、懲戒免職にした場合でも退職手当を支給しないことにするには、退職手当支給制限処分という別の処分が必要です。まして既に支給した退職手当の返還を求めるには、退職手当返納命令という別の処分が必要です。

 私は県に在職中、人事委員会などでこのような問題にも携わっていました。退職手当には給与の後払いという性格もあり、定年退職まで問題なく勤務していた人の退職手当を採用時の虚偽申告というだけの理由で、全額の返還を求めることができるか、私には疑問です。少なくとも、一部の返納にとどめるべきだと思います。

 審査請求が出されたりその後裁判になったりした際に、市人事委員会や裁判所がどのような判断を下すか、先例になる事例だと考えられるので、この元職員の方は、泣き寝入りせず、最後まで戦うべきだと思います。

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 平成20年に行われた国家公務員退職手当法の改正までは、公務員が懲戒免職処分を受けると、退職手当も自動的に不支給でした。この改正で、「全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる」こととされ、「退職手当支給制限処分」という新たな手続が加わりました。

 地方公務員についても、各団体の退職手当条例で、同様の改正が行われました。

 

国家公務員退職手当法

(懲戒免職等処分を受けた場合等の退職手当の支給制限)

第12条 退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般の退職手当等の額の支払を受ける権利を承継した者)に対し、当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響その他の政令で定める事情を勘案して、当該一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる

 (1)  懲戒免職等処分を受けて退職をした者

 (2) 国家公務員法第76条の規定による失職(同法第38条第1号に該当する場合を除く。)又はこれに準ずる退職をした者

 退職手当管理機関は、前項の規定による処分を行うときは、その理由を付記した書面により、その旨を当該処分を受けるべき者に通知しなければならない。

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制度改正の理由

 制度改正前は、懲戒免職処分と退職手当全額不支給は不可分でした。そのため、退職手当が欲しい職員は懲戒免職処分取消請求を行う必要がありました。そうした中で、退職手当まですべて失わせることが気の毒なようなケースについて、免職処分が取り消されるケースもありました。

 退職手当は、これまでの勤務に対する対価という側面もあり、一度の不祥事による免職と切り離した方が、合理的です。

 

制度の運用

 この制度の運用としては、原則としては全額不支給とされ、一部不支給とするのは、「停職処分にとどめる余地があるところ、あえて厳しく免職処分とされた場合」等に限るとされています。実際にも、一部不支給処分は、極めてまれです。

 教員などでは、普通なら免職にまではする必要のない不祥事でも、「教壇に立たせるわけにはいかない」という判断から、免職とされることがあり得ます。一般職では、そのようなケースはまれであり、今後も、懲戒免職処分=退職手当ゼロが普通の状態が続くと思います。

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